エコノミークラス症候群の症状と治療|これらの症状には御用心!!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
ただ今、cadaverで勉強させて頂くため某国に来ております。
ここでの出会いも素晴らしく、多くの先生とお知り合いになれました。
ネットワークを広げることは大切ですね。
明日からのcadaver trainingが楽しみです。
膝関節鏡と膝の解剖についてしっかりと勉強してきたいと思います。
さて、本日は昨日の続きでエコノミークラス症候群(ロングフライト症候群)についてやっていきましょう。
エコノミークラス症候群とはどんな疾患かについては下の記事で確認して下さい。
今回はエコノミークラス症候群の症状と治療についてまとめます。
エコノミークラス症候群の症状を知っておき、ロングフライト後にそれらの症状を自覚する場合は、必ず可及的速やかに医療機関を受診する必要があります。
そのためにもエコノミークラス症候群で起こりうる症状を知っておきましょう。
Contents
エコノミークラス症候群の症状
では、エコノミークラス症候群の症状がどんなものであるか確認していきましょう。
軽症
重力と腹圧に逆らって心臓に血液を送り返さなければならない、ふくらはぎの筋肉中の静脈 (深部静脈)の内膜に傷もしくは静脈弁内側の血液の流れがよどむ部分に小さな血の塊(血栓)が生じ、それが壁にへばり付き、数cmから20cmくらいに徐々に成長し、ふくらはぎの静脈が閉塞してしまった状態が軽症のエコノミークラス症候群です。
血栓が左右両側に同時に起こることは極めて稀であり、左右どちらかのふくらはぎの不快感、鈍い痛み、腫脹などを起こします。
一般的には、4:1の割合で左側のふくらはぎに発症します。
その理由は、骨盤内で左側の静脈が太く弾性のある動脈をまたぐ形となっているため、血流が滞りやすいことにあります。
軽症の場合は、そのほとんどが気がつかれず、自然治癒していることが推測されます。
中等症
軽症例の血栓が、さらに血液の流れに沿って心臓側に徐々に延び、成長して大腿部あるいは骨盤内深部静脈まで塞いでしまったケースが中等症です。
このケースでは、痛みや浮腫が一側の下肢に強く出ます。
エコノミークラス症候群の認識があれば、早期の血栓溶解剤の投与、カテーテルでの血栓吸引、あるいは外科手術などで治る可能性が高く、エコノミークラス症候群の正しい知識が広く普及することの重要性が強く浮かび上がるケースです。
重症例
中等症の血栓が血管壁からはがれ、ゆっくりと大静脈を上行して一旦心臓に入り、次いで酸素を取り入れる器官でもあり、血液のフィルターでもある肺の血管(肺動脈)を詰まらせてしまうことを肺血栓塞栓症と呼びます。
酸素を取り入れるという生命維持機能が障害されるわけですのでこの場合、重症ケースとなります。
当然のことながら、呼吸不全、ショックとなり突然死につながります。
エコノミークラス症候群の事例
前回、元サッカー日本代表の高原選手の事例を紹介しましたが、これも重症例ですね。
ここでは、その他の事例も紹介していきましょう。
アメリカを経由して、片道18時間程のロングフライトを経た後に南米の6,000メートルを超える高山への登山隊に参加した日本人隊員にも、エコノミークラス症候群が発症しています。
6,000メートル以上の高峰登山はベースキャンプとの登り下りを何回か繰り返し、高所順化をして登頂に至るわけですが、この隊員は何回トライしてもある高さ以上に行くと呼吸困難となり、登頂できませんでした。
帰国後に肺の約30%に血栓が詰まり、酸素を取り入れる機能が失われていたことが判明しています。
また、エレベストの登頂後に突然死した女性登山家の死因に関しても、広範なエコノミークラス症候群が強く推測されています。
高所登山ではロングフライトに加え、下肢の血行を阻害する睡眠時の窮屈な姿勢と高所での脱水もエコノミークラス症候群の発症に関与している可能性があります。10日間で5ヶ国を飛行機で飛び回り、帰国3日後に突然死した47歳のビジネスマンのケースでも、疲れやすさや家の2階への階段も苦しそうに登っていたことから、帰国後死亡するまでの3日間に徐々に肺動脈が詰まり、酸素を取り入れる機能が障害されていたことがうかがえます。
この事例は、僕たちにも十分起こり得そうなケースで怖いですね。
よせやん
このように、重症のエコノミークラス症候群は肺にゼリー状の血栓が詰まった状態ですが、肺の20%くらいまでが詰まっても無症状、肺の20〜30%くらいが詰まって初めて症状として疲れやすさや息切れが出ます。
そして、肺の50%を超える広範囲での血栓による肺動脈の閉塞は突然死につながるのです。
今回のまとめ
以上、今回はエコノミークラス症候群の症状と治療に関してお話ししました。
当然、パルスオキシメーターがあれば95%以下の異常値となり、早めに異常に気付くことが可能です。
重症例になり、肺動脈の閉塞が生じると症状が出現し、場合によっては突然死につながってしまいます。
ですので、ロングフライト後にはパルスオキシメーターでチェックするようにすれば、呼吸不全やショックで倒れる前のエコノミークラス症候群を診断できるでしょう。
ロングフライト後に疲れやすさや息切れを自覚する場合は、必ず可及的速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
よせやん
次回、エコノミークラス症候群において1番大切な予防法を紹介します。
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