手術前に剃毛・除毛を行うべきか?|現在の医療の常識は?外科系医師なら知っておけ!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日は手術前に剃毛・除毛を行うべきか?についてお話ししようと思います。
最近、自分の中で整形外科医として勉強しておくべきことの1つに創傷治療が加わりました。
整形外科医でなくても外科系の医者である以上は創傷治療についての知識は必ず必要です。
今までもそういった場面には幾度となく出会ってきましたが、今回対応に困って尊敬する先輩医師に相談したのがきっかけで、自分は創傷治療について全然わかっていないことを痛感させられました。
今日はそんな創傷治療に直接関係するテーマではなく、創傷治療について興味を持った一環で勉強した内容ですが、外科系医師なら知っておいた方がいいであろうテーマかと思います。
Contents
手術前の剃毛
外科系医師のあなたは手術で皮膚切開を加える部位に体毛があった場合、どうしていますか?
術前処置における剃毛・除毛は、毛に付着している細菌や分泌物の除去、手術部位の消毒を確実にすること、脱落毛の手術野への混入防止を目的として行われてきました。
また、除毛により覆布固定、手術操作、術後処置を容易となるなどの利点もあります。
よって、以前は手術前にカミソリによる剃毛を行うのが医療の常識でした。
しかし、日々医学は進歩しており、今までの常識であったことが禁忌になっている例も少なくありません。
医療従事者は知識を常にアップデートしていかないと患者さんに不利益を生じさせてしまう可能性があるので注意しましょう。
よせやん
実は以前は常識と考えられていたカミソリによる剃毛は、現在では微細な傷が皮膚に生じ細菌が増殖して術後の感染を増加させることがわかっているため推奨されていません。
Seropianらは、処置なしや脱毛剤使用の場合の創感染発症率が0.6%であるのに対して、剃毛の場合の創感染発症率は5.6%と有位に増加していたこと報告しています。( Seropian R, et al. Am J Surg. 1971 )
その他にも剃毛により創感染が増加したという報告は多く、手術前の剃毛は現在は禁忌と言ってよい状況です。( 工藤友子.EB-nursing. 2010 )( 針原康, 小西敏郎. INFECTION CONTROL. 2011 )
また、Curseらも10年間の62,939例を検討し、剃毛を行う場合では行わない場合と比較して優位に創感染が増加したことを報告していますが、この論文の剃毛を行わない場合の内訳をみると、処置なしでは0.9%、電動クリッパー除毛では1.4%、バリカン除毛では1.7%の創感染となっており、処置なしが最も創感染が少ないという結果でした。( CrusebPJ, et al. Surg Clin North Am. 1980 )
手術前の除毛
では、除毛はどうでしょうか。
Tannerらは、除毛処置を行なった群と処置なし群を比較して、感染率に差がないことを報告しています。( Tanner J, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2006 )
では、除毛を行う場合はどういった方法がよいのでしょうか。
除毛クリームとクリッパー(医療用電動カミソリ)の処置を直接比較する報告はありませんが、水野らは除毛クリームを使用した570例中9例(1.58%)に発赤などの副作用が見られたことを報告しています。( 水野章ら. 感染症. 1990 )
除毛の方法としてクリームがよいのか、クリッパーがよいかはエビデンスはないようですが、除毛クリームは皮膚の過敏反応が懸念されるため除毛を行う場合はクリッパーが望ましいと考えられます。
実際に、1999年に改定された米国疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)のガイドラインでは、
体毛の除毛は切開部あるいは周辺の体毛が手術に支障となる場合は除き行わない
ことを推奨しており、カテゴリーⅠA(実施を強く勧告)に位置付けています。
本日のまとめ
以上、今日は手術前に剃毛・除毛を行うべきか?についてまとめました。
今日の内容をまとめると、以下のようになります。
- 手術前の剃毛は禁忌である。
- 手術に支障となる場合を除き、除毛も行わないことが推奨される。
- もし除毛を行う場合はクリッパーで必要最小限に行う。
我が国では、まだクリッパーで除毛を行なっている施設が多いようですね。
僕が去年いた病院でもクリッパーでの除毛を行うことが多かったですが、特にそれについて何かを考えたことがありませんでした。
今思うとそれが一番怖いですね。
よせやん
創傷治療について興味を持った一環で、手術時に剃毛を行うべきかという内容に触れましたが、今後も創傷治療について自分の備忘録としてまとめていこうと思います。
本気でスポーツ医学と運動器診療を学びたい人のために!
- どこにいても(都会でも地方でも)
- 誰でも(医師・理学療法士・鍼灸師・柔道整復師・トレーナー・学生などスポーツに関わる全ての人)
- いつでも(24時間)
利用可能なスポーツセミナー動画配信サービス!!
1週間1円トライアル実施中!!