上肢に起こる末梢神経障害|代表的な絞扼性神経障害を紹介します!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日は癒しの木曜日です。
午前中にやってきた救急車も1台だけで、昼からはのんびりと外来をしています。
でも、日常診療で出くわす疑問点の多くは外来のときに出会います。
そういったことを1つ1つ大切にしていきたいですね。
さて今日は、昨日の続きで絞扼性神経障害についてです。
さて、今日診た患者さんの話ですが、大腿外側の痺れを訴える患者さんでFNSTなどは陰性であったものの安易に脊柱管狭窄症かヘルニアで大腿神経が圧迫されているんだろうなと思っていて、患者さんの希望もあり腰椎MRIを撮影すると神経が圧迫を受けている所見は軽度のものしかありませんでした。
あれ?と思いながら再度問診をしてみると、仕事の制服で腰回りのきつい服を着ていることや事務仕事で座っている時間が長く、夕方頃から症状がひどくなるとのことでした。
それを踏まえて身体診察をしてみると上前腸骨棘近傍でTinel signを認めます。
あ〜これが外側大腿皮神経の絞扼による感覚異常性大腿痛かぁと納得しました
このように手足の痺れや下肢の痺れを訴える患者さんがいつも頸椎や腰椎部で神経の圧迫があるとは限りません。
当然のことながら、末梢神経での絞扼について考えなくてはいけません。
では、みなさん絞扼性神経障害をどれだけ知っていますか?
知らないと必然的に疾患を見逃すことに繋がります。
よせやん
というわけで、今回は上肢の具体的な絞扼性神経障害について紹介していきます。
Contents
代表的な疾患
では、まず上肢に起こる代表的な絞扼性神経障害を紹介します。
ここに挙げる疾患に関しては、またいつか時間があるときに個別にまとめる予定なのであっさり紹介します。
手根管症候群
正中神経が、手関節掌側中央で手根骨と屈筋支帯により形成される手根管で圧迫を受け、母指〜環指にかけてのしびれ、感覚障害と母指球の萎縮が生じます。
最も代表的な絞扼性神経障害です。
肘部管症候群
尺骨神経が、肘内側で関節より少し末梢にある尺側手根屈筋下の肘部管で圧迫を受け、小指と環指尺側にかけての感覚障害と鷲手(鉤爪手)変形、骨間筋萎縮、握力低下がみられます。
こちらも比較的多い絞扼性神経障害です。
Guyon管(尺骨神経管)症候群
尺骨神経が、手関節掌尺側に存在するGuyon管(掌側を豆鉤靭帯、背側を屈筋支帯、内壁を豆状骨、外壁を有鉤骨により形成)で圧迫を受け、肘部管症候群と類似した症状を訴えます。
しかし、手背部への感覚枝はGuyon管の近位で分枝するため、同部の感覚障害が生じないのが鑑別のポイントです。
ちょっとマイナーな疾患
ここからは少しマイナーな上肢の絞扼性神経障害を紹介します。
前骨間神経麻痺
前骨間筋神経が、肘関節周囲で圧迫され、母指IP関節・示指DIP関節の屈曲が不能となり、母指・示指でのつまみ動作が障害されます。
知覚障害は通常伴いません。
前骨間筋神経は、上腕骨内上顆より2〜8cm末梢で正中神経から分岐します。
前骨間筋神経麻痺の原因としては、肘周囲の骨折などの外傷や上腕二頭筋腱膜、円回内筋の後面や浅指屈筋腱起始部の繊維組織やガングリオンなどの占拠性病変による圧迫などがあります。
回内筋症候群
正中神経が、肘関節周囲で圧迫され、前腕の近位前面の鈍痛と正中神経領域の知覚障害が出現します。
タオル絞りなどの前腕の回内・回外動作を頻繁に行う作業や大工などの多くみられるといわれています。
具体的な絞扼部位としては、上腕二頭筋腱膜(lacertus fibrosis)、円回内筋起始部、浅指屈筋腱起始部の繊維組織、Struthers靭帯の4つが存在します。
本性を診断するためには常に手根管症候群との鑑別が必要です。
手根管症候群では就寝中の症状増悪を訴えることが多いですが、回内筋症候群の典型例では夜間に症状が消失します。
後骨間神経麻痺
後骨間神経が、反復した前腕の回内外運動や回外筋入り口部の腱性組織(arcade of Frohse)やガングリオン、脂肪腫、リウマチ性滑膜炎などの占拠性病変によって圧迫を受け、下垂指となります。
後骨間神経は皮膚への知覚神経はなく、運動神経が主体であるため、感覚障害は出現しません。運動神経として、短橈側手根伸筋、回外筋、尺側手根伸筋、総指伸筋、示指伸筋、小指伸筋、長および短母指伸筋、長母指外転筋を支配しているため、母指の伸展・外転および示指から小指のMP関節の伸展が不可能と成るため下垂指となるわけですね。
橈骨神経管症候群
橈骨神経が、橈骨管において圧迫されることにより、肘外側のうずくような痛みを訴え、症状の強い例では安静時痛や夜間痛も伴います。
繰り返し肘を伸展させたり、前腕を回内外する作業がしばしば発症に関与します。
橈骨神経管とは、上腕において腕橈骨筋と上腕筋間にはじまり、arcade of Frohseを通り、回外筋の浅層と深層間までの部分をいいます。
ボーリング母指
指神経は皮下の浅い部分を通過すること、骨や関節などの硬い組織の知覚にあること、手掌腱膜の延長である線維性の隔壁で取り囲まれ移動性が制限されていることなどにより圧迫を受けやすいとされています。
母指尺側の指神経内あるいは周囲の繊維組織増殖による神経腫のことをボーリング母指といい、症状は障害部位の神経の疼痛と過敏状態であり、その指神経支配領域のしびれや感覚低下を認めます。
名前の通り、ボーリングを頻回にする人に多いと言われています。
おわりに
以上、今回は上肢に起こる絞扼性神経障害についてまとめました。
すべて知っていましたか?
代表的なものに関しては今後また個別にまとめていく予定です。
よせやん
次回は、体幹・下肢で起こる絞扼性神経障害についてまとめます。
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