【必見】サッカー・フットサルにおける熱中症対策|死亡者を出さないために!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
12月に入って仕事のペースがかなりペースダウンしました。
年末年始も外来や手術はあまり入れないようにしているので12月は比較的時間が作れそうです。
この年末年始で論文やブログ記事の更新などの作業を完遂させたいと思います。
さて、今日はサッカーにおける熱中対策を紹介します。
2016年3月からサッカー界における熱中症対策が大きく変化していますがご存知でしょうか?
WBGTに基づいた大会や練習の運営方法、Cooling Breakなどの熱中症対策は、サッカー関係者には必ず知っておいて欲しい知識です。
特に2018年の暑さは異常で、熱中症で倒れて救急外来を受診する患者さん、入院患者さん、死亡された方ともに例年より多くなっていますので、十分に注意して下さい。
よせやん
この記事でサッカーにおける現在の熱中症対策を紹介しますので、サッカー関係者の方は今後このような熱中症対策を実践して頂けたら幸いです。
Contents
サッカーと熱中症
今までのサッカーにおける熱中症対策は十分なものとは言い難いものでした。
そのため、2016年3月に日本サッカー協会(Japan Soccer Association:JFA)が熱中症対策ガイドラインを策定しました。
これは国内のサッカー・フットサル・ビーチサッカーを対象にしたものです。
この熱中症対策ガイドラインが策定された目的は、以下の通りです。
- 選手が安心して安全にプレーできる環境の整備および選手のパフォーマンスの向上
- 不十分な対策の競技会運営の是正
- 熱中症が選手の生命に関わることの再認識
この記事では、このJFAにおけるガイドラインをもとにサッカーにおける熱中症対策について紹介していきます。
大会・試合スケジュールの規制(事前準備)
大会・試合を開催する場合は、必ず事前準備を行います。
まず、大会・試合を開催しようとする期間の各会場(都市)における、過去5年間の時間毎のWBGTの平均値を算出し、 その数値によって大会/試合スケジュールを設定します。
必要に応じて、試合時間を調整して早朝や夜間に試 合を行う、ピッチ数を増やす、大会期間を長くするなどの対策を講じます。
WBGTとは
WBGTと言われても何かわかりませんよね。
実はこれ、熱中症対策において非常に大切なものです。
その測定方法などに関しては下の記事で詳しくまとめていますので確認してみて下さい。
下のようなWBGT を簡便に測定できる指標計がありますので、活用しましょう。
大会を運営するスポーツ関係者、練習の有無を決定するスポーツチームの監督などは必ずWBGTを測定する必要がありますし、スポーツドクターなどスポーツの医事に関わる人もこの指数計を持っておくとよいかもしれませんね。
熱中症による事故が起こってから、WBGTなんて知りません、測定していませんという言い訳は通用しません。
また、WBGTと普段測っている乾球温度(気温)の関係がわかる表を載せておきます。
図1:日本体育協会 熱中症予防運動指針より引用
スポーツにおける一般的な熱中症予防の指針は上記のように規定されています。
サッカーにおけるWBGTに基づいた熱中症対策
では、サッカーにおけるWBGTに基づいた具体的な熱中症対策を確認しましょう。
熱中症対策ガイドライン
日本サッカー協会が発表した熱中症対策ガイドラインを元に、天然芝・クレー・人工芝(屋根あり)の場合と屋根のない人工芝ピッチの場合に分けて紹介していきます。
天然芝・クレー・人工芝(屋根あり)の場合
- WBGT=31°C以上となる時刻に、試合を始めない。(キックオフ時刻を設定しない。)
- WBGT=31°C以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、事前に『JFA 熱中症対策<A>+<B>』を講じた 上で、試合日の前日と翌日に試合を行わないスケジュールを組む。
