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運動後の筋肉痛は乳酸がたまることが原因で生じるのか?

 
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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること! 仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい! 自分の日々の勉強のため、また同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思い、スポーツ医学、整形外科、資産形成などについてブログを書いています。
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どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。

よせやん

今日は日本整形外科学会学術総会の日でしたが、COVID-19の影響で現地開催は無くなりました。

そのため、今日は予定手術もなく、比較的ゆっくりとした時間が流れていました。

というわけで、今日は今度新しく始める研究の実験計画を詳細に作っていました。

基礎研究で自分でできることも増えてきているし、どういう研究が評価されるのかもわかってきたので、これからの研究が楽しみです。

 

さて、今日は運動に伴う筋肉痛についてお話ししようと思います。

普段から運動する方でもしない方でも、筋肉痛を経験したことがないという方はほとんどいないでしょう。

今まで、運動により乳酸がたまることが筋肉痛の原因だと聞いたことはありませんか?

 

この記事では、筋肉痛の原因が乳酸という説は本当か?どうか科学的に考察していきます。

よせやん

Contents

筋肉痛とは

筋肉痛については、以前まとめたことがあります。

 

激しい運動や不慣れな運動の1〜2日後に現れる筋肉痛は、初心者のアスリートはもちろん、時にはベテランのアスリートでさえも経験するものです。

筋肉痛を経験したことがない方はほとんどいないでしょう。

 

この運動後に生じる筋肉痛は、正式には遅発性筋肉痛(Delayed-onset muscle soreness: DOMS)といいます。

DOMSは運動後数時間から24時間程度経過してから発現し、24〜72時間時間後にピークとなり、1週間程度で消失すると言われています。( Peake J, Nosaka K, Suzuki K. Exerc Immunol Rev 2005)

 

この記事では、筋肉痛が生じる原因について考えていこうと思います。

よせやん

筋肉痛は乳酸がたまることが原因なのか?

運動に伴って乳酸がたまることが筋肉痛の原因であると一部のアスリートやコーチの間ではいまだに信じられています。

しかし、実は生理学的な研究から乳酸は筋肉痛の原因ではないことがわかっています。

 

今回はこの乳酸と筋肉痛の関係について詳しく解説していきましょう。

 

運動後の血中乳酸値

まず、高強度運動中に活動筋内で乳酸が生成されたとしても、運動後は骨格筋や血液から速やかに除去されることがわかっています。

血中乳酸濃度は、運動後60分以内に安静レベルまで回復することがわかっています(下図)。

図:激しい運動後の血中乳酸値の推移(パワーズ運動生理学より引用)

 

この図を見ると、激しい運動後に持続的な軽い運動を行うと、より迅速に血中乳酸値が低下していることがわかります。

これは、軽い運動が活動筋における乳酸の酸化を促進するという事実が関連しています。(Gladden LB. J Applied Physiology. 1991)

 

より詳細に行われた研究では、積極的回復のための運動として、乳酸の蓄積が始まる強度(乳酸閾値)よりわずかに低い強度で運動を行うと、乳酸閾値の40〜60%の運動と比較して、血中乳酸値がさらに迅速に除去されることを明らかになっています。(Menzies P, et al. J Sports Sci. 2010)

 

運動後に乳酸は酸化される

近年の研究では、運動後に乳酸は主に酸化されることが示唆されています。(Brooks GA. Med & Sci in Sports & Exercise. 1986)

すなわち、乳酸はピルビン酸に変換され、心臓や骨格筋のエネルギー基質として利用されるのです。

詳しく言うと、運動中に生成された乳酸の約70%が酸化され、20%がグルコースに、残りの10%がアミノ酸にそれぞれ変換されると推定されています。

 

つまり、1回の運動によって生成された乳酸が、1〜2日後の筋肉痛をもたらす可能性は低いと言えるのです。

よせやん

高強度運動では乳酸が生成される

もう一つ、乳酸が遅発性筋肉痛の原因であるという説に反論する考え方があります。

もしも、乳酸がたまることが筋肉痛を生じさせるのだとしたら、パワーを要する競技の選手は毎回のトレーニング後に筋肉痛を経験することになるはずだということです。

 

しかしながら、これは明らかに事実ではありません

例えば、トップレベルの短距離陸上選手など、よく鍛えられたアスリートは定期的なトレーニングセッション後に筋肉痛を経験することはほとんどないのです。

 

今回のまとめ

今回のまとめ
  • 血中乳酸濃度は、運動後60分以内に安静レベルまで回復する
  • 運動後に乳酸はそのほとんどが酸化される
  • よく鍛えられたアスリートは定期的なトレーニング後に筋肉痛にはほとんどならない

よって、

乳酸は筋肉痛の主な原因ではない

 

という結論になります。

では、筋肉痛は何が原因で生じるのでしょうか。

 

次回は、これについて運動生理学的に解説していこうと思います。

よせやん

参考図書

今回の記事は、パワーズ運動生理学を参考図書としています。

この教科書は、運動生理学の基礎を押さえつつも常に最新の研究成果を反映した進化し続けるテキストブックとして、現在では世界5か国語に翻訳がなされて利用されています。

そして、単に生理学の専門的知識を学べるではなく、なぜ運動生理学を学ぶ必要があるのか、そしてその知識をどのように活かすのか、についてまで実際のスポーツに即して書かれていて非常に面白い内容となっています。

スポーツに関わる方は運動生理学を知っていると、かなり活かすことができるのでよかったら読んでみてくださいね。

 

このブログでも、実際に活かせそうな運動生理学をこれからも紹介していきます。

よせやん

 

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