奥脇の分類|肉離れのスポーツ復帰時期を予測するMRIに基づく重症度分類
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
昨日の講演が終わり、今日はちょっと開放感のある1日でした。今日はめずらしくACL再建の手術が大学病院であり、腱作りを任してもらえました。1人でやるのは初めてでしたが、1人でやることで自分がわかったつもりでわかっていなかったことが明確になりました。すごい勉強になった1日でした。
前回に引き続き、今回も肉離れの肉離れのMRI診断と重症度分類についてです。
知っておいて頂きたい肉離れのMRIを用いた重症度分類は2つあるのでした。
- Boutinらの分類
- 奥脇の分類
前回、Boutinらの分類についてまとめましたので、今回は肉離れの診療において非常に大切な奥脇の分類についてまとめていきます。
この分類は復帰に関わる予後予測に繋がり、きちんとこの分類を理解していることが選手をスポーツ復帰させる上でも非常に重要になってきます。特徴的なMRI画像と併せてしっかりと覚えておくとよいでしょう。
Contents
奥脇の分類とは
では、早速奥脇の分類について説明していきましょう。
これは、修復に要する期間の目安と成り得る画期的な分類です!
よせやん
最近の論文でも、この分類が用いられていることが多いです。
肉離れの分類は基本的にこの分類を覚えておけばいいと思います。
では、どういった分類なのかさっそく見ていきましょう。
- Ⅰ型(軽症):出血所見のみが認められる出血型
腱・筋膜に損傷がなく、筋肉内または筋間(筋膜)の出血
- Ⅱ型(中等症):筋腱移行部(特に腱膜)損傷型
筋腱移行部(特に腱膜)の損傷を認めるが、完全断裂・付着部の裂離は認めない
- Ⅲ型(重症):筋腱付着部損傷型(裂離を含む)
筋腱の短縮を伴う腱の完全断裂または付着部裂離
この分類における各型の頻度は、Ⅰ型とⅡ型は同程度で、Ⅲ型は数%と稀と言われています。
肉離れの病態
奥脇はまた、逆にMRI所見から肉離れの病態を類推しています(図1)ので、そちらに関しても紹介しておきます。
図1:肉離れの病態
図1の左は肉離れの受傷機転を示しています。
肉離れを起こす筋の多くは羽状筋の形態をとっており、これが遠心性収縮により、筋腱移行部(または筋と腱膜の移行部)で損傷するのでしたね。
Ⅰ型(軽症):筋腱移行部の血管損傷(筋組織)のみ
Ⅱ型(中等症):筋腱移行部(特に腱膜)損傷
Ⅲ型(重症):腱性部(付着部)の完全断裂
この図を見ると、損傷の病態がよくわかりますね。
繰り返しますが、
この分類が復帰に関わる予後予測に繋がり、きちんとこの分類を理解していることが選手をスポーツ復帰させる上でも非常に重要になってきます。
よせやん
というわけで、それぞれの型をしっかりと確認していきましょう。
Ⅰ型損傷
これは、出血所見のみが見られる出血型です。
では、典型的なMRI所見を見てみましょう。
図2:奥脇の分類Ⅰ型損傷のMRI画像
図2の写真では、筋腱移行部を中心に高信号領域のみが認められます(→)。
この高信号領域は出血所見を示唆しています。
ちなみに、このような出血所見を「feathery appearance」というのでしたね。
忘れてしまった方は下の記事で確認して下さい。
Ⅱ型損傷
これは、筋腱移行部(特に腱膜)損傷型です。
では、こちらも典型的なMRI画像を見てみましょう。
図3:奥脇の分類Ⅱ型損傷のMRI画像
図3の写真では、健側(左)では腱膜の連続性が確認できますが(←)、患側(右)では腱膜が途絶しており筋腱移行部の損傷があると考えられます(→)。
Ⅲ型損傷
これは、筋腱付着部損傷型であり、裂離骨折を含みます。
Ⅲ型損傷は数%と稀ですが、Ⅲ型損傷の場合には手術を考慮する必要があるので、これもしっかりと診断できるようになっておく必要があります。
では、参考のMRI画像です。
図4:奥脇の分類Ⅲ型損傷のMRI所見
図4の写真では、大腿二頭筋長頭の近位腱性部の完全断裂を認めます(→)。
また、多量の周囲には液体貯留がみられます。
おわりに
以上、今回は肉離れの診療において非常に大切な「奥脇の分類」についてまとめました。
何度も強調しましたが、これは診療において非常に大切になってくる分類です。
この分類が復帰に関わる予後予測に繋がり、きちんとこの分類を理解していることが選手をスポーツ復帰させる上でも非常に重要になってきます。
よせやん
肉離れは再損傷が非常に多く、「クセになりやすい」疾患と言われていますが、初期における診断が間違っていることが再損傷する1つの原因とされています。
具体的には、Ⅱ型損傷なのにⅠ型損傷と診断され、早期にスポーツ復帰した場合には、約半数の症例で再断裂を認めるとも報告されています。
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