サッカー選手に多い恥骨炎とは|その症状と治療法・リハビリまで解説!

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どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

記事の修正も本日より再開します。しばらくの間、お休みさせて頂き申し訳ありませんでした。

今日はサッカー選手と怪我シリーズで恥骨炎に関してやっていきます。

意外にも恥骨炎で悩まされている選手は多く、サッカー日本代表MF長谷部誠選手もそのうちの一人です。

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恥骨炎

骨盤は下図のような構造になっています。

長内転筋の起始は恥骨結合前面・恥骨結節であり、腹直筋は恥骨隆・恥骨結合に停止します。

骨盤 解剖
図:メディカルイラスト図鑑より引用

恥骨炎とは、長内転筋腱や腹直筋腱の付着部炎であり、これらが進行すると恥骨結合における変形性関節症を引き起こすこととなります。
1949年に初めて、サッカー選手における鼠径部痛が報告されています。
( Bandini T. Tunistica Patol Laboro. 1949 )

サッカーと恥骨炎

サッカーにおけるあらゆる動作は6秒以内に行われるものであり、常にスピードと方向転換能力が要求されます。このようなサッカー動作は、選手の身体に対して大きな負担となり得ます。

鼠径部痛はサッカー選手にしばしば見られる症状であり、それらは試合数の増加や不良な練習環境、選手内因的な要因およびオーバーユースなどにより頻発するとされています。

鼠径部の傷害は股関節に繰り返しの動きが伴うサッカー選手に多く発生し、トレーニングやゲームでのキック動作は内転筋群や下部腹筋を酷使することになります。繰り返される内転筋群や腹筋群の損傷、腱炎、恥骨炎および変形性関節症はすべてサカー選手における鼠径部痛の原因となります。

サッカー選手で恥骨炎に悩まされている日本人選手としては、日本代表MF長谷部誠選手が有名です。2015年11月下旬にも恥骨炎のために、長期離脱の可能性が報道されていましたね。

他に、元日本代表のFW中山雅史選手、MF中田英寿選手も恥骨炎で悩まされていました。外国人選手だと、ミラン本田の同僚であるFWマリオ・バロテッリ選手も恥骨炎のために長期離脱しており、モナコで手術加療を受けたと報道されています。

症状・検査

恥骨炎の最初の症状は恥骨結合部の陰湿な痛み・鼠径部の張りであり、ランニングにより徐々に痛みは増していき、その痛みは数時間ないし数日間残存します。

臨床検査としては、恥骨結合部の圧痛の確認、内転筋の圧痛の確認(図1)、患側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動、および両側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動(図2)などを行います。

恥骨炎診察
図1.左:恥骨結合の圧痛の確認 右:内転筋の圧痛の確認
( Cohen M, et al. 臨床スポーツ医学. 2006より引用 )

恥骨炎診察2図2.左:患側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動 右:両側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動
( Cohen M, et al. 臨床スポーツ医学. 2006より引用 )

X線検査では、恥骨結合部の狭小化や結合部の分離を伴った骨粗鬆症、嚢胞や軟骨下骨の硬化といった変形性関節症の所見、骨膜性骨修復像、および2mm以上にわたる鉛直方向への変移(これは恥骨結合の不安定性を表します)などを認めます(図3)。

スクリーンショット 2015-12-19 22.36.14
図3.X線像:変形を伴った恥骨結合部
( Besjakov J, et al. Acta Radiol. 2003より引用 )

MRI検査では、恥骨枝および恥骨結合部での異常信号を認めます(図4)。

恥骨炎MRI
図4.MRI像:恥骨結合部および軟部組織に異常を認める
( Barlie A, et al. Radiol Med (Torino). 2000より引用 )

治療

治療としては、まず最初に症状の緩和を目的にした保存療法を行います。

この段階では、鎮痛剤の投与と背筋群や腹筋群および骨盤周囲筋のストレッチングを行います。

ストレッチングは再発防止の観点からも非常に重要です。

非ステロイド抗炎症薬やステロイド注射および鍼(はり)療法は、症状の緩和をもたらしますが、保存療法によって症状の緩和がみられなかった場合には、手術療法を考慮する必要があります。
( Lynch S, et al. Sports Med. 1999 )
( Meyers W, et al. Am J Sports Med. 2000 )

恥骨炎に対する手術療法は、非常に効果的であるとされており推奨されています。
( Biedert RM, et al. Clin. J Sports Med)

Cohen Mらは、12ヶ月以上にわたり鼠径部および恥骨部に疼痛を訴えており、保存療法(理学療法・非ステロイド系抗炎症注射およびステロイド注射)によって改善することのなかった男子サッカー選手30名(18〜30歳)を評価し、全例に恥骨結合部および両側内転筋腱の切離術(図5)を行った結果を報告しています。

