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肩を脱臼した野球選手を監督が整復し拍手喝采|皆さんに知って頂きたい医療的側面

 
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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること! 仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい! 自分の日々の勉強のため、また同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思い、スポーツ医学、整形外科、資産形成などについてブログを書いています。
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どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

よせやん

 

僕は全然知らなかったのですが、2017年に甲子園常連校の選手がスライディングした際に左肩を脱臼してしまい、監督が現場で整復しすぐに試合に戻ったということがあったそうです。

今日たまたまそんなことがあったのを知り非常に驚いたので、時間が経ってはいますが少し考察してみたいと思います。

 

この件を通して多くの方に正しい知識が伝わり、同じようなことが繰り返されないこと、選手のことを第一に考えた日本のスポーツ界になっていってくれることを願います。

 

Contents

問題のシーン

その問題のシーンに関しては、こちらの動画を見てください。

 

 

追記(2020/2/26):現在、動画は削除されてしまったようですので、Youtubeから新たに引用します。

これは調べてみると2017年の出来事のようです。

 

甲子園常連校の明徳義塾の選手が2塁盗塁を狙ってスライディングした際に左肩を脱臼してしまいます。

痛みが強くプレー不能となり、味方選手の肩を借りて一旦ベンチへ退きました。

そこで監督がまさかの行動に・・・

 

なんと肩を無理やり(医療者からするとこの表現が正しいと思います)整復し、そのまま選手を試合に戻したのです。

 

皆さんはこれを見てどう思いますか?

よせやん

世間一般の反応は

 

 

世間一般の反応はこんな感じです。

 

整復した監督を賞賛し、美談として語られています。

よせやん

医療者の声は

では、医療者の声はどうなのでしょうか・・・。

 

あり過ぎて載せきれないのでここら辺でやめておきます。

よせやん

 

体験談

あと、同じような体験を過去にされた方のコメントも載せておきます。

 

これらの話は本当なのか?

 

そこら辺に関しても今から述べていきます。

よせやん

何が問題なのか?

やっと本題です。

 

この動画の何が問題なのかと言うと、大きく3つです。

  1. 資格のない人間が整復を行なっていること
  2. 整復の方法
  3. 適切な手順を踏んでいないこと

順番に見ていきましょう。

 

整復を行えるのは

基本的に骨折・脱臼の整復を行うことができるのは医師のみです。

ただし、骨折又は脱臼の場合に、医師の診療を受けるまで放置するときは生命又は身体に重大な危害を来す虞のある場合に柔道整復師がその業務の範囲内において患部を一応整復することができます

 

これは医師法および柔道整復等営業法に規定されていることです。

つまり、医師でも柔道整復師でもない人間が整復を行うことは許されておらず、整復を行うことはむしろ傷害に当たる可能性があるのです。

 

整復の方法

次に、整復の方法が極めて乱雑であることです。

医師や柔道整復師があのような整復方法をとることはまずないでしょう。

脱臼が戻ればそれでいいじゃないか!と思われる方がいるかもしれませんが、そんな単純な話ではありません

 

例えば初回脱臼の患者さんで本来ならば保存的に治療できたケースだと仮定しましょう。

しかし、無理やり強引に整復することにより関節唇靭帯複合体が骨片ごと関節窩からはがれる病変(骨性バンガート病変)や、上腕骨頭骨折などを合併することがあります。

そうなると、きちんと治療していれば手術しなくてよかったのに、手術でないと治療できなくなってしまう場合があるのです。

 

骨性バンガート病変は反復性脱臼の原因となり、その後の運動や場合によっては日常生活にまで支障をきたし手術での加療が必要になります。

実際に反復性脱臼で易脱臼性になると、夜普通に寝ているだけで肩が外れたりすることすらあります。

また、上腕骨頭骨折が生じると骨折した骨頭は脱臼した場所に残ってしまうため当然手術でないと治療できません。

 