- WBGT=28°C以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は、事前に『JFA 熱中症対策<A>』を講じる。
※クーラーが無い体育館等の屋内で試合を行う場合も、上記と同じ基準で対策を講じる。
天然芝・クレー・人工芝(屋根あり)で試合を行う場合はこのように熱中症対策を講じます。
また、注意事項に記載されているように、クーラーのない体育館などの屋内で試合を行う場合もこれに準じます。
よって、フットサルの場合もこれに準じて熱中症対策を行う必要があります。
スポーツ活動においては、冬季でも室内での熱中症死亡例があることに留意する必要があるのでしたね。
屋根のない人工芝ピッチの場合
- WBGT=28°C以上となる時刻は、屋根の無い人工芝ピッチは原則として使用しないとする『JFA 熱中症対策<A>+<B>』を講じなければならないため、使用不可とする。
- WBGT=25°C以上となる時刻が試合時間に含まれる場合は事前に『JFA 熱中症対策<A>』を講じる。
※屋根のない人工芝ピッチで試合を行う場合は、天然芝等に比べて WBGT 値の上昇が見込まれるため、上記の値から-3°Cした値を基準としています。
※これらの規制・対策以外にも表面温度の上昇による足底部の低温やけどや擦過傷の危険性を考慮すること。
屋根のない人工芝ピッチの場合は、このように熱中症対策を行います。
JFA熱中症対策
では、ここに出てくるJFA熱中症対策について紹介します。
JFA熱中症対策<A>
- ベンチを含む十分なスペースにテント等を設置し、日射を遮る。
※全選手/スタッフが同時に入り、かつ氷や飲料等を置けるスペース。
※スタジアム等に備え付けの屋根が透明のベンチは、日射を遮れず風通しも悪いため使用不可。
- ベンチ内でスポーツドリンクが飲める環境を整える。
※天然芝等の上でも、養生やバケツの設置等の対策を講じてスタジアム管理者の了解を得る。
- 各会場にWBGT計を備える。
- 審判員や運営スタッフ用、緊急対応用に、氷・スポーツドリンク・経口補水液を十分に準備する。
- 観戦者のために、飲料を購入できる環境(売店や自販機)を整える。
- 熱中症対応が可能な救急病院を準備する。特に夜間は宿直医による対応の可否を確認する。
- Cooling Breakまたは飲水タイムの準備をする。
JFA熱中症対策<B>
- 屋根の無い人工芝ピッチは原則として使用しない。
- 会場に医師、看護師、BLS(一次救命処置)資格保持者のいずれかを常駐させる。
- クーラーがあるロッカールーム、医務室が設備された施設で試合を行う。
Cooling Breakと飲水タイム
今までは熱中症対策として給水タイムが取られていましたが、これだけでは熱中症予防として十分ではないということで、2016年よりCooling Breakが導入されました。
Cooling Breakと給水タイムは何が違うのかなどについてここで解説します。
飲水タイム
飲水タイムは従来、熱中症対策として設定されてきたものです。
これは、気温と湿度が一定の基準を上回った試合において、前後半それぞれの半分の時間を経過した頃に試合を1回切って、タッチライン上での給水を促す仕組みです。
時間は1分と短く、戦術的指示は禁止です。
また、スポンジやタオルを使って体を冷やすことも禁止されるなど、十分な熱中症対策とは言い難いものでした。
よせやん
具体的に飲水タイムについて紹介します。
- 前後半それぞれの半分の時間を経過した頃、試合の流れの中で両チームに有利、不利が生じないようなボー ルがアウトオブプレーの時に、主審が選手に指示を出して全員に飲水をさせる。もっとも良いのは中盤でのスロ ーインの時であるが、負傷者のための担架を入れた時や、ゴールキックの時も可能である。
- 選手はあらかじめラインの外に置かれているボトルをとるか、それぞれのチームベンチの前でベンチのチーム関 係者から容器を受け取って、ライン上で飲水する。
- 主審、副審もこの時に飲水して良い。そのために第4の審判員席と、第2副審用として反対側のタッチライン沿 いにボトルを用意する必要がある。
