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腸骨筋肉離れと腸骨筋周囲炎|アスリート鼡径部痛(groin pain)の原因の1つである腸骨筋損傷の鑑別!

 
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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること! 仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい! 自分の日々の勉強のため、また同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思い、スポーツ医学、整形外科、資産形成などについてブログを書いています。
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どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

よせやん

毎日更新ととりあえず言ったものの、1日で終わらせるわけにはいかないので今日も記事書いていきます。

今週中に科研費の書類作成と海外学会のスライド作らなきゃいけないので忙しいですが、言い訳せずにやっていきましょう。

 

というわけで、今日は昨日に引き続きアスリートの鼡径部痛groin painについてやっていきましょう。

この記事では、groin painの1つである腸骨筋損傷の鑑別についてまとめてみます。

実はこれは9月に僕自身が怪我した疾患になります・・・笑。

Contents

腸骨筋損傷

まず昨日のgroin painのドーハ分類を復習しておきましょう。

 

腸骨筋関連鼡径部痛は股関節屈曲時の抵抗時痛、もしくは股関節伸展時のストレッチ痛にて診断される鼡径部痛のことを言うのでした。

圧痛による診断は触診に関して不確実性があるとのことで、ドーハ分類の詳細を見ても腸腰筋関連鼠径部痛に関しては特別に記載がありませんが、怪我をしてみて自分の身体を触診したら明らかに腸腰筋に圧痛がありましたね。

 

腸骨筋損傷については以下の論文が非常に参考になります。

Tsukada S. et al. Iliopsoas Disorder in Athletes with Groin Pain: Prevalence in 638 Consecutive Patients Assessed with MRI and Clinical Results in 134 Patients with Signal Intensity Changes in the Iliopsoas. JBJS Open Access. 2018

 

この論文では、腸骨筋関連鼡径部痛の原因は主に腸骨筋損傷であるとされており、腸骨筋損傷は腸骨筋肉離れ(muscle-strain type)腸骨筋腱周囲炎(peritendinitis typeに分類されます。

 

腸骨筋肉離れと腸骨筋腱周囲炎の鑑別

では、どのようにしてこれらを鑑別すればよいのでしょうか。

 

まずは身体所見をしっかりと取り腸骨筋関連鼡径部痛と疑うことが大切です。

よせやん

腸骨筋損傷の身体所見
  • 腸骨筋の圧痛
  • 股関節屈曲時の抵抗時痛
  • 股関節伸展時のストレッチ痛

 

また、受傷起点がある場合はそれも参考になります。

腸骨筋損傷の特徴
  • サッカーに特に多い(61.9%)

外傷以外の原因

  • 過度の腹筋運動
  • 過度の階段ダッシュ
  • 過度のロングキックの練習

 

腸骨筋関連鼡径部痛で疑った場合はMRI検査を行いましょう。

後ほど説明しますが腸骨筋肉離れと腸骨筋腱周囲炎ではスポーツ復帰時期も大きく異なってきますし、MRI検査はやはりやるべきだと僕は思いますね。

 

MRIによる鑑別

では、腸骨筋肉離れと腸骨筋腱周囲炎のMRI所見での鑑別をみていきましょう。

左図が腸骨筋肉離れのMRI所見です。

腸骨筋の筋実質内に広範かつ明瞭な高輝度陰影を認めます。

 

一方、右図が腸骨筋腱周囲炎のMRI所見です。

腸腰筋の腱周囲に沿って淡い高輝度陰影を認めます。

 

MRI検査を行うとはっきりとわかりますね。

よせやん

 

腸骨筋肉離れと腸骨筋腱周囲炎の違い

では、次に腸骨筋肉離れと腸骨筋腱周囲炎の特徴の違いについて見ていきましょう。

腸骨筋肉離れの特徴
  • 肉離れなのに受傷機転の自覚が少ない(22.1%)
  • スポーツ復帰は平均8.6 ± 8.3 週

以下の合併症の可能性

  • 恥骨上枝の骨髄浮腫
  • 内転筋損傷
  • 腹部斜筋損傷
  • 外側広筋損傷
  • 大腿直筋および半腱様筋損傷を伴う内転筋の損傷

 

腸骨筋腱周囲炎の特徴
  • こちらも受傷機転の自覚が少ない(31.8%)
  • スポーツ復帰は平均20.1 ± 13.9 週

以下の合併症の可能性

  • 恥骨上枝の骨髄浮腫
  • 内転筋の損傷
  • 閉鎖筋の損傷
  • 前下腸骨棘の剥離骨折
  • 前上腸骨棘の剥離骨折
  • 大腿骨の疲労骨折
  • 鼡径ヘルニア

 

肉離れなのに受傷起点を自覚しているケースが少ないのは意外ですよね。

よせやん

スポーツ復帰時期に関してもこれが大きく関わってきているのではないかと個人的には思います。

受傷起点がはっきりしないため痛いながらもプレーを続けて損傷が大きくなったり、慢性的な腱炎になってからの病院受診となってしまい、そのためにスポーツ復帰が遅くなっている可能性があるのではないでしょうか。

 

ちなみに、今までに腸骨筋損傷と診断されたアスリートの復帰時期を調べてみると、3週間で復帰している選手もいました。

もちろん、すぐに診断がつき治療を開始した、損傷自体が軽度であったというのはあると思いますが。

 

おわりに

以上、今回はgroin painの原因の1つである腸骨筋損傷についてお話ししました。

 

そろそろ整形外科専門医試験のための勉強を始めなくてはいけないのですが、どう考えてもこういう勉強の方が楽しいですね。

明日は自分の怪我はどちらの腸骨筋損傷だったのか、どうやって受傷したのか、身体所見、治療などについてcase report的に紹介しようかと思います。

 

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