手術にエピネフリン入り局所麻酔薬を用いるのは有用か?作用・副作用・禁忌から考えてみよう!

 

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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること!仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい!日々の勉強のため、また、同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思いブログを書いています。➡︎詳しいプロフィールはこちら

よせやん

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スポーツドクターを目指す若手整形外科医です。

どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

昨日・今日は日本足の外科学会に参加するため愛知県の名古屋まで来ています。興味のある分野の学会はやはり楽しいですね。自分の発表は興でしたが、まあとりあえずは無難に終了しました。また、学会で勉強したことや学会の書籍コーナーで見つけたおすすめの新書なんかに関しては後日記事にしようと思います。

さて、今日は手術の際に用いるエピネフリン入り局所麻酔薬は有効か?ということについてお話しします。

エピネフリン入り局所麻酔薬は局所麻酔の手術や救急外来での縫合の際に使用している先生は多いかと思いますが、伝達麻酔や腰椎麻酔などで駆血しないで手術する場合にも非常に有用です。

しかしながら、有用なものにも当然禁忌はあるわけで、普段エピネフリン入り局所麻酔薬を使用している先生は必ず禁忌について知っておくべきだと思います。

というわけで、エピネフリン入り局所麻酔薬の作用や禁忌についてもお話ししていきます。

局所麻酔

局所麻酔とは、意識消失を伴わずに部分的に除痛を行うために用いる麻酔のことをいいます。

広義には全身麻酔の対義語として全身麻酔以外の麻酔(脊椎麻酔、硬膜外麻酔、伝達麻酔、局所浸潤麻酔、表面麻酔)のことも意味するようですが、実臨床においては狭義の局所浸潤麻酔のことですね。

局所浸潤麻酔は、皮内または皮下に麻酔薬を注射して、麻酔薬が浸潤する範囲の神経を遮断して、痛みを感じないようにする麻酔方法です。

主に小切開の場合に用いる麻酔であり、意識下に太めの末梢ラインや中心静脈ラインを確保するとき、硬膜外麻酔や脊椎麻酔で硬膜外針や脊椎針の刺入前に細めの注射針で痛覚を取るとき、小さな部位の切開・縫合手術などに用います。

この記事では局所麻酔=局所浸潤麻酔として記載していきます。

麻酔薬としてはリドカイン、メピバカイン、プロカインを用いますが、一般に広く使われているのはリドカイン(製品名:キシロカイン)でしょう。医療現場では略して「キシロ」と呼びますね。

エピネフリン入り局所麻酔薬の効果

この局所麻酔薬にはアドレナリン(エピネフリン)が配合されたエピネフリン入り局所麻酔薬とエピネフリンが配合されていないエピネフリン無し局所麻酔薬があります。

実臨床で用いている呼び方を用いると、

  • エピネフリン無しキシロカイン(E無しキシロ)
  • エピネフリン入りキシロカイン(E入りキシロ)

の2種類になります。

では、このE入りキシロにはどのような効果があるのでしょうか?

エピネフリン入り局所麻酔薬の効果

血管収縮作用を有することにより

  • 局所麻酔薬の吸収が緩徐になる

そのため

  1. 作用時間が長くなる
  2. 局所麻酔薬中毒になりにくくなる
  • 出血が少なくなり手術が容易になる

ということが挙げられます。

エピネフリン入り局所麻酔薬の有用性

では、エピネフリン入り局所麻酔薬の有用性について考えてみましょう。

Aysanらは、毛巣洞手術の無作為化二重盲試験で、エピネフリン入り局所麻酔薬は術中の出血量減少手術時間の短縮に極めて有効であったと報告しています。(Aysan E, et al. J Am Podiatry Assoc. 1971)

ちなみに、術後出血や血腫形成には差がなかったことも報告しています。

一方でエピネフリン入り局所麻酔薬に否定的な意見もあります。

Jonesらは、頬部除皺術の後ろ向き試験を行ったところ、エピネフリン入り局所麻酔薬を使ったグループで有意に術後血腫が多かったことを報告しています。(Jones BM, et al. Plast Reconstr Surg. 2003)

これは、エピネフリンの血管収縮作用のため術野では出血点を認識できず、それが術後に再出血をきたしたものと考えられています。

以上より、局所麻酔下小手術に用いる麻酔薬にはエピネフリンが入っていた方が術後血腫が減少するという意見に対しては全面的に肯定することはできませんが、一方でエピネフリン入り麻酔薬による弊害は少ないと思われます。

また、局所麻酔下小手術だけでなく、全身麻酔や腰椎麻酔、伝達麻酔の手術であっても駆血帯を用いない手術ではエピネフリン入り局所麻酔薬を用いることで格段に手術がやり易くなります

僕は特に下肢の手術の際にはDVT予防という観点からも駆血は基本使わないので、エピネフリン入り局所麻酔薬を使用しています。エピネフリン入り局所麻酔薬を使用して、きちんと止血しながら手術をすれば特に出血で困ることもありませんので、非常に有用だと思います。

エピネフリン入り局所麻酔薬の禁忌

というわけで、非常に有用なエピネフリン入り局所麻酔薬ですが、使ってはいけない禁忌の患者さんがいますので必ず知っておきましょう。

エピネフリン入り局所麻酔薬の禁忌
  • アドレナリン又はアミド型局所麻酔薬に対し過敏症の既往歴のある患者
  • 耳・指・趾・陰茎に対する麻酔
  • 動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、糖尿病のある患者及び血管攣縮の既往患者
  • 狭隅角や前房が浅いなど眼圧上昇の素因のある患者

アドレナリンやアミド型局所麻酔薬に対して過敏症の既往歴がある方は、アナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるため使用禁忌であるのは当然ですね。

また、耳・指・趾・陰茎に対してエピネフリン入り局所麻酔薬を用いると、これらの栄養血管は非常に細いため血管が収縮しすぎて壊死してしまう恐れがあります。

それ以外にも、動脈硬化、心不全、甲状腺機能亢進、糖尿病のある患者及び血管攣縮の既往患者についも、血管収縮作用がこれらの疾患の病状を悪化させる可能性があるので注意が必要です。

さらに、狭隅角や前房が浅いなど眼圧上昇の素因のある患者については、アドレナリンにより閉塞隅角緑内障の発作を誘発することがあるため注意が必要です。

エピネフリン入り局所麻酔薬を用いることがある方は最低限、これらのことは知っておくべきでしょう。

おわりに

以上、今回は手術の際に用いるエピネフリン入り局所麻酔薬の有用性と作用・禁忌についてお話ししました。

今回の内容をまとめると、

特に禁忌症例でなければ、手術にエピネフリン入り局所麻酔薬を使うのは有用であるが、入念な止血操作や血腫予防のためのドレーン留置などは考慮に入れるべき

ということになるでしょう。

外科医や研修医の方の参考になれば幸いです。

 

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