小児の頭部・頭蓋の解剖学的特徴|小児のスポーツ頭部外傷について学ぶために知っておこう!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日は小児スポーツ頭部外傷についてです。
頭部外傷について学ぶためにまず、小児の頭部・頭蓋の解剖学的特徴についてまとめます。
小児の頭蓋ならびに中枢神経は発達段階にあり、成人と異なる特徴があります。
このことは、小児のスポーツ頭部外傷の診療の際に念頭に置いておかねばなりません。
成人とのスポーツ頭部外傷の違いを理解するためには、まず小児の解剖学的特徴を理解しておきましょう。
Contents
頭皮
まず、小児の頭皮についてです。
頭皮は年齢が幼いほど薄くなっていて、小児の表皮は脆弱で水疱を伴いやすくなっています。
真皮・皮下脂肪とも薄く、成人と比較的すると外力を緩衝する能力も低いのが特徴です。
皮下脂肪と帽状腱膜の間や、帽状腱膜と骨表を結合する組織は緩く、血液や滲出液が貯留しやすいのも特徴と言えるでしょう。
このように血液が貯留すると、前者は皮下血腫、後者は帽状腱膜下血腫となるわけです。
ちなみに骨膜の下に血液が貯留したものを頭血腫といい、分娩における代表的な頭部外傷で石灰化することもあります。
よせやん
頭蓋外・頭蓋
続いて、頭蓋外・頭蓋についてです。
大泉門・小泉門ともに開存し、縫合も緩く可動性に富みます。
産道通過の際にみられるように、応形能も豊富です。
骨皮質が薄いため頭蓋骨自体も柔らかいですが、骨膜は比較的厚く、特に縫合の近傍で骨組織と強く癒着しています。
このため、小児の頭蓋骨骨折では連続性が保たれた状態であることが少なくありません(ping-pong ball fracture)。
また、骨髄は豊富であり持続する静脈性出血の原因となります。
頭蓋・顔面比は出生後が最も大きく、その後、顔面の成長に伴って低下していきます。
このため、乳幼児では頭部外傷の頻度が高いのに対して、学童後期から思春期にかけては頬骨骨折や眼窩吹き抜け骨折など顔面骨折の頻度が増加する傾向にあります。
脳・神経線維
次に、脳・神経線維についてです。
幼若な脳組織は柔らかく脆弱です。
神経繊維は髄鞘が未発達であり、一定の脳組織容積における水分含有量が多くなっています。
そして、髄鞘の発達とともにリン脂質の比率が高くなります。
神経繊維自体の応形能は高く、外力に応じて伸長・変形することができます。
このため、成人に比べて神経組織の断裂は起きにくいですが、その反面、皮膚・骨などが薄いため直達外力による脳挫傷を起こす頻度が高いのが特徴です。
頭部打撲時の回旋性外力により、硬膜内面と脳表を連結する細静脈(皮質静脈など)に牽引が生じて断裂を起こしやすく、皮質静脈内や硬膜静脈洞内の血栓形成にも注意が必要です。
頭部・頚椎
続いて、頭部・頚椎についてです。
小児の頚部筋群は未発達であり、頭部支持力は弱く脳が振盪を受けやすい状態にあります。 椎体を連結する個々の靭帯・軟部組織は外力に対して、わずかに伸展し可動性に富みますが、一方で、断裂や剥離などの損傷を受けやすくなっています。
頚部が過伸展となった場合、spinal cord injury without radiographic abnormality(SCIWORA)・中心性脊髄損傷を起こすこともあります。
椎間関節突起は平坦で上下椎体の脱臼を起こしやすいですが、年齢が低いほど椎体の支点は上位頚椎にあり、成人より1〜2椎体上位での損傷が起きやすいのも特徴です。
脳血液循環
最後に、脳血液循環についてです。
頭部外傷患者における脳血流自動調整能障害が予後不良と相関するという報告が多くあります。(Lewis PM, et al. Pediatr Crit Care Med. 2015)
成人と比較して、小児の能灌流圧cerebral perfusion pressure(CPP)は年齢により生理学的変化を認めます。
CPPは平均動脈圧mean arterial pressure(MAP)と頭蓋内圧intracranial pressure(ICP)との差であり、正常環境では自動調整能や脳酸素代謝率と密に相関するといわれています。(Allen BB, et al. Pediatr Crit Care Med. 2014)
特に小児では、頭部外傷後の脳血流自動調整能や脳血流・脳酸素代謝率のカップリングが異常となりやすく、CPP低下が合併すると虚血を生じてしまう可能性があります。
おわりに
以上、今回は小児スポーツ頭部外傷について学ぶため、まず小児の頭部と頭蓋の解剖学的特徴についてまとめました。
小児のスポーツ頭部外傷は当然のことながら、成人のそれとは性質が異なります。
成人とのスポーツ頭部外傷の違いを理解するためには、まず小児の解剖学的特徴を理解しておく必要があります。
今回の記事の続編として、小児のスポーツ頭部外傷についてまたまとめますのでお楽しみに。
よせやん
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