半月板に関わる各成長因子とその効果|基礎実験から得られている知見を紹介!
どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日は田舎病院の寝当直で久しぶりにゆっくりとした時を過ごしています。
忙しく働いているのは好きですが、たまにはこういう時間を過ごすのも大切ですね。
心身ともにリフレッシュして明日からまた頑張れそうです。
さて、今回は半月板に関わるシグナル伝達として成長因子を紹介しようと思います。
物理学的および生理学的なシグナル伝達は、足場材に動員された宿主の細胞や、移植された外因性の細胞を半月板細胞に分化させ、適切な細胞外器質の産生を誘導し、組織再生を促すことになります。
例えば、生化学的なシグナルを再生医療に応用するやり方として、成長因子やホルモン、小分子などが挙げられます。
これらを深く知ることで半月板に対する知見が深まりますし、基礎研究の側面を知っておくことも悪くないと思います。
というわけで、この記事では半月板に関わる成長因子について基礎実験から得られている知見を紹介します。
よせやん
Contents
線維芽細胞増殖因子(FGF)
塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factors:bFGF)は、生体に広く分布するペプチドタンパク質です。
一般的には、血管動脈の形成に加えて、神経や骨組織の形成に関与することが知られています。
半月板への関与では、in vitroで半月板細胞のⅡ型コラーゲンおよびアグリカンのmRNA産生を上昇させたことが報告されています。
また、ヒツジの実験モデルでは、bFGFの投与で半月板線維軟骨細胞は増殖し細胞外器質の産生が増加したことが報告されています。(Tumia NS, et al. Am J Sports Med. 2004)
トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)
トランスフォーミング増殖因子β(transforming growth factor-β:TGF-β)は、多くの面で半月板細胞に影響を及ぼします。
コラーゲン、プロテオグリカンなどの細胞外マトリクスの産生、損傷部への細胞の遊走、細胞死、分化、組織の収縮などがあります。
しかし、半月板細胞の増殖への影響はないと報告されています。(Pangborn CA, et al. Tissue Eng. 2005)
上皮成長因子(EGF)
上皮成長因子(epidermal growth factor:EGF)は、生体に広く分布するペプチドタンパク質です。
細胞表面のEGF受容体に結合し、細胞増殖と成長をコントロールする役割をしていると言われています。
骨形成タンパク質(BMP)
骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein:BMP)は、TGF-βスーパーファミリーに属します。
BMPは、胚発生と組織修復において、その強力な骨誘導の機能により重要な役割を果たしています。(Wozney JM, et al. Clin Orthop Relat Res.1998)
特に、BMP-7は、MSCsの軟骨分化を促して半月板再生を促進すると考えられます。
インスリン様成長因子1(IGF-1)
インスリン様成長因子1(insulin-like growth factor-1:IGF-1)は、インスリンと配列が高度に似たポリペプチドです。
細胞増殖および無血行野への細胞遊走の促進効果があると報告されています。(Fox DB, et al. Res Vet Sci. 2010)
つまり、無血行野の半月板損傷の治癒促進に有用であると考えられています。
血小板由来増殖因子AB(PDGF-AB)
血小板由来増殖因子AB(platelet-derived growth factor:PDGF)は、血管新生および細胞発生において重要な役割を果たします。
細胞増殖と細胞外器質形成を促進します。
特にその効果は、半月板の血行野において無血行野に比べ良好とされています。(Spindler KP, et al. J Orthop Res. 1995)また、半月板細胞の遊走を促進することが知られています。
結合組織成長因子(CTGF)
結合組織成長因子(connective tissue growth factor:CTGF)は、細胞接着、遊走、増殖、血管新生、骨格形成など多くの生物学的な組織修復過程に関わっています。
半月板においては、特にⅠ型コラーゲン合成に関わります。(Furumatsu T, et al. J Orthop Res. 2012)
CTGFとTGF-β3の投与により、MSCsの線維軟骨細胞への分化を促進したことを報告されています。(Lee CH, et al. Sci Transl Med. 2014)
半月板に関わる成長因子のまとめ
以上、今回は半月板に関わる長因子について基礎実験から得られている知見を紹介しました。
これらの成長因子は、細胞遊走、増殖、および細胞外器質産生の改善、ならびに細胞分化の改善をもたらすことになります。
今回、紹介した成長因子が半月板に与える影響をまとめると以下の表のようになります。
成長因子 | 細胞増殖 | コラーゲン合成 | プロテオグリカン合成 | その他の効果 |
FGF-2 | ↑↑↑ | ↑ | ↑ | ー |
TGF-β1、β3 | → | ↑↑ | ↑↑ | 組織収縮 |
EGF | ↑↑ | → | → | |
BMP-2、7 | → | ↑ | ↑↑ | ー |
IGF-1 | → | ↑ | ↑ | 遊走 |
PDGF-AB | ↑↑ | ↑ | ↑ | 遊走、組織収縮 |
CTGF | ↑ | ↑↑↑ | ↑ | 遊走 |
現在、半月板縫合の際に臨床で広く使われているフィブリンクロットもこれらのシグナルに影響する成長因子が多く含まれているわけです。
今度、フィブリンクロットを含め、現在、基礎研究や治験で用いられているものを紹介しようと思います。
よせやん
本気でスポーツ医学と運動器診療を学びたい人のために!
- どこにいても(都会でも地方でも)
- 誰でも(医師・理学療法士・鍼灸師・柔道整復師・トレーナー・学生などスポーツに関わる全ての人)
- いつでも(24時間)
利用可能なスポーツセミナー動画配信サービス!!
1週間1円トライアル実施中!!