サイクロプスとは?ACL再建術に関わる人は知っておこう!原因・頻度・症状・予防・治療まで解説
どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
年末からの連勤で非常に疲れが溜まっています。
年末は高エネルギー外傷が非常に多く、手術待機患者さんがかなり入院しています。
状態が落ち着いた方から一人ずつ手術をして、少しでも早く良くなって退院してもらえるように頑張ります。
さて、今日はスポーツ整形外科でACL(前十字靭帯)再建術に関わっている人なら聞いたことがあるかもしれない「サイクロプス」についてまとめてみようと思います。
これは、意外に整形外科医でも知らない人は多いのではないでしょうか。
サイクロプスはACL再建術に関わる人は知っておいた方がいいでしょう。
僕も改めて調べてみましたので、まとめていきます。
よせやん
Contents
サイクロプス(Cyclops)とは
サイクロプスという名は、静脈血管が「目のような」領域に焦点を当てたような形をしていることに由来しています。
(a:MRI所見 b:関節鏡視におけるサイクロプス c:切除後)
1990年にJacksonとSchaeferによって、ACLの基部に線維性結節が発生したために膝を完全に伸展できなくなったことが初めて報告されました。
サイクロプスは通常、術後2年以内に発生すると言われています。
サイクロプスの頻度
過去には、ACL再建術後のサイクロプスの発生率は、一重束再建では1.9%〜10.2%、二重束再建では3.6%〜10.9%という報告があります。
しかし、これらの報告は完全伸展ができない患者さんに対して行った関節鏡での結果であり、前向き研究ではありません。
近年では、サイクロプスを明らかにするために、MRI検査は感度、特異度、精度(感度85.0%、特異度84.6%、精度84.8%)ともに良好であることが知られていますが、MRIにおけるサイクロプスの発生率は33.0%〜46.8%です。
また、ACL再建術後のセカンドルック(関節鏡視)におけるサイクロプスの発生率は15.0%〜21.5%であると報告されています。
ただし、サイクロプスの多くは無症状であり、サイクロプス有り群と無し群で手術後2年以内にKOOSと呼ばれる膝関節の機能評価に有意差は認められていません。
ちなみに、症候性のサイクロプス病変は、サイクロプス症候群と呼ばれます。
サイクロプスの症状と原因
顆間窩天井と移植靱帯がインピンジメントして微小外傷を繰り返すと、結節形成の原因となる線維化プロセスが永続化し、サイクロプスが形成されて痛みを伴う伸展障害が生じることがあります。つまり、サイクロプス形成は可動域制限、特に伸展制限の原因となり得るのです。
サイクロプスの原因として今までに報告されているものには、以下のものがあります。
<本質的要因>
- 女性
- BMI低値
<手術要因>
- 顆間ノッチの狭さ
- QTB(大腿四頭筋腱)
<術後要因>
- 積極的に膝伸展トレーニングをしないこと
- 大腿四頭筋の圧迫
- 術後3-6週で起こるハムストリング攣縮
本質的な要因として、年齢、スポーツ活動レベル、骨挫傷の有無はサイクロプスの発生と相関は認められていません。
手術要因として、脛骨骨孔の位置が顆間窩天井の傾斜よりも前方にある場合にルーフインピンジメントが生じやすいとの報告もありますが、他の研究では否定的です。
関節鏡下手術とopenの手術、移植腱がSTGかBTBか、レムナントの温存、半月板縫合の有無は、サイクロプスの発生と相関は認められておらず、一重束再建と二重束再建での比較も報告されていません。
サイクロプスの予防と治療
サイクロプスは、ルーフインピンジメントが原因となるため、再建が終わったら膝伸展位にして再建したACLが顆間窩天井とインピンジしないことを確認することが有効であると言われています。
サイクロプスの形成が可動域制限の原因になっている場合、関節鏡下にサイクロプスを切除することにより可動域の改善が見られます。
また、顆間窩ノッチが存在する場合にはノッチ形成(ノッチを削る)も併せて行うことが大切だと言われています。
症状がひどい場合には早期に関節鏡下に切除することもありますが、抜釘時に同時に切除することが多いのではないでしょうか。
よせやん
おわりに
以上、今回はACL(前十字靭帯)再建術に関わっている人ならば知っておきたサイクロプス(Cyclops)について簡単にまとめてみました。
サイクロプスはACL再建術に関わっている人なら聞いたことがあるかもしれませんが、聞いたことがあってもよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
今後もこういう何か聞いたことがあるけどよくわからないものについて備忘録がてらまとめていこうと思います。
よせやん
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