2017/01/02

サッカー選手に多い恥骨炎とは|その症状と治療法・リハビリまで解説!

 
股関節 骨盤 模型

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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること!仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい!日々の勉強のため、また、同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思いブログを書いています。➡︎詳しいプロフィールはこちら

よせやん

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スポーツドクターを目指す若手整形外科医です。

どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

記事の修正も本日より再開します。しばらくの間、お休みさせて頂き申し訳ありませんでした。

今日はサッカー選手と怪我シリーズで恥骨炎に関してやっていきます。

意外にも恥骨炎で悩まされている選手は多く、サッカー日本代表MF長谷部誠選手もそのうちの一人です。

恥骨炎

骨盤は下図のような構造になっています。

長内転筋の起始は恥骨結合前面・恥骨結節であり、腹直筋は恥骨隆・恥骨結合に停止します。

骨盤 解剖
図:メディカルイラスト図鑑より引用

恥骨炎とは、長内転筋腱や腹直筋腱の付着部炎であり、これらが進行すると恥骨結合における変形性関節症を引き起こすこととなります。
1949年に初めて、サッカー選手における鼠径部痛が報告されています。
( Bandini T. Tunistica Patol Laboro. 1949 )

サッカーと恥骨炎

サッカーにおけるあらゆる動作は6秒以内に行われるものであり、常にスピードと方向転換能力が要求されます。このようなサッカー動作は、選手の身体に対して大きな負担となり得ます。

鼠径部痛はサッカー選手にしばしば見られる症状であり、それらは試合数の増加や不良な練習環境、選手内因的な要因およびオーバーユースなどにより頻発するとされています。

鼠径部の傷害は股関節に繰り返しの動きが伴うサッカー選手に多く発生し、トレーニングやゲームでのキック動作は内転筋群や下部腹筋を酷使することになります。繰り返される内転筋群や腹筋群の損傷、腱炎、恥骨炎および変形性関節症はすべてサカー選手における鼠径部痛の原因となります。

サッカー選手で恥骨炎に悩まされている日本人選手としては、日本代表MF長谷部誠選手が有名です。2015年11月下旬にも恥骨炎のために、長期離脱の可能性が報道されていましたね。

他に、元日本代表のFW中山雅史選手、MF中田英寿選手も恥骨炎で悩まされていました。外国人選手だと、ミラン本田の同僚であるFWマリオ・バロテッリ選手も恥骨炎のために長期離脱しており、モナコで手術加療を受けたと報道されています。

症状・検査

恥骨炎の最初の症状は恥骨結合部の陰湿な痛み・鼠径部の張りであり、ランニングにより徐々に痛みは増していき、その痛みは数時間ないし数日間残存します。

臨床検査としては、恥骨結合部の圧痛の確認、内転筋の圧痛の確認(図1)、患側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動、および両側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動(図2)などを行います。

恥骨炎診察
図1.左:恥骨結合の圧痛の確認 右:内転筋の圧痛の確認
( Cohen M, et al. 臨床スポーツ医学. 2006より引用 )

恥骨炎診察2図2.左:患側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動 右:両側での抵抗下股関節内転と体幹屈曲運動
( Cohen M, et al. 臨床スポーツ医学. 2006より引用 )

X線検査では、恥骨結合部の狭小化や結合部の分離を伴った骨粗鬆症、嚢胞や軟骨下骨の硬化といった変形性関節症の所見、骨膜性骨修復像、および2mm以上にわたる鉛直方向への変移(これは恥骨結合の不安定性を表します)などを認めます(図3)。

スクリーンショット 2015-12-19 22.36.14
図3.X線像:変形を伴った恥骨結合部
( Besjakov J, et al. Acta Radiol. 2003より引用 )

MRI検査では、恥骨枝および恥骨結合部での異常信号を認めます(図4)。

恥骨炎MRI
図4.MRI像:恥骨結合部および軟部組織に異常を認める
( Barlie A, et al. Radiol Med (Torino). 2000より引用 )

治療

治療としては、まず最初に症状の緩和を目的にした保存療法を行います。

この段階では、鎮痛剤の投与と背筋群や腹筋群および骨盤周囲筋のストレッチングを行います。

ストレッチングは再発防止の観点からも非常に重要です。

非ステロイド抗炎症薬やステロイド注射および鍼(はり)療法は、症状の緩和をもたらしますが、保存療法によって症状の緩和がみられなかった場合には、手術療法を考慮する必要があります。
( Lynch S, et al. Sports Med. 1999 )
( Meyers W, et al. Am J Sports Med. 2000 )

恥骨炎に対する手術療法は、非常に効果的であるとされており推奨されています。
( Biedert RM, et al. Clin. J Sports Med)

Cohen Mらは、12ヶ月以上にわたり鼠径部および恥骨部に疼痛を訴えており、保存療法(理学療法・非ステロイド系抗炎症注射およびステロイド注射)によって改善することのなかった男子サッカー選手30名(18〜30歳)を評価し、全例に恥骨結合部および両側内転筋腱の切離術(図5)を行った結果を報告しています。

これによると、患者は平均48時間で退院しており、質問紙における主観的評価および臨床検査による客観的評価では、すべての選手が手術療法に満足しており、ハイレベルなスポーツに復帰することが可能であったと報告されており、術後36ヶ月において、再発ならびに選手の能力的な障害は1例も認めなかったことが報告されています。

恥骨炎 手術図5.左:腹直筋付着部(左右)の切離 右:小切開による両側内転筋切離
( Cohen M, et al. 臨床スポーツ医学. 2006より引用 )

おわりに

以上、今回は恥骨炎についてまとめました。

サッカーでの傷害を予防するポイントは適切なコンディショニングであり、特に顕著な筋バランスの崩れは傷害を引き起こす原因となります。また、繰り返しのオーバーロードや不適切なトレーニング技術および反復するキック動作は、恥骨炎を引き起こす可能性があり、それらは選手生命をも脅かすほど重篤な症状になることもあります。

ですので、恥骨炎を疑うような症状を見つけた場合にはきちんと医療機関を受診してください。

長谷部選手の早期復帰および活躍を祈念しております。

 

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