スポーツ選手に起こりうる心臓突然死|スポーツ関係者必見!

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どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

今日は当直明けであまりやる気が出ず…。足首も捻挫中なのでフットサルもできなくて、なおテンション下がり中です。

さて、今日は前回の続きでスポーツと突然死についてまとめます。

スポーツ選手を襲う突然死|近年の事例を紹介

2016.03.21

特に、今回はスポーツ選手における突然死の原因として最多である心臓疾患による突然死について、代表的な疾患や治療、また突然死を防ぐためにすべきことについてまとめています。

参考にして頂き、スポーツ中の心臓突然死による悲しいニュースが減ってくれたら幸いです。

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スポーツ選手における心臓突然死

まずスポーツ選手に心臓突然死はどれくらいの確率で起こるのでしょうか。

推定20万人に1人の割合で一見健康な若いスポーツ選手が、運動中に心室頻拍または心室細動を突然発症し死亡する

と言われています。

男性は女性の9割のリスクがあり、アメリカではバスケットボールおよびアメリカンフットボールの選手、ヨーロッパではサッカー選手のリスクが最も高いとされています。

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2016.05.11

若い運動選手の心臓突然死には多くの原因がありますが、最もよくみられるのは見過ごされていた肥大型心筋症で、心血管系が原因の突然死全体の約36%を占めると報告されています。( Maron BJ, et al. Circulation. 2009 )

肥大型心筋症は原因不明の心筋症であり、心筋が肥大し進行すると心不全症状を呈し、心室細動により突然死に至ることもあります。特徴的な心電図変化に加え、失神歴や家族の突然死歴がある場合は、本疾患を疑い精査をする必要があります。

また、心血管疾患がなくとも、胸壁が薄く柔らかい運動選手は心臓震盪のリスクがあります。

心臓震盪は、心臓の筋肉が外的な刺激に対して最も興奮しやすい瞬間(心筋再分極の受攻期)に、野球ボールやホッケーパックなどによる打撲、あるいは他の選手との衝突などによって引き起こされる心室細動(いわゆるR on T)のことです。

一方、高齢な運動選手の心臓突然死は、一般に冠動脈疾患が原因ですが、ときとして肥大型心筋症、僧帽弁逸脱、後天性の弁膜症が関与しています。

不整脈性失神と突然死

心臓は、血液を全身に送り出すポンプの働きをし、1日に約10万回収縮しています。

心臓に電気が流れると、心筋は興奮して収縮しますが、その電気的興奮は洞結節から始まります。心房の興奮が房室結節/His束を経由し、右脚・左脚を通って、プルキニエ線維から心室全体へと順次伝わっていきます。

洞結節が規則正しく興奮することで、心臓の調律は保たれていますが、さまざまな理由で調律が乱されると不整脈が引き起こされるわけです。

心停止や頻脈発作のために脳への血流が低下または停止し、その結果、意識障害(失神発作)を起こすものをAdams-Stokes syndrome(アダムス・ストークス発作)といいます。

その発生原因は、脈拍が遅くなる徐脈性不整脈と、速くなる頻脈性不整脈とに大別されます。

以下にスポーツ競技を中止し、循環器専門医の診断を仰ぐ必要のある疾患について、それぞれ簡単にですが述べていきます。

徐脈性不整脈

徐脈性不整脈の代表的な疾患としては、洞結節の機能障害である洞不全症候群と、房室結節ーHis束の伝導障害である房室ブロックがあります。

両疾患とも急激な心拍数の低下により、めまいや失神などの症状をきたします。運動時に脈拍が増加せず、徐脈による症状を伴う場合には精査を要します。

上室性頻拍

上質性頻拍(WPW症候群心房細動など)は、通常一過性の動悸やめまい程度の症状のみの場合が多いですが、心機能が低下した心臓病に合併した場合には、心拍出量が低下し失神を起こす可能性があります。

カテーテル治療により多くの症例は根治可能であり、競技を開始できる可能性は十分にあります。

心室性不整脈

心臓病の合併が無い心室頻拍は特発性心室頻拍と呼ばれますが、心機能は正常であり失神をきたすことはほとんどありません。

しかし、虚血性疾患、弁膜症、心筋症などの器質的心疾患を有する例は心機能が低下していることが多く、心室頻拍を発症して失神の原因となります。

このような心室頻拍が持続し、血行動態が破綻した心室細動へ移行すれば突然死の原因となります。

遺伝性不整脈疾患

遺伝性不整脈疾患には、QT延長症候群Brugada症候群催不整脈性右室心筋症などがあり、心室性不整脈が合併すればいずれも失神や突然死の原因となり得ます。

遺伝性不整脈疾患においては家族歴を確認することが大切です。

その他の不整脈

その他に失神をきたす不整脈として、ペースメーカーや植え込み型除細動器の機能不全によるもの、抗不整脈薬などの副作用によるものなどがあります。

スポーツ選手のメディカルチェックでは、病歴や服薬状況などの聴取は特に重要である理由がわかるでしょう。

治療と予後

失神が徐脈による場合は、ペースメーカーによる治療が必要になります。

発作性上室性頻拍、WPW症候群、特発性心室頻拍による場合は、カテーテル治療による根治が可能ですが、心臓病を合併した心室頻拍や心室細動による失神の場合には、埋め込み型除細動器(Implantable cardioverter-defibrillator:ICD)が最も確実な治療法になります。

心臓が原因の失神を起こした場合、1年目の死亡率は24%とかなり高く、4人に1人が亡くなる計算になります。

実際に、わが国のICD治療群では1〜3年の観察を行ったところ、40〜50%の症例においてICDの作動(発作)が認められたと報告されています。

運動選手の突然死は、肥大型心筋症、心臓震盪、遺伝性不整脈疾患が多いとされていますが、最終的には心室頻拍または心室細動による心血管虚脱が原因となり死に至ります。

予防

では、スポーツ中の心臓疾疾患による突然死を防ぐためにはどうしたらよいのでしょう。

1番大切なのは、検診やメディカルチェックで予め疾患を見つけ、きちんと治療しておくことです。

その際には、失神発作の既往、既往歴、家族歴、基礎疾患の有無、服薬状況などを詳細に聴取することが大切です。その上で、安静時の心電図検査を行い、異常が見つかった場合には、運動負荷心電図や24時間ホルター心電図などの検査を進めていく必要があります。

実際に失神発作があった症例においては、これらの検査で診断がつかない場合でも、入院の上、心臓カテーテル検査や電気生理学的検査などの精査を考慮する必要があるでしょう。

なお、不整脈性失神の多くは前兆を伴わず突然起こるため、前兆を伴いやすい自律神経系による失神(神経調節性失神)との鑑別は比較的容易です。自分が診た選手に不幸なことが起こらないように、メディカルチェックなどに関わる際には責任を持ってやらなきゃですね。

そして万が一、目の前で心臓発作が起こってしまった場合には、迅速な心肺蘇生が重要です。

心肺停止時の救命処置による即時治療の成功率は20%未満とされていますが、AED設置の普及と心肺蘇生処置の習得によって、この比率は上昇するでしょう。心肺蘇生法やAEDの使い方などはみんなに理解しておいて頂きたいところです。

追記(2017/2/2):スポーツ現場での救命処置に関しては、また記事にまとめる予定です。

また、この記事で紹介したような突然死を引き起こす心臓疾患と鑑別すべき、スポーツ心臓症候群についても知っておきましょう。

スポーツ心臓症候群とは|突然死を起こす心疾患との鑑別点が必要!

2016.01.24
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