骨折手術後に抜釘(インプラント抜去)をしない場合とは?
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日もまだ疝痛発作の恐怖と戦いながら生活をしてます。
今日は朝7時頃と先ほどの夜7時頃に発作が起こってしまいました。
早く結石さんには体外に出て行ってもらいたいものです。
とりあえず元気な間にガブガブ水を飲んで、ジャンプしたりしておきます!
さて、今日は昨日に引き続き抜釘(インプラント抜去)の手術に関する内容です。
前回は抜釘術の適応に関してお話ししました。
では逆に、骨接合術をした後に抜釘術をしない場合や躊躇する場合とはどんな場合があるのでしょうか。
患者さんに抜釘してほしいと頼まれたときに何も考えずにOKして、後で泣きを見ないように判断する根拠をしっかりと知っておきましょう。
この記事では、抜釘術を躊躇する or しない場合についてお話しします。
Contents
抜釘しない or 躊躇する場合
では、さっそく紹介していきましょう。
- 手術によって合併症が懸念される
- 骨接合術に比較して侵襲が大きい
- 高齢者
- 患者の愁訴が取れない
- 外科医のフラストレーション
- 新たなリハビリテーション
- 費用
抜釘しない or 躊躇する場合については、これだけ把握しておけば十分でしょう。
よせやん
では、今回も順に見ていきます。
手術によって合併症が懸念される
まず、手術によって合併症が懸念される場合です。
代表的な合併症は、神経損傷と再骨折です。
例えば、上腕骨近位部骨折の腋窩神経麻痺、上腕骨骨幹部骨折や上腕骨遠位端骨折などの橈骨神経麻痺、前腕骨骨折の再骨折などがよく知られたところでしょう。
また、骨欠損が大きかったり、骨癒合に不安が残る症例も再骨折が危惧されるため、抜釘しない方がよいでしょう。
もし、抜釘術を行うとしても、術前にこれらの合併症についてしっかりとインフォームドコンセントを行う必要があるでしょうし、骨接合の手術をした際にどこに神経が出現したかなどを詳細に手術記録に残しておくべきでしょう。
よせやん
骨接合術に比較して侵襲が大きくなる
骨接合術に比較して侵襲が大きくなる場合にも抜釘術を躊躇します。
特に、若年のときに骨接合術を施行されており、ずっと放置していたものを、抜釘してほしいと依頼された場合などが当てはまるでしょうか。
このような場合には、抜釘困難となることが予想され、骨を削ったり穴を開けたりして抜釘することになります。
当然、手術の侵襲はかなり大きなものとなりますし、術後に再骨折するリスクも高くなります。
高齢者
高齢者の場合にも抜釘術は躊躇われます。
まず高齢者の場合には、若年者と違い手術そのものが身体にとって大きな侵襲となります。
また、若年者と比較して将来、合併症が起こる可能性も低くなりますので、患者さんの希望が強い場合やインプラントによる疼痛などの症状がある場合以外は積極的に抜釘する必要はないと考えてよいかもしれません。
患者の愁訴が取れない
抜釘によって患者の愁訴が取れない場合にも抜釘をしない方がよいでしょう。
インプラントによる疼痛などで、抜釘によって患者の愁訴が取れると予想される場合は、むしろ抜釘手術の適応となります。
しかし、患者の愁訴がインプラントを抜去することで取れないと思われる症状の場合には、抜釘は躊躇すべきです。
抜釘をしても愁訴が取れないばかりか、手術で新たな侵襲を加えたことにより疼痛、痺れ、腫脹など新たな愁訴が出現する可能性があるのです。
よせやん
外科医のフラストレーション
抜釘手術が外科医のフラストレーションになり得る場合にも抜釘はためらわれるべきです。
例えば、手術時間が長時間かかるような症例、強力な抗凝固薬などを飲んでいてすごい出血傾向の症例、患者さんがすごい細かいことを気にしてグチグチ文句を言ってくるような症例などが挙げられるでしょう。
また、smallサイズのロッキングプレートを使用している症例はしばしば抜釘困難となることがあり、smallサイズのロッキングプレートを使用している症例も外科医のフラストレーションになるかもしれませんね。
新たなリハビリテーション
抜釘術後に新たなリハビリテーションが必要になる場合も抜釘を躊躇します。
例えば、上腕骨骨幹部骨折に対する髄内釘を行った症例を抜釘する場合には、再度腱板を切るため術後にリハビリテーションを要する場合があるし、アプローチに骨切りや靭帯の切離などを用いる場合にも術後に外固定やリハビリテーションが必要になってしまいます。
何らかの事情で術後に患者さんがリハビリテーションを出来ない場合には躊躇うことになります。
ただし、絶対に抜釘をしないわけではなく、患者さんにとって抜釘のメリットがデメリットを上回るのであれば、抜釘を考慮していいと思います。
よせやん
費用
最後に手術に伴う費用です。
これは手術そのものに対する経済的な費用はもちろんのこと、手術のために休業することによる時間的・経済的損失も合わせて考えなければなりません。
これに関しては、患者さんの背景および気持ちが重視されるところです。
おわりに
以上、今回は骨折手術後の抜釘(インプラントの抜去)をしない or 躊躇する場合について紹介しました。
医療者は、患者さんにとっての抜釘術のメリットとデメリットを説明し、メリットがデメリットを上回り、なおかつ患者さんが抜釘による合併症の可能性などをしっかりと理解して頂いたうえで手術を考慮することが大切です。
よせやん
患者さん自身も、前回の抜釘の適応や今回の内容を考慮して、抜釘術をやってもらうかどうか考えることができるようになるといいのではないかなと思います。
また、抜釘を行う時期などに関しても、そのうちまとめようと思います。
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Comment
16歳で橈骨尺骨骨折でプレートを入れました。
ただいま2年がたち18歳です。もう2年もたってしまったのでプレート除去はドクターの立場から敬遠される感じでしょうか?
本人は何の違和感もなく痛みもひきつれもないそうです。
可動範囲はやはり制限されているのでしょうか?何も訴えないうえ除去しないでこのままでいこうかな、、というので骨折経験のない親としてどうしたものかと悩んでおります。手術していただいた先生もこのままでもいいよ、とおっしゃっています。
ウエニシヨウコ様
コメントありがとうございます。
橈尺骨のプレートということはおそらく骨幹部の骨折ですよね。
2年ならば抜釘は可能かと思います。
しかし、橈尺骨骨幹部骨折は骨折の中でも抜釘後の再骨折のリスクが高い部位と言われています。
ですので、この部位の抜釘を行う場合は再骨折のリスクについては十分に理解しておく必要があります。
特に、上肢に荷重がかかるような体操などの競技をされている場合には特に注意が必要でしょう。以前、体操をやっている10代の選手で抜釘後に再骨折をしてしまった症例を知っています。
ということもあり、この部位の抜釘を行う場合は確実に骨癒合が得られてから行うべきなので1年半〜2年でも全然遅すぎることはないと思います。
息子様はお若いですので、されているスポーツなどのことも考慮して、再骨折のリスクなども踏まえた上でどうするのがベターか主治医の先生と相談されるのがよいかと思います。