MCLの脛骨付着部からの引き抜き損傷の画像診断・手術・リハビリ
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
だいぶお腹の調子も回復してご飯が食べれるようになりました。明日もまた当直で、その翌日からは通常業務が始まるので、しっかりと体調を整えておかなくてはいけません。
さて、今日はMCL損傷シリーズの最終章です。
昨日に引き続き、MCL脛骨付着部引き抜き損傷についてやっていきます。
脛骨付着部からの引き抜き損傷は、稀ですが手術適応になる可能性の高いものですので必ず知っておきましょう。
よせやん
今回は、MCL脛骨付着部引き抜き損傷の画像診断および手術・リハビリ・スポーツ復帰についてまとめていきます。
特に手術のところに関しては、解剖の復習をしてからご覧頂いた方が理解しやすいかと思います。
Contents
画像検査
単純X線検査で骨傷がないことを確認します。
膝正面外反ストレス撮影では、関節裂隙が健側に比べて開大しています。
ストレスX線は侵襲もあるため必須ではありませんが、術前に撮影しておくことで、術後改善の程度の評価が可能となります。
特に、一次縫合を行う場合は、術前後の評価のためにも必ず撮るようにすべきだと思います。見て評価できると患者さんにも納得してもらいやすいですしね。
図1:外反ストレスX線像(僕が受傷した際のX線です。)
MRI検査では、ほぼ全例に脛骨からの引き抜き損傷に特徴的なMCL浅層が緊張が解除された糸のように波打つ所見を認めます。
図2:MCL脛骨付着部からの引き抜き損傷のMRI所見(左図:鵞足を乗り越えたMCL浅層段端の波打つ所見、右図:大腿から連続しているMCLが小矢印で消失している)( Corten K, et al. Clin Orthop Relat Res. 2010より引用)
自分のMRI画像より、上記論文の画像の方がわかりやすかったので、こちらを採用しました。
また、前回お話ししたように合併損傷を認めることが多いため、これらを見落とさないようにMRI画像を注意深く読影する必要があります。
手術
関節鏡手術
MCL修復術の前に、関節鏡検査を行い、合併損傷の有無を確認します。損傷形態に応じて、縫合・切除など半月板損傷に対する処置を行いますが、陳旧性のMCL引き抜き損傷やACL付着部での裂離骨折などの特殊な場合を除き、ACL損傷に対しての処置は二期的に行うのが一般的です。
関節鏡検査で多くの場合、内側半月板の上下いずれかでMCL深層が断裂しているのが確認できます。
関節包が破綻しているため、関節鏡の灌流液が下腿に露出し、皮下の腫脹の原因となるため、鏡視下の処置は可及的速やかに行う必要があります。MCL修復術
僕が手術を受けた際の写真を使って説明していきます。
よせやん
MCL修復術は、仰臥位、股関節外転位、膝軽度屈曲位で行います。
まず、MCL浅層の段端を確認します(図3、図4A)。
自分の場合も、例に違わず、断端が鵞足を乗り越えて短縮していました。
図3:断裂したMCL浅層の遠位段端を確認(鵞足近位部まで短縮)
これに非吸収糸でwhipstichをかけておきます(図4)。
図4:whipstichをかけたMCL浅層段端
MCL浅層をまくり上げると、関節レベルでMCL深層が脛骨側または大腿骨側で破綻しているのが確認(図5)できるため、これを非吸収糸で修復します。
図5:関節包とともに脛骨付着部で断裂したMCL深層を同定
その後、MCL浅層を鵞足下層を通し、鵞足