新型コロナウイルス感染症による自粛解除後のトレーニング再開の具体的方法と注意点|スポーツ傷害予防編

どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
研究の予備実験も進み、必要な抗体の購入も終わり、臨床研究のデータもまとめ終わり、研究はかなり順調に進んでいます。
この調子で研究以外のこともしっかりやっていかないといけませんね。
さて、本日は昨日の続きで新型コロナウイルスによる自粛解除後のトレーニング再開ついてお話しようと思います。
5月14日に東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県、大阪府、京都府、兵庫県、北海道以外の39都道府県で新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されました。
これに伴い、トレーニングを再開する選手やチームも増えてくるでしょう。
1ヶ月以上自粛期間がありましたから、トレーニング再開後には怪我が増えることが予想されます。
また、再び新型コロナウイルスが再燃しないようにトレーニング再開後も引き続き感染対策にも留意していくべきでしょう。
というわけで、この記事では自粛明け(長期間のオフ明け)のトレーニング再開における具体的方法と注意点についてスポーツ傷害予防の観点からお話ししようと思います。
肝は段階的なトレーニング再開です!!
トッププロチームの実際の例も踏まえてトレーニング再開の具体的な方法と注意点について紹介していきますので、一人でも多くのスポーツ関係者の皆様に参考にして頂き、トレーニング再開後のケガ人が減る一助になれば幸いです。
よせやん
Contents
自粛明けは怪我のリスクが高い
ここは昨日お話しした内容ですが、長期間のオフ後は怪我のリスクが高いと言われています。
これは、体力(筋力・持久力)の低下、体重の増加がリスクとなっているのでした。
もちろん、今回の新型コロナウイルスの自粛解除後も同様のことが予想されます。
詳しく説明していきましょう。
まず持久力についてですが、長期間のオフ後にはマラソンのような持久力よりもダッシュなどを反復して繰り返す回復力が大きく低下していると言われています。
また、持久力ほどではありませんが、筋力も低下している可能性が高いでしょう。
さらに、長期間のオフで体重が増加するとそれだけ身体を動かすのに大きな力が必要になり、相対的に筋力は低下することになります。
自粛期間中に筋トレとジョギングを行なっていれば大丈夫だろうと思うかもしれませんが、やはりサッカーなど競技に必要な総合的な体力は低下していると考えておいた方がいいと思います。
よせやん
では、どうやってトレーニングを再開するのか
ということで、このような状況下でどうやってトレーニングを再開していけば怪我のリスクを減らすことができるのでしょうか。
それはズバリ、段階的にトレーニングを再開することです。
よせやん
具体的に言うと、
- トレーニング時間
- トレーニング強度
- トレーニング要素の種類
を段階的に上げていくことが大切です。
では、自粛解除後にいざトレーニングを始めようと思った場合、どれくらいのトレーニングから始めればいいのでしょうか。
JFAが発表した「トレーニング活動再開に向けた留意点」にいい資料があるので紹介します。
個人トレーニング→スモールグループでのトレーニング→チーム全体のトレーニング→練習試合→公式戦と進めていきます。
個人トレーニングでは、ストレッチ、ランニング、フィットネス、ボールコントロールなどを行います。
スモールグループでのトレーニングの時点では、まだ対人プレーは避けて実施します。
チーム全体の活動再開からやっと段階的に対人プレーを取り入れていきます。
そして、公式戦に向けてトレーニングマッチで仕上げていく感じですね。
基本的に、1つのフェーズに1週間はかけて進めていくことになります。
トレーニング再開後に怪我のリスクが高いのはやはり初期および実践的な練習試合を行った時です。ですので、それを意識しておき、焦らずに1つのフェーズに1週間〜2週間かけて進めていくようにしましょう。
よって、どんなに早くても練習試合を行うレベルまでは1ヶ月はかけて仕上げていくことになります。
マジョルカの例
これは、実際にトッププロのチームでもこのようにトレーニングを再開しています。
僕は久保建英選手が所属しているマジョルカのTwitterアカウントをフォローしていますが、マジョルカもまさにこれに倣ってトレーニングを再開していることがわかります。
個人トレーニング
スモールグループでのトレーニング
👹 タケがピッチでの練習を再開
😆 Take es feliz con césped y balón pic.twitter.com/pklTUXNroA
— Real Mallorca (👹🏡) (@RCD_Mallorca) May 9, 2020
チーム全体でのトレーニング
🔋 ¡Cumpliendo fases y pasando etapas! #NextComing⚽️ #JuntsSomMillors pic.twitter.com/Gzzg1GIziS
— Real Mallorca (👹🏡) (@RCD_Mallorca) May 19, 2020
トップ選手でもこうやってきちんと段階的にトレーニングを再開しているのに、基礎体力で劣るもっと下のカテゴリーのアスリートや一般の人がいきなり全力でトレーニングしたり試合をしたりすれば、より怪我をするリスクは高くなってしまうでしょう。
日本アスレチックトレーニング協会の提言
JFA以外の団体でも、同じように自粛明けのトレーニング再開についての提言がなされています。
ただ、どこの団体も言っていることは大体共通していて、基本的に段階的にトレーニングを再開するということです。
それだけ段階的にトレーニングを再開するのが大切であるということですね。
日本アスレチックトレーニング学会の「自粛解除後の練習でケガをしないために」という提言では、自粛解除後の練習は自粛中に実施したトレーニングの0.8〜1.3倍の負荷から始めることが勧められています。
また、トレーニング負荷は1週間ごとに徐々に増やしていくことを推奨しています。
自粛明けに落ちた体力を取り戻そうと焦っていきなり高強度のスプリントランをしたり、自粛前と同じように動けると思っていきなりゲームをしたりすれば、怪我するリスクが非常に高いのは科学的なデータがなくても経験的に皆さん分かっていると思います。
早く体力を取り戻そうと焦るのではなく、自粛明けで怪我のリスクが高いことを知って、早く体力を取り戻したいからこそ焦らずに軽いトレーニングから段階的に負荷を上げていくことがトレーニング再開時の肝と言えそうですね。
よせやん
トレーニング再開時の注意点
では最後に、今までのことを踏まえた上で、トレーニング再開時の注意点として皆さんに知っておいてほしいことを挙げていきます。
- 急激にトレーニングの時間と強度を増やさない
- セッション間のインターバルをしっかりと取る
- 休憩時間に水分をしっかりと取る
- 10〜20分の動的ウォームアップを積極的に行なう
- 筋肉痛も残りやすいためアフターケアもしっかりと行う
- バランスのいい十分な栄養と十分な睡眠を確保する
当たり前のことと思われるかもしれませんが、やはりこういう時に大切なことは基本的なことです。
万事を期して、当たり前のことを当たり前にやっていきましょう。
特に、種目に特徴的な動作を取り入れた動的なウォームアップを行うことは、その競技に関連する動作パターンを再構築するためにも大切になってくると思います。
よせやん
おわりに
以上、今回は新型コロナウイルスによる自粛後のトレーニング再開における注意点としてスポーツ傷害予防の観点からお話ししました。
今回お話ししたことは、自分だけが分かっていてもチーム関係者のみんながわかっていないと意味をなさない可能性があります。
選手が意識していても、監督がいきなりハードな練習をやらせたらそれまでですからね。笑
ですので、こういう情報は自分だけに留めておくのではなく、チームスタッフやアスリートの仲間にもぜひ共有してあげてください。
よせやん
次回は、新型コロナウイルスによる自粛後のトレーニング再開における注意点について感染症予防の観点からお話ししようと思います。
次回もタメになる記事を書こうと思いますのでお楽しみに。
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