膝関節液とは|働きや性状を知っておくと診断や治療を理解しやすくなります!
どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
現在はコロナの影響をもろに受けており、所属期間での定期オペが激減しています。
なので、今は関連病院での臨床と研究、ICUの仕事がメインになっています。
コロナも少し下り坂になってきたようにも思いますが、この先一体どうなっていくのやら。。。
さて、今日は今更の内容かもしれませんが、関節液についてお話ししようと思います。
整形外科医であれば関節液を穿刺する機会は多いと思いますが、その性状から濁っているか濁っていないかくらいのことしか判断していない方もいらっしゃるのではないでしょうか(昔の僕もそうでした笑)。
もちろん透明性も需要なのですが、粘液性でもある程度、鑑別診断することが可能です。
また、関節液の働きについては意外に知られていないように思います。
関節液の構成成分や特徴を知っておくと、日常診療でなぜヒアルロン酸の関節内注射が行われているのかなどよくわかるので日々の診療と繋がって面白くなってくるかもしれません。
というわけで、この記事では、関節液の構成成分や特徴、働き、性状およびそれから鑑別できる疾患などについてお話ししようと思います。
よせやん
Contents
膝関節液とは
関節腔に粘稠な液が存在することを最初に指摘したのは、16世紀のParacelsusでした。
その関節液は、関節腔に存在する粘稠な液体で、滑膜組織を通過して漏出した血漿成分と滑膜細胞から分泌されるヒアルロン酸やタ糖ンパク質などが結合したものです。
電解質や低分子量の物質の濃度は血液とほぼ同じですが、高分子量の物質は血液より低濃度です。
これは、分子量16万以上の物質は滑膜毛細血管からの透過は難しいためであり、そのため関節液中のグロブリンは低濃度でフィブリノーゲンはほぼ存在しません。
ですので、関節内の血液は凝固しないのです。
しかし、一旦炎症が生じると血管透過性が亢進し、高分子量のものを通過するようになり、血管内の細胞も関節腔に遊走されて炎症部位に集まり、生体防御反応を引き起こします。
よせやん
正常関節では、関節液の生産と吸収はバランスが取れており、関節液の吸収は主に微小循環の静脈叢からなされます。
しかし、炎症などが生じて血管透過性が亢進して、さらに老廃物が増加するようになると、リンパ管を経て排液されるようになります。
関節液の働き
関節液の役割は、関節の潤滑と関節軟骨の栄養です。
ヒアルロン酸は極めて高い粘弾性を有していて、これを高濃度に含有する関節液は、歩行などの緩やかな動きにおいては粘性が優位に作用することで潤滑作用をもたらします。
また、走行などの速い動きにおいては弾性が優位に作用することで衝撃緩衝作用をもたらすとされています。
さらに、ヒアルロン酸は軟骨保護作用や抗炎症作用など様々な作用を有することが明らかになっています。
ですので、外傷性軟骨損傷や変形性膝関節症の患者さんにヒアルロン酸の関節内注射が行われるわけです。
よせやん
関節液の性状
ちなみに、最も大きな関節腔を持つ膝関節でさえ、正常では関節液は2ml前後と少量です。
ですので、正常膝ではプンクを行っても関節液を吸引することは困難です。
関節液の色調は淡黄色透明で、関節液を入れた試験管をかざすと試験管の背後は透けて見えるくらいです。
しかし、滑膜炎が強くなるとその透明度は低下し、混濁します。
この滑膜炎における関節液の混濁は、主に滑膜組織内の血管から遊走した白血球、脱落した滑膜組織、フィブリノーゲンなどに由来します。
正常な関節液中には赤血球は見られず、白血球は50〜100/mm2です。
関節液中の白血球数は、感染性、炎症性、非炎症性などの関節疾患の病態の判断の指標となります。
また、正常な関節液は上述の通り粘稠性が高く、3〜5cmの糸を引いて滴下する曳糸性を有します。
関節液の粘稠性はヒアルロン酸の濃度に比例し、低粘稠性になると糸を引かずに滴状に落下します。
このため、一般にタンパク分解酵素が高濃度になる炎症性疾患(関節リウマチ、感染性関節炎)では粘稠性は低下し、変形性関節症や外傷性関節炎などの非炎症性疾患では粘稠性は比較的保たれることが多いです。
おわりに
以上、今回は関節液について基礎的なことをまとめてみました。
すごく基礎的な内容ではありますが、こういう内容を知っていると日々の診療で関節液を穿刺した際の性状を見るのが少し楽しくなるかもしれません。
何か参考になることがあれば幸いです。
関節液の性状からの鑑別診断については実際にはもっと深いので、そちらはまたの機会に詳しくお話ししようと思います。
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