高次脳機能障害|脳震盪などの頭部外傷を繰り返すことによる後遺症
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
最近、日中の救急車を絶対に断るなという指令が下り、外傷患者さんがものすごい増えてきたので、昨日は関節鏡の手術には入れず、ひたすら外傷の手術をしていました。
もちろん勉強になるからいいのですがスポーツ班の手術日に関節鏡ができないのは寂しいですね。
さて、今日は脳震盪などの頭部外傷の後遺症として知っておいて欲しい高次脳機能障害についてお話しします。
スポーツ関係者のみなさん、高次脳機能障害ってご存知ですか?
脳震盪などの軽い頭部外傷だとしても繰り返すことにより、後遺症として高次脳機能障害が生じてしまう可能性があります。
これはスポーツ関係者全員に必ず知っておいてほしい知識です。
この記事を読んで、頭部外傷を繰り返すことによって起こりうる高次脳機能障害について知って頂ければ幸いです。
この記事は主に下の文献を参考にしています。
永廣 信治ら.神経外傷.2013
Contents
脳震盪とその後遺症
まず脳震盪について下の記事を見て確認しておきましょう。
そして、脳震盪などの頭部外傷後の危険な病態として知っておかなくてはいけないものの1つにセカンドインパクト症候群があります。
脳震盪を軽視していると起こりうる怖い病態です。こちらに関しては下の記事で確認してください。
繰り返す頭部外傷と高次脳機能障害
では、いよいよ今回の本題です。
2回目の受傷で急激に悪化するのがセカンドインパクト症候群でしたね。
一方、何度も慢性的な頭部打撃を繰り返すことによって、ある程度年月が経った段階で高次脳機能障害を起こす場合があります。
これをChronic traumatic encephalopathyもしくはPost-traumatic encephalopathyといいます。
ボクシングに多いので、punch-drunk syndromeやboxer’s encephalopathyとも言われ、1928年に 初めてMarlandによって報告されました。
ボクシングでは、同日に何回も顔面の打撃を受けることになり、脳へのダメージも蓄積されることになります。
Retrospecvtiveな評価では17〜50%のボクサーに高次機能障害が認められるとされています。
当然のことながら、空手や柔道などのその他の格闘技や、アメリカンフットボール、ラブビーなどのコンタクトスポーツでも起こり得ます。
高次脳機能障害
そもそも、高次脳機能とはどういうものを言うのでしょうか。
高次脳機能(認知)とは、知覚、記憶、学習、思考、判断などの認知過程と行為の感情(情動)を含めた精神(心理)機能を総称する。病気(脳血管障害、脳症、脳炎など)や、事故(脳外傷)によって脳が損傷されたために、認知機能に障害が起きた状態を、高次脳機能障害という。
リハビリテーション心理職会より引用
症状は認知機能障害を中心とした遅発性の慢性脳損傷であり、認知症、錐体路・錐体外路症状、小脳失調、易怒性・多幸性などの性格変化が出現します。
神経心理学的な検査では、言語障害、注意力、反応時間などの障害が認められます。
画像検査では頭部CT・MRIで、脳萎縮とそれによる側脳室・第三脳室の拡大、脳梁の非薄化、透明中隔腔の拡大を認めます。
病理学的には、アルツハイマー神経原繊維変化、パーキンソン病でみられるような黒質の変性萎縮、小脳Purkinje細胞の脱落などが観察されます。
ボクシングでは以前に比較し、一人あたりの試合数の軽減やラウンド数の軽減などにより、その頻度は減少してきています。
しかし、スポーツの低年齢化が進むことで、ボクシングだけでなくサッカーのヘディングの繰り返しも高次脳機能に影響を与える可能性が指摘されています。( 谷諭.臨床スポーツ医学.2010 )
昨年11月に、アメリカのサッカー協会が10歳以下の選手のヘディングを禁止したのは記憶に新しいですよね。
こちらに関してはまた後日まとめる予定です。
よせやん
まとめ
以上、今回は脳震盪などの頭部外傷を繰り返すことにより起こりうる後遺症として知っておいて欲しい高次脳機能障害についてお話ししました。
症状が軽いからといって脳震盪などの頭部外傷を軽視してはいけない理由がおわかり頂けたでしょうか。
軽い頭部外傷だからといって、それを繰り返すことにより後遺症として高次脳機能障害が生じる可能性があります!
よせやん
これは、スポーツ選手、監督・コーチなどのチームスタッフ、そして、選手の家族を含め、スポーツに関係する
人には全員知っておいて欲しいことです。スポーツ頭部外傷による悲しいニュースが減るように、この記事の内容をシェアして頂けたら幸いです。
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