膝後十字靱帯(PCL)損傷の保存療法:大腿四頭筋訓練編

どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
昨日は田舎病院の当直でした。
田舎病院の当直に行くと、スタッフや患者さんと接しているだけで何故か癒されます・・・。
比較的時間もあったので、科研費の申請書類を完成させました。
大学で働き研究もしている医師にとっては科研費が取れないと詰むので非常に大切な書類になります。
結果が出るのは2月ですが、あとはしっかり獲得できることを祈るのみです。
さて、今まで膝後十字靱帯(PCL)損傷についてはお話ししたことがなかったので、しばらくPCL損傷をテーマにお話ししようと思います。
今回はPCL損傷の保存療法、特に大腿四頭筋訓練についてお話しします。
関節拘縮をきたすと大腿四頭筋の筋効率が低下したり、疼痛の残存したりと、後々に少なくない影響を及ぼしますので、しっかりと健側と同程度の可動域を獲得することが大切です。
この記事では、大腿四頭筋訓練の進め方や注意点についてまとめていきます。
Contents
膝PCL損傷の保存療法
PCL損傷は、新鮮の単独損傷であれば保存療法にて靱帯の修復が期待できることが多いと言われています。
それは、ACLと比較して靭帯への血行が豊富であるためです。
しかし、新鮮損傷時に適切な治療がなされず陳旧性になると、膝関節の不安定性が生じ、半月板や関節軟骨の二次損傷をきたし、変形性膝関節症の原因となります。
そのため、膝関節の不安定性を残さないためにも、新鮮例に対して的確な保存療法を行うことが重要です。
よせやん
受傷後早期は脛骨の後方への落ち込みを防ぎ、正常な肢位を維持するために、装具の装着と屈曲可動域の制限を行なって、PCLに過度なストレスがかからないようにすることが大切です。
また、PCL損傷により構造的に後方不安定性が生じても、日常生活だけでなくスポーツ動作でも不安定性のない症例も多いです。
これは筋力による動的な関節安定性が機能しているためと考えられており、大腿四頭筋を中心とした膝関節周囲筋の筋力訓練も大切です。
前回、可動域訓練についてまとめたので、この記事では大腿四頭筋訓練に焦点を当ててお話ししていきます。
大腿四頭筋訓練
大腿四頭筋訓練は、脛骨の後方落ち込みに拮抗する重要な動的制動要素となることから、炎症症状がおさまり次第、膝伸展位での大腿四頭筋セッティングから開始していきます。大腿四頭筋セッティングのやり方については以下の動画を参照にしてください。
大腿四頭筋セッティング実施時は、脛骨近位後方にタオルや枕を置いて、脛骨の後方落ち込みを制動し、過伸展位まで行わないように注意が必要です。
Open Kinetic Chain(OKC)の大腿四頭筋トレーニングとしては、レッグエクステンションが有効です。
レッグエクステンションのやり方については以下の動画を参考にしてください。
PCL損傷の場合は、膝屈曲60度より深い角度での実施はPCLに張力が加わり、脛骨に後方落ち込みの力が生じることから、60度より浅い角度から開始していきます。
全荷重歩行が可能になったら、Closed Kinetic Chain(CKC)のトレーニングとして、体幹を直立位に保持したウォールスライドスクワットを開始していきます。
後方重心位で行うことで大腿四頭筋の筋活動が優位になり、脛骨への後方剪断力を抑えられるため、安全で効果的なトレーニングといえます。ウォールスライドスクワットのやり方は以下の動画を参考にしてください。
後方重心位でのスクワット動作で疼痛と不安定性が生じなければ、スポーツ動作での機能的肢位である体幹前傾位姿勢のトレーニングを取り入れていきます。
この時、大腿四頭筋に対してハムストリングスの筋活動が優位になっていないかどうかを筋の収縮状態および硬度を評価しながら、段階的に進めていくことが大切です。
膝関節屈曲のレッグカールは、ハムストリグスの単独収縮によって、脛骨の後方落ち込みを増大させる可能性があるため、受傷後8週間は禁止します。
レッグカールのやり方は以下の動画を参考にしてく
ハムストリングスの筋力強化を行う際は、腹臥位での股関節の伸展運動(Reverse-SLR)や脛骨の後方落ち込みを抑える工夫をしたブリッジ動作を行っていきます。
おわりに
以上、今回はPCL損傷の保存療法の大腿四頭筋訓練についてお話ししました。
関節拘縮をきたすと大腿四頭筋の筋効率が低下したり、疼痛の残存したりと、後々に少なくない影響を及ぼしますので、しっかりと健側と同程度の可動域を獲得することが大切です。
この記事では、大腿四頭筋訓練の進め方や注意点についてまとめました。
次回は、PCL損傷後のスポーツ復帰についてお話ししようかと思います。
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