SLRテストとラセーグテスト、ラセーグ徴候、Kernig 徴候の違いとは?!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
当直で引く人、引かない人っていますよね。
自分は研修医のときは当直に入ると高確率で重症患者さんを引いていましたが、整形外科医になってからはいわゆる引かない人になってしまいました。
当直や待機に入っている回数は多いはずなのに、手術症例が全然来ません。
自分が当番のときは近隣の皆さんが怪我なく過ごせているということに他ならないのでいいのかもしれませんが、外科医としては経験は積めるだけ積みたいと思うのもまた事実です。
しかし、当直では引けないので、日勤の時間帯の救急を仕事しながらでも可能な限り取るようにしています。
救急車で搬送される方も受け入れ病院が見つからず、たらい回しにされるよりいいでしょう。
さて、今日は意外に疑問に思っている方も多いのではないかと思うので、SLRテストとラセーグテスト、ラセーグ徴候の違いについて記事にしておきます。
おまけに、これらと間違われやすいKernig 徴候についても軽く触れます。
Contents
はじめに
冒頭で述べたSLRテストの知識および方法が曖昧な方は、先に下の記事を確認してください。
同じような身体診察にラセーグテスト、ラセーグ徴候というものがありますが、これらのやり方およびSLRテストとの違いをわかっていますか?
よせやん
実際に僕も最近まできちんと理解していなかったし、きちんと理解できてない人は意外と多いのではないでしょうか。
というわけで、本日はラセーグテスト、ラセーグ徴候とは何なのか?そして、SLRテストとは何が違うのか?について解説していきます。
こんなことで悩むのは僕くらいかと思いましたが、調べてみると意外にもこの話題について論文を書いている方は複数いらっしゃって驚きました。
今回は、その中でも「Straight Leg Raising test(SLRテスト)の定義の文献的検討」という論文を参考にして書いていきます。
また、もう1つの似ている身体診察であるKernig 徴候についても簡単に説明します。
ラセーグテストとは
ラセーグテストとSLRテストの関係をわかっていますか?
つまり、
Lasègueテスト=SLRテスト
というわけですね。
ここはさらっと流してしまいましょう。
よせやん
ラセーグ徴候とは?
では、ラセーグ徴候とSLRテストの関係をわかっていますか?
僕も恥ずかしながら、実はこの関係をわかっていませんでした。
今日の本題はここです。
よせやん
ラセーグ徴候=SLRテストではありません。
ラセーグ徴候は、Lasègueの弟子のForstが1881年に初めて報告し、1969 年にWilkinsが英訳したものが広く引用されています。
では、ラセーグ徴候について詳しく説明していきましょう。
よせやん
ラセーグ徴候第1手技
図1:SLRテスト(ラセーグテスト)
( Wilkins RH, Brody IA. Arch Neurol. 1969より引用 )
ラセーグ徴候第2手技
第2手技では、患肢をベッドの上に戻し、膝関節と股関を屈曲させ臀部筋の圧迫を除いていきます(図2)。このとき、疼痛の軽減が得られればラセーグ徴候陽性と判断します。
図2:ラセーグ徴候
( Wilkins RH, Brody IA. Arch Neurol. 1969より引用 )
つまり、
SLRテスト=ラセーグテスト
ですが、
ラセーグ徴候とは、第2手技を施行した後に得られる疼痛軽減の徴候のことを意味する
というわけです。
何と呼ぶべきなのか?
Forstの報告の前年に、Lazarevicは坐骨神経痛の誘発テストとして SLR テストを報告し、機序は坐骨神経の伸展と推察しています。
そのため、priorityおよび機序の観点からも、ラセーグテストではなくSLRテストと名づけるべきだと主張している報告もあります。( Wertenberg R. Neurology. 1956 )
また、Forstはラセーグ徴候の機序は第1手技で臀部の筋の収縮により坐骨神経が圧迫されると推察しており、第2手技で膝関節と股関節を屈曲させ臀部筋の圧迫を除くことで疼痛の軽減されると述べています。
しかし、SLR テストの疼痛発現機序は、臀部筋の圧迫ではなく、坐骨神経の伸展であることが解剖遺体で証明されています。( Wertenberg R. Neurology. 1956 )( Wilkins RH, Brody IA. Arch Neurol. 1969 )
したがって、僕の意見としては、第1手技のことはSLRテスト、股関節・膝関節屈曲にて疼痛が軽減するものをLasègue徴候と呼んだらいいのではないかと思います。
よせやん
Kernig 徴候とは
ちなみに、同じように似ていて混乱を招く検査にKernig 徴候があります。
せっかくですから、Kernig 徴候についても勉強しておきましょう。
これは、髄膜刺激徴候の一つであり、主にクモ膜下出血や髄膜炎などが原因で髄膜が刺激されている時に出る症状です。
手技としては確かに似ていますが、意味合いは全然違いますのでしっかりと理解しておきましょう。
よせやん
おわりに
以上、今回はラセーグテスト、ラセーグ徴候、Kernig 徴候とは何なのか?
そして、SLRテストとは何が違うのか?について解説しました。
身体診察の重要性を再確認するとともに、きちんと勉強しておかないと全くちゃんとした評価ができていない可能性があるなと感じました。
みなさんの中にもきちんと理解していなかった方がいるかと思います。
今日の記事で理解して頂けたら幸いです。
本気でスポーツ医学と運動器診療を学びたい人のために!
- どこにいても(都会でも地方でも)
- 誰でも(医師・理学療法士・鍼灸師・柔道整復師・トレーナー・学生などスポーツに関わる全ての人)
- いつでも(24時間)
利用可能なスポーツセミナー動画配信サービス!!
1週間1円トライアル実施中!!
Comment
初めまして。
ラセーグテスト、ラセーグ徴候で調べていたらたどり着きました。
記事を拝見しました所、両者の違いがよく分かりました。
そこで、ラセーグテストなのですが、手技自体はケルニッヒ徴候と同様のものをラセーグテストを称しているのものがあります。
原典の手技ではラセーグテスト=SLRであるとの認識ですが、上記のラセーグテストはどこからの出典なのでしょうか?
もしお分かりでしたらお答えいただけると幸いです。