- スポーツドリンク等、水以外の飲料の補給については、飲料がこぼれて、その含有物によっては競技場の施設 を汚したり、芝生を傷めたりする恐れもある。大会主催者が水以外の持ち込み可否及び摂取可能エリアについ て、使用会場に確認をとって運用を決定するので、その指示に従って飲水する。
- 飲水タイムは30秒から1分間程度とし、主審は選手にポジションにつくよう指示してなるべく早く試合を再開する。 飲水に要した時間は、「その他の理由」により空費された時間として、前、後半それぞれに時間を追加する。
- 時間の経過にともなって環境条件がかなり変わった場合は、飲水を実施するかしないかの判断をハーフタイム に変更してよい。
- 飲水を行う場合は、試合前(あるいはハーフタイム時)に両チームにその旨を知らせる。
- 飲水タイムは、あくまでも飲水のためである。
- 飲水タイムとは別に、従来どおり、ボールがアウトオブプレーのときにライン上で飲水できる。
Cooling Break
2016年3月にJFAにより熱中症対策ガイドラインが策定され、2016年の夏からはCooling Breakと言われる3分のブレイクタイムが、一定の気温などの基準を超えた試合で導入されることとなりました。
このやり方は、2014年のFIFAワールドカップにおいても一部試合で実施されたもので、前後半の半ば過ぎに設定されるという点では従来の飲水タイムと同じです。
しかし、タッチライン上で立ったまま水を飲むだけでなく、ベンチに戻って休むこともできるため、まさに「ブレイク」の機会となります。タオルなどで体を冷やすこともできるし、スポーツドリンクなどを摂取することも可能です。
従来の飲水タイムが、あくまで「水」に限定されていたのとは対照的で、より実効性のある熱中症対策となっていたのは間違いありません。
よせやん
では、具体的なCooling Breakについて詳しく紹介します。
前後半1回ずつ、それぞれの半分の時間が経過した頃に 3分間のCooling Breakを設定し、選手と審判員は以下の行動をとる。
- 日影にあるベンチに入って休む。
- 氷・アイスパック等でカラダ(頸部・脇下・鼠径部)を冷やし、必要に応じて着替えをする。
- 水だけでなくスポーツドリンクなどを飲む。
<留意点>
- 原則として試合の流れの中で両チームに有利・不利が生じないようなアウトオブプレーの時に主審が判断して設定する。
- 戦術的な指示も許容する。
- チームが、カラダを冷やすための器具を持ち込む際は、事前に大会運営責任者の了解を得る。
- 審判員はCooling Breakの時間を遵守するため、試合再開時には選手に速やかにポジションに戻るように促すと同時に、出場選手の確認を行う。
- サブメンバーは出場メンバーとの識別のため必ずビブスを着用する。運営担当者は試合再開時に出場メンバーの確認について審判員をサポートする。
- Cooling Breakに要した時間は「その他の理由」によって費やされた時間として前後半それぞれの時間に追加される。
- Cooling Breakを設定する場合は試合前またはハーフタイム時のロッカーアウトまでに両チームに伝達する。また、WBGT 値に応じて、前半と後半の対応が異なる場合がある。
まとめ
以上、今回はサッカーにおける熱中症対策を紹介しました。
2016年3月からサッカー界における熱中症対策が大きく変化しています。
WBGTに基づいた大会や練習の運営方法、Cooling Breakなどに関してご理解頂けたでしょうか。
熱中症による事故が起こってから、WBGTなんて知りません、対策なんて知りませんという言い訳は通用しません。
この記事を参考にして、サッカー関係者の方が今後このような熱中症対策を実践して頂けるようになれば幸いです。
よせやん
また、実際に熱中症が生じた場合は以下のマニュアルを参考にしてみてください。
サッカーにおける脳振盪の対応についてもまとめています。
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