僕は実際に整形外科医でない医師が整復を行なって、上腕骨頭骨折を生じ手術した症例を経験したことがあります。

よせやん

適切な手順を踏んでいない

そして、3つ目の問題は適切な手順を踏んでいないということ。

要は、整復することの了承を得ていないこともダメなんですね。

まあこの場合はそもそも整復すること自体がアウトなのですが・・・。

 

そもそも、僕たち整形外科医が肩関節脱臼の患者さんを診る時にどうするのか。

基本的にまず病院でレントゲンを撮って骨折の合併がないことを確認します。

整復した後にレントゲンで骨折が判明した場合、受傷時に骨折していたのか、整復操作により骨折したのか判断できないからです。

医療者が自分の身を守るためにも必ずレントゲンを先に撮ります。

 

その後、整復に伴うリスク(骨折など)を説明した上で整復を行います。

きちんとしてる施設は同意書も書いてもらってると思います。

 

選手だってこういう可能性を知っていたら現場で整復しないで欲しいと思う人だっているかもしれません。

よせやん

今回の動画を見て僕が伝えたいこと

僕は別にこの整復を行なった監督を責めたくてこの記事を書いているわけではありません

実際、古い時代にはドクターが会場にいることも少なく、正しい医療知識を伝えてくれるトレーナーさえも現場におらず、また指導者や選手も医療リテラシーを持っていないため、現場で指導者が整復するということは少なからずあったようです。

 

ただ、今は時代が違います。

この動画を見た医療者の反応を見れば、これがいろんな意味で間違った行為であることがわかるでしょう。

今回の動画の場合、選手が監督を訴えるようなことはないのでしょうが、仮に骨折を合併しており両親などに訴えられたとしたら勝ち目は全くないでしょう。

ですから、指導者の方が自分の身を守る意味でもやめて欲しいというのが1点。

 

そして、何よりもこんな現状では選手が将来的に不幸になる可能性がかなり高いことを知ってもらいたいのです。

本来ならばきちんと治療すれば何の支障もなくスポーツ復帰できたであろう選手が、反復性脱臼に移行してしまい手術を受けなければいけなくなってしまったり、スポーツの道を断たれてしまう可能性があるのです。

 

確かに、その現場においては指導者は当然勝つために選手に試合に出て欲しいと思うでしょうし、選手も大事な試合であればあるほど何とかして試合に出たいと思うでしょう。

僕も本気でスポーツをずっとやってきているのでそんなことは百も承知です。

 

ただ、選手も熱くなっている時だからこそ、周りの方、特に一番近くにいる指導者の方には選手のことを第一に長い目で考えてあげて頂きたいのです。

よせやん

繰り返さないためにどうするべきなのか

では、同じことが起こらないようにするためにはどうすればいいのでしょうか。

 

まずは、スポーツ医療者はもちろんですが指導者や選手、一般の方にもこれが間違った行為であることを知って頂く必要があるでしょう。

そうでないと、最初に紹介したような反応になるのは理解できます。

ですから、僕たち医療者が正しい情報を伝える必要があると考えて、僕も今回ツイートしたり、こうやってブログを書いているわけです。

 

そして、もう一つはスポーツ医療体制を整えることです。

その現場にきちんと対応できるドクターがいて、その方が対応していたら何も問題にならないのですから。

ドクターが現場にいなかったり、どうするべきかを伝えることができるトレーナーや看護師などがいないことが問題だと思うのです。

また、そういう人間は客観的な目で状況を見ることができることも大きいと思います。

 

おわりに

めちゃくちゃ記事が長くなってしまいましたが、

僕が考えているのはとにかく選手のことを第一に考える日本のスポーツ界になってほしいということです。

別にこの監督さんを責めたいわけでもないし、この出来事を掘り返したいわけではないのです。

 

ただ、この件を通して多くの方に正しい知識が伝わり、同じようなことが繰り返されないことを祈るばかりです。

よせやん

 

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