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膝前十字靭帯(ACL)損傷の診断にX線検査・MRIは有用か?特徴的な所見・鑑別疾患まで解説!

 
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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること! 仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい! 自分の日々の勉強のため、また同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思い、スポーツ医学、整形外科、資産形成などについてブログを書いています。
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どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

よせやん

最近までめちゃくちゃ忙しかったのですが、やっと解放されました。

今は普通に忙しい程度です。

これから整形外科専門医の勉強も始めていきます。

 

さて、今日はまた膝前十字靭帯(ACL)損傷についてやっていきましょう。

 

今回はACL損傷におけるX線検査・MRI検査の有用性についてまとめていきます。

ACL損傷を疑う患者さんが来た時に画像検査は必須です。

しかし、その有用性(感度や特異度)、特徴的な所見、鑑別疾患などを知らないとせっかくの検査が十分に活きません。

 

ということでこの記事では、それらについて順にまとめていきます。

Contents

X線検査

X線検査でACL損傷の確定診断をすることはできません。

 

しかし、Segond骨折やlateral femoral notch signなどACL損傷を示唆する間接的なX線所見が報告されており、診断の助けとなります

よせやん

 

Segond骨折

Segond骨折とは、正面像で脛骨プラトー外側に認められる裂離骨折(下図)であり、lateral capsular signとも呼ばれます

 

図:Segond骨折のX線像

 

頻度はACL損傷の6〜9%程度ですが、Segond骨折の75〜100%の症例でACL損傷を認めることが認められており、Segond骨折を認めればACL損傷を疑い精査を進める必要があります。

 

lateral femoral notch sign

lateral femoral notch signは側面像で大腿骨外顆に認められる深い陥凹のこと(下図)です。

 

図:lateral femoral notch sign

 

lateral femoral notch signは、ACL損傷の3.2〜26.4%に認められます。

深さ2.0mmをACL損傷診断のカットオフ値とすると、感度3.2%、特異度100%、陽性的中率100%であり、ACL損傷を示唆する有用なX線所見です。

 

鑑別診断

また、X線検査はACL損傷の鑑別診断にも有用です。

鑑別診断をするためには、膝関節3方向(正面像・側面像・軸射像)のX線検査が必要であり、緊急処置を要する可能性がある骨折や膝関節脱臼などの早期診断にも繋がります

 

受傷機転が比較的似ている膝蓋骨脱臼は特に鑑別を要します。

実際に、ACL損傷で紹介されてきた患者さんが膝蓋骨脱臼だったというのは何回も経験しており、確かに鑑別が難しい場合があります。

 

膝蓋骨脱臼では、膝蓋骨は外側に偏位し、約20%の症例では膝蓋骨または大腿骨外顆から生じた軟骨骨片(sliver sign)を関節内に認めます(下図)。

sliver signは軸射像でしか確認できない症例が約30%であり、軸射像を撮影すべきです。

図:sliver sign

 

X線検査のまとめ

つまり、ACL損傷に対するX線検査の有用性についてまとめると・・・

X線検査ではACL損傷の確定診断はできないが、間接的所見は診断に役立ち、鑑別診断のためにもX線検査は必要である

と言えるでしょう。

 

ちなみに、ストレス撮影を行って前方不安定性を評価しACL損傷を診断する試みがこれまでに報告されていますが、他の診断ツールより有用であるかについては一定の見解が得られていません。

 

また、ACL裂離骨折は成人でもみられますが小児や成長期に生じることが多く、その大部分は脛骨付着部で生じるため、脛骨顆間隆起に骨折線または転位した骨片を認めれば診断可能です。

よせやん

MRI検査

靱帯実質部で損傷することが多いACL損傷では、X線像による確定診断は困難です。

このため、軟部組織の描出に優れているMRI検査がACL損傷の診断の精度を高めるのに有用なのは周知の事実でしょう。

 

MRI所見と関節鏡所見を比較した論文89編によるシステマティックレビューでは、MRI検査による診断の感度は87%、特異度は91%と高いレベルであることが報告されています。

また、経時的な変化においても、ACL損傷診断予測の感度は6週で82.1%、3ヶ月時点で89.4%、1年時で89.4%と高いレベルを維持していたことも報告されています。

 

しかし、ACL再損傷をMRIで診断する場合は感度は60%、特異度は87%と低くなることや、特に明らかな受傷機転を有さない症例ではその診断率は低くなることが報告されています。

 

ACL損傷の二次的所見

また、ACLそのものの損傷が明確でない場合でも、以下の二次的な所見を認めればACL損傷の診断の一助になります。

  • MRIで脛骨外側プラトー後方の骨挫傷(bone bruise)(下図)
  • PCLの角度変化
  • 外側半月板後角の変位

図:大腿骨外顆および脛骨外側プラトー後方の骨挫傷

 

ここら辺は非常に参考になる所見なので必ず覚えておきましょう。

よせやん

合併損傷の評価・診断

さらに撮影方法を工夫することにより、以下のような合併損傷の評価や診断も可能となります。

  • 半月板損傷の重症度の評価
  • 早期の軟骨損傷の評価
  • 前内側線維束損傷と後外側線維束損傷の鑑別診断

 

また、合併する半月板損傷をMRIで診断する場合に、診断の特異度は90〜95%と高いですが、感度は57〜77%と低くなり、偽陽性率が6〜11%であることが報告されており、注意する必要があります。

よせやん

まとめ

以上のことをまとめると・・・

MRI検査は施設や読影者により多少の影響は受けるもののACL損傷の診断に有用な検査であり、合併損傷の評価・診断にも有用である

と言えるでしょう。

 

まあ、今の時代にACL損傷を疑ってMRIを撮らないということはほぼないでしょう。

MRIはしっかりと読影できるようになっておきましょう。

よせやん

参考図書

2019年に発売されたACL損傷の診療ガイドラインです。

詳しい文献はこちらのガイドラインを参照して下さい。

 

ガイドラインシリーズは非常に勉強になりますよ。

よせやん

 

おわりに

以上、今回はACL損傷におけるX線検査・MRI検査は有用性に関してまとめました。

 

診断は身体所見ありきですが、徒手検査のみでは診断が難しいこともあり画像検査は非常に有用なツールになります。

ただし、ACL損傷に特徴的なX線・MRIの所見を知っておくことや鑑別すべき疾患を知っておくことも必要です。

 

この記事がそれらを復習する参考になれば幸いです。

 

 

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