これによると、患者は平均48時間で退院しており、質問紙における主観的評価および臨床検査による客観的評価では、すべての選手が手術療法に満足しており、ハイレベルなスポーツに復帰することが可能であったと報告されており、術後36ヶ月において、再発ならびに選手の能力的な障害は1例も認めなかったことが報告されています。

恥骨炎 手術図5.左:腹直筋付着部(左右)の切離 右:小切開による両側内転筋切離
( Cohen M, et al. 臨床スポーツ医学. 2006より引用 )

おわりに

以上、今回は恥骨炎についてまとめました。

サッカーでの傷害を予防するポイントは適切なコンディショニングであり、特に顕著な筋バランスの崩れは傷害を引き起こす原因となります。また、繰り返しのオーバーロードや不適切なトレーニング技術および反復するキック動作は、恥骨炎を引き起こす可能性があり、それらは選手生命をも脅かすほど重篤な症状になることもあります。

ですので、恥骨炎を疑うような症状を見つけた場合にはきちんと医療機関を受診してください。

長谷部選手の早期復帰および活躍を祈念しております。

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4 件のコメント

  • 初めまして理学療法士の森本です。昨年末より購読、勉強させて頂いています。
    興味深い内容ありがとうございます。

    自分もサッカーチームに所属し治療に携わっています。チームでは、恥骨炎、鼠径部通に対し積極的な内転筋のトレーニングを行っています。
    自分はシーズン途中の加入でしたがU23 では、上記の問題で長期の離脱は無かったと思います。

    先生の調べてた中で、もしくは経験された中で具体的なアプローチがあればご教示下さい。

    よろしくお願いします。

    • 森本雅幸様
      コメントありがとうございます。
      返信が遅くなり大変申し訳ございません。
      恥骨炎での内転筋トレーニングで離脱者ゼロは素晴らしいですね。
      僕が参考にしていた文献でも内転筋トレーニングは推奨されていました。
      保存療法で効果がない場合に、内転筋の切離で症状が緩和されることを考えても内転筋のトレーニングは重要かと思います。
      今後も実臨床における意見などがあればお聞かせ願えれば幸いです。
      今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

  • はじめまして。
    興味深く、拝読させていただきました。

    小学5年の息子について相談させてください。

    息子は幼稚園の年中からサッカーをならっております。5年の今は週に5回、練習があります。土日は一日中、試合か練習で、平日は二時間ほどです。

    1月13日の走り込みの練習中にコーチよりフォームがいつもと違うということで股関節の辺りが痛いと言うのがはじまりでした。腫れや熱を伴う痛みなどはなく、走ったりすると痛いようです。1月17日に初めて受診し、レントゲンをとりましたがその時はあまりよく、わからなかったようです。しかし、一週間後の再レントゲンで股関節にスポットを当てて撮り直したところ、左の恥骨結合部が左右対称ではなく、ボコッと出っ張りが出ていて、それでいて、透けてうつっていました。大きな病院でCTを撮るように言われ、本日26日にCTをとりました。画像を持ち帰り、再受診しましたら、詳しいことはまだわからないけど、骨嚢胞では無いかなと言われました。初めて耳にする病名ですし、先生はわからないと仰るばかりですので、少しでも情報が欲しく、「骨嚢胞・サッカー」と検索しましたら、こちらにたどりついたのです。

    X線もCT画像(恥骨結合部にものすごく小さい黒い点が三つくらいありました)も、ありませんのでお見せ出来ませんが、どのように受け止めて、どのような治療やリハビリなどに向き合って行けばよいのか教えていただけませんでしょうか?

    抽象的で答えにくい質問になってしまい、本当に申し訳ありません。よろしくお願いいたします。

    • よりまま様

      はじめまして。
      コメントありがとうございます。

      息子様の件ですが、基本的にはoveruse(使い過ぎ)が原因であると思います。
      特に身体が完成していない成長期は、靭帯や腱よりも骨の方が脆弱であるため、靭帯・骨の付着部(骨)での症状が起こりやすくなっています。
      画像を拝見しておりませんので、具体的なことは言えませんが、今はサッカー活動を中止し、股関節(特に内転筋群)のストレッチをするのがよいと思います。また、一度ある程度大きな病院の整形外科を受診し、MRIの精査なども考慮して頂くとよいかもしれません。

      直接画像をみたわけでも、診察したわけでもありませんので、ある程度大きな病院の整形外科を受診して頂きそこでの指示を仰いで頂くのが1番よいと思います。

      今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。

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