膝前十字靭帯(ACL)損傷の徒手検査(前方引き出しテスト、Lachman test、pivot shift test)のやり方と有用性
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです
よせやん
さて、今日はまた膝前十字靭帯(ACL)損傷についてやっていきましょう。
今回はACL損傷の徒手検査についてまとめていきます。
- どんな検査があるのか
- その正しいやり方、評価方法
- どの検査が有用なのか
などについて解説していきます。
Contents
ACL損傷の診断
ACL損傷の診断では、以下の3つの徒手検査による評価が一般的です。
- Lachman test
- pivot test
- 前方引き出しテスト
ところで、これらの正しい検査方法とどの評価が最も有用であるか知っていますか?
やり方が間違っていたり、臨床的にあまり有用でない方法をしているとせっかくやっていても結果に結びつかないので勿体ないです。
この記事ではこれらの正しい方法とこれらの徒手検査がACL損傷の診断に有用であるかについてお話しお話ししていきます。
よせやん
Lachman test
まず、Lachman testのやり方を紹介しときます。
- 患者を仰臥位にし、膝関節を軽度屈曲位にします。
- 示指を膝窩部に入れ、ハムストリングが十分に弛緩していることを確認します。
- 左膝なら患者の左側に立ち、右手で大腿遠位を、左手で下腿近位を把持して左手を前方に引き出します。
- 右膝では立つ位置、把持する手を逆にしましょう。
- 健側も同様に調べて比較します。
Lachman testのやり方のポイントと評価方法です。
- 股関節をやや外旋すると脱力を得やすい
- 疼痛や屈曲拘縮がある場合でも実施できる
- 前方移動量が大きい場合ばかりではなく、健側とのend point(停止点)の違いが大切
- 損傷なければend pointを感じ、損傷あれば消失
以前にLachman testについてのツイートをしてるのでそちらで動画も確認してください。
【Lachman test】
・患者を仰臥位、膝軽度屈曲位に
・示指を膝窩部に入れ、ハムストリングが十分に弛緩していることを確認
・左膝なら患者の左側に立ち、右手で大腿遠位を、左手で下腿近位を把持して左手を前方に引き出す
・右膝では立つ位置、把持する手を逆に
・健側も同様に調べて比較する pic.twitter.com/fqDZLkAeRc
— よせやん@目指せスポーツドクター (@sports_doctor93) August 29, 2018
【Lachman test】
こちらも分かりやすい。
・新鮮損傷でも陽性となりやすいACL損傷の最も鋭敏な検査
・しかしながら、必ずしも前方移動量が大きい場合ばかりではなく、健側とのend point(停止点)の違いを確かめることが重要
・ACL損傷がなければend pointを感じるが、損傷ある場合には消失する pic.twitter.com/IWNWmkn3Ge
— よせやん@目指せスポーツドクター (@sports_doctor93) August 30, 2018
pivot shift test
次に、pivot shift testです。
- 患者を仰臥位にし、膝関節伸展位にします。
- 右膝の場合、患者の右側に立ち、右手で踵部を把持して内旋ストレスをかけ、左手で下腿近位部を外側から把持して外反ストレスをかけます。
- 膝5〜10°屈曲位から徐々に屈曲していきます。
- 30°付近でガクッという手応えとともに整復感を感じたら陽性です。
- 健側と比較し、緩みの違いを検討します。
こちらもYoutubeの参考動画を載せておきます。
前方引き出しテスト
続いて、前方引き出しテストです。
- 患者を仰臥位にし、膝関節を90°屈曲位にします。
- 両示指を膝窩部に入れ、ハムストリングが十分に弛緩していることを確認します。
- 両母指を脛骨粗面付近にあて、脛骨を把持しつつ前方に引き出します。
- 健側と前方移動量を比較し、大きければ陽性とします。
- 陽性であれば内旋・外旋を加えて緩みの違いを検討します。
こちらもTwitterで紹介した動画を参照してください。
【前方引き出しテスト】
・患者を仰臥位、膝90°屈曲位に
・両示指を膝窩部に入れ、ハムストリングが十分に弛緩していることを確認
・両母指を脛骨粗面付近にあて、脛骨を把持しつつ前方に引き出す
・健側と前方移動量を比較し、大きければ陽性
・陽性であれば内旋・外旋を加えて緩みの違いを検討 pic.twitter.com/sK5uRoS4UH
— よせやん@目指せスポーツドクター (@sports_doctor93) August 29, 2018
ACL損傷の診断に徒手検査は有用か
というわけで、今回の本題です。
ACL損傷の診断にこれらの徒手検査が有用かどうか検討していきましょう。
2005年までの28編の論文を対象とした1つのメタアナリシスでは、非麻酔下における新鮮ACL損傷の徒手検査での検討で、Lachman testが感度・特異度とも高く、pivot shift testは特異度の高い結果でした。
一方、前方引き出しテストは感度・特異度ともに低い検査でした。
過去30年の14文献を対象としたメタアナリシスでも、Lachman testが最も特異度が高い徒手検査でした。
非麻酔下と麻酔下での徒手検査の結果を比較すると、非麻酔下ではLachman testが最も感度が高かったですが、特異度ではpivot shift testが最も高い結果となっています。
麻酔下における徒手検査は、疼痛・筋緊張を取り除くことで、pivot shift testの感度・特異度の上昇を認め、検査の正確性を向上させていたと考察されています。
これらの結果から、前方引き出しテストは診断において有用とは言い難いですが、Lachman testやpivot shift testは有用と言えます。
Lachman testやpivot shift testは、手技に習熟が必要ではありますが、コストもかからず臨床的な価値も高いと言えるので、是非この機会にやり方を復習しておきましょう。
よせやん
参考図書
2019年に発売されたACL損傷の診療ガイドラインです。
詳しい文献はこちらのガイドラインを参照して下さい。
ガイドラインシリーズは非常に勉強になりますよ。
よせやん
おわりに
以上、今回は膝前十字靭帯(ACL)損傷の徒手検査についてお話ししました。
ちなみに僕は診察するときには上記の全てを行なっています。
どれも毎回やっていると違いがわかるようになった気はしますが、信頼度が高いのはLachman testとpivot shift testということですね。
ただし、これらの検査は基本的に主観的な検査になるので、僕は検査を定量化して客観的なデータとして捉えることも重要だと思っています。
そのためには、膝関節運動テスタ(KMI)やKS mesureなどで数値として記録を残し、実際に自分の徒手検査と同じ結果であるか確認するのがオススメです。
よせやん
今回のまとめです。
【ACL損傷の診断に徒手検査は有用?】
・前方引き出しテストは感度・特異度ともに低い
・pivot shift testは特異度が高い
・Lachman testは感度・特異度ともに高いただし、麻酔下での評価ではLachmanが最も感度が高く、pivot shiftが最も特異度が高い。
結論:Lachmanとpivot shiftは診断に有用
— よせやん@目指せスポーツドクター (@sports_doctor93) October 2, 2019
本気でスポーツ医学と運動器診療を学びたい人のために!
- どこにいても(都会でも地方でも)
- 誰でも(医師・理学療法士・鍼灸師・柔道整復師・トレーナー・学生などスポーツに関わる全ての人)
- いつでも(24時間)
利用可能なスポーツセミナー動画配信サービス!!
1週間1円トライアル実施中!!