運動に伴う筋痙攣(足がつる、こむら返り等)は中枢神経が原因?科学的に考察してみよう!
どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
普通の仕事をしていると、週末はいいものですね。
週末は平日にやり残したデスクワークをこなしつつ、ゆっくりとする時間にもさせてもらっています。
と、言いながらTOEICの受験日が近づいていて全然ゆっくりする余裕がなく、実際のところは相変わらず寝不足です。笑
TOEICは受験勉強に近いので少し大変ですが、数週間だけでもしっかりと勉強して準備しようと思います。
さて、今日は運動に伴う筋痙攣についてお話ししようと思います。
運動に伴う筋痙攣とは、いわゆる”足がつる”とか”こむら返り”と言われるものですね。
昔から、脱水や電解質不足が原因で運動時に筋痙攣が起こると言われていますが、実は近年では中枢神経系に起因して運動ニューロンの興奮性増大が原因であるという科学的証拠が増えてきています。
この記事では、運動に伴う筋痙攣の原因は中枢神経系に起因して引き起こされるのか?科学的に考察していきます。
よせやん
Contents
筋痙攣とは
運動に伴う筋痙攣すなわち運動誘発性筋痙攣は、長時間の高強度運動時に起こることが多く、運動をしてきた方は経験したことがあるでしょう。
運動誘発性筋痙攣の原因を説明するために、2つの主要な説が提唱されています。
1つ目のよく知られている説は、筋痙攣は脱水や電解質の不均衡によって引き起こされているというものです。
2つ目は筋痙攣は中枢神経系に起因するもので、運動ニューロンの興奮性増大によって生じるという説です。
脱水や電解質の不均衡が筋痙攣の一般的な原因であるという考えを支持する科学的根拠は限られているというのは前回お話ししました。
この記事では、運動に伴う筋痙攣の原因は中枢神経系の変化により引き起こされるのか?科学的に考えてみようと思います。
よせやん
中枢神経系が原因?
運動に伴う筋痙攣が運動ニューロンの興奮性増大をもたらす中枢神経系の変化に由来していることを示す科学的証拠はいくつかあります。
骨格筋を神経支配している運動ニューロンが過剰発火して脱分極を繰り返すと、制御されていない不随意的な筋収縮(すなわち筋痙攣)が生じます。
運動ニューロンの興奮性増大の潜在的な原因には、運動ニューロンへの興奮性入力の増大、もしくは抑制性入力の減少があります。
ということは、長時間の激しい運動によってどのように脊髄運動ニューロンの興奮性増大が促進されるのでしょうか?
これは、長時間の激しい運動は筋疲労や筋損傷を引き起こし、それが筋紡錘やゴルジ腱器官の機能不全を促進する可能性があることから説明できます。
具体的には、激しい運動の結果、筋紡錘からの求心性信号が増加し、ゴルジ腱器官から信号は低下します。
生理学を勉強していない方には、ゴルジ腱器官と筋紡錘という言葉は聞きなれないでしょうから簡単に説明しておきます。
- 腱にかかる張力を検出する
- 感覚ニューロンが脊髄に活動電位を送る
- 感覚ニューロンは抑制性介在ニューロンとシナプスを形成しており、後者はα運動ニューロンとシナプスを形成
- α運動ニューロンが抑制されると筋は弛緩し、腱にかかる張力が軽減される
- 筋紡錘は筋の伸張を検出する
- 感覚ニューロンは脊髄に活動電位を送る
- 感覚ニューロンはα運動ニューロンとシナプスを形成
- α運動ニューロンの刺激が筋を収縮させる
ゴルジ腱器官は発揮張力についての情報を中枢神経系にフィードバックするのに対して、筋紡錘は筋の長さ検出器として働きます。
また、ゴルジ腱器官への刺激によって運動ニューロンの脱分極が起こらないようにする抑制性信号が脊髄に送られます。
したがって、理論的には激しい運動はゴルジ腱器官の発火減少(すなわち運動ニューロンの興奮抑制を減少させる作用)および筋紡錘の発火増加(すなわち運動ニューロンの活動を増加させる作用)によって筋痙攣を促進することになるわけです。
よせやん
科学的に考察してみると
では、今回もこの考えが科学的に正しいのか考察してみようと思います。
実は、運動によって筋感覚器官の機能不全が促進され、筋痙攣が生じる可能性を示唆する科学的根拠はいくつかあります。
まず、激しい運動によってゴルジ腱器官の機能は損なわれ、ゴルジ腱器官から運動ニューロンに送られる求心性信号の数は減少することは科学的に立証されています。
さらに、求心性信号の増加をもたらすゴルジ腱器官の電気刺激によって筋痙攣は緩和されることもわかっています。
筋痙攣を起こしている筋を受動的にストレッチすることにより、筋痙攣はしばしば緩和されるのはよく知られていることでしょう。
このストレッチによる反応のメカニズムは、受動的ストレッチが伸張反射とは逆の作用を引き起こすことで説明できるのです。ゴルジ腱器官を伸張させることによって、伸張反射とは逆の作用が生じ、それが脊髄運動ニューロンを抑制し、その結果、筋が弛緩するわけです。
これも、中枢神経系が運動誘発性筋痙攣の原因となっていると考えられる一つの根拠になります。
また、長時間の運動によって筋紡錘の発火が増加し、筋紡錘への刺激によって求心性信号が脊髄に送られ、それにより運動単位が活性化されます。
その結果、筋痙攣が誘発されることを示唆する研究もいくつかあります。
これらの研究は運動誘発性の筋感覚器官の機能不全が中枢神経系のメカニズムを介して筋痙攣を起こしうるという考えを支持することになります。
よせやん
運動に伴う筋痙攣のまとめ
運動に伴う筋痙攣の原因については、まだ1つに特定されているわけではなく、依然として議論の的であるのは事実です。
しかし、近年では運動誘発性筋痙攣は脊髄運動ニューロンの過剰発火の結果であることを示す証拠が増えてきています。
運動に伴う筋痙攣のメカニズムをまとめておきます。
理論的には、
激しい運動が筋紡錘およびゴルジ腱器官の機能を変化させ、その結果、筋紡錘の興奮性活動が高まり、ゴルジ腱器官による抑制効果が低下するために生じる。
これらの作用が同時に起こることによって、運動ニューロンの活動が続き、それによって筋痙攣が促進される。
ただし、経験的に考えられている、
脱水や電解質の不均衡も同時に原因となっている可能性は否定できない。
普段経験している事象について科学的に考えてみるのも非常に面白いですね。
よせやん
参考図書
今回の記事は、パワーズ運動生理学を参考図書としています。
この教科書は、運動生理学の基礎を押さえつつも常に最新の研究成果を反映した進化し続けるテキストブックとして、現在では世界5か国語に翻訳がなされて利用されています。
そして、単に生理学の専門的知識を学べるではなく、なぜ運動生理学を学ぶ必要があるのか、そしてその知識をどのように活かすのか、についてまで実際のスポーツに即して書かれていて非常に面白い内容となっています。
スポーツに関わる方は運動生理学を知っていると、かなり活かすことができるのでよかったら読んでみてくださいね。
このブログでも、実際に活かせそうな運動生理学をこれからも紹介していきます。
よせやん
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