肩の激痛をきたす石灰性腱炎とは|原因・病態・画像・診断・治療!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
最近救急外来に来る患者さんの数が半端ないので、ICUも含めたくさんの患者さんを診ています。
疲れてはいますが、いい勉強になっているなぁと思います。
救急対応のことや全身管理のことはたくさん勉強になったことがあるのでこちらも記事にしていかないとですね。
さて、これから最近ちょこちょこTwitterでTipsを配信している肩関節の疾患について記事にしていこうと思います。
まずは肩関節の石灰性腱炎についてまとめていきましょう。
Contents
石灰性腱炎とは
女性にやや多く、40〜50歳代にピークがあります。
急性に発症し、痛風に匹敵する強い自発痛、夜間痛、運動時痛、圧痛を認めます。
夜間全く眠れない例や上肢を全く動かせない例も多いです。
局所の発赤、熱感を伴うこともあります。
石灰の吸収とともに臨床症状は寛解しますが、石灰沈着は症状消失後も残ることがあります。
病態
真の原因は不明ですが、腱内に線維軟骨化生が起こってカルシウムが沈着することが原因とされています。
石灰の部分は炭酸アパタイトなどのリン酸カルシウムで白色、泥状であることが多いです。
形成期には固く固形ですが、吸収期には柔らかいペースト状になります。
沈着した石灰は貪食作用によって吸収され、通常1〜2週で消失します。
この過程において、主に肩峰下滑液包に起こる急性の結晶誘発性滑膜炎滑膜炎が本症の激痛の病態です。
急性型・亜急性型・慢性型に分類されることもありますが、通常、石灰性腱炎という時には急性型を指します。
石灰が腱板を穿破して肩峰下滑液包に広がったものを石灰性滑液包炎(calcific bursitis)と呼びます。
症状・診断
沈着した石灰が吸収される過程で炎症反応が惹起され、腱内圧が亢進するために強い疼痛を生じます。
症状は強烈であり、肩の自動運動が全くできず、救急外来を受診されることもあります。
肩峰下部に腫脹、圧痛などの急性炎症所見を認めます。
痛みのために他動的な運動も著しく制限されます。
一方で、慢性期に沈着した石灰のために腱板が肥厚し、肩峰との間でインピンジメント(衝突)を起こすと、painful arc(動作時の痛み)やインピンジメントサイン(Neer・Hawkins)がみられるようになります。
血液検査
血液検査では、白血球は増加し、CRPが陽性となります。
画像検査
単純X線検査を行えば診断は容易です。
肩関節正面像とスカプラY像を撮影します。
軸写は疼痛を悪化させるため撮影しない方がよいでしょう。
石灰の沈着部位としては、棘上筋腱が50%と最多で、次いで棘下筋腱が多いです。
CT検査まで行うことは稀ですが、一応画像所見を載せておきます。
治療
急性期には、注射針で穿刺して石灰吸入を行い、そのあとにステロイドを注入します。
沈着した石灰は、いわば炎症の燃料であり、これを早く除去することにより早く痛みを軽減させることが可能です。
石灰が泥状でなく粉末状(個体)である場合は吸引できません。
しかし、針を刺すことは石灰が肩峰下滑液包に排出される通路を作成することになるため、石灰化した部分を何ヶ所か穿刺することで吸収を促すことには意味があるとされています。
石灰の吸引、ステロイドの注入は劇的な効果をもたらし、除痛・可動域の改善が見られます。
これだけの治療で症状が劇的に改善し、患者さんに感謝してもらえるため、僕はこの疾患が好きです。
よせやん
局所麻酔薬を入れた注射器に18G針をつけ、石灰巣に刺入し、局所麻酔薬を少量注入した後に内筒を引きます。
これによって、石灰が注射器の中に吸引されます。
吸引される液が石灰で濁らなくなるまでこの操作を繰り返します。
最後に肩峰下滑液包にステロイドを注入します。
石灰が小さい場合には、ステロイドと局所麻酔薬を肩峰下滑液包に注入するだけでも十分です。
その他の治療法としては、炎症を抑えるためにNSAIDsを数日間処方します。
また、シメチジンなどの薬によって石灰化の吸収が促進されることも知られており、保存的治療に使われます。
慢性期に明らかなインピンジメントサインを呈する症例では、上述の保存療法ではあまり効果が期待できません。
そのため、症状が強い場合には手術的な治療(肩峰下除圧術・石灰摘出術)を考慮します。
おわりに
以上、今回は石灰性腱炎について簡単にまとめました。
これくらいのものならあまり時間をかけずに書けるので、また少しずつ医学情報も発信していきますね。
では、また次回お会いしましょう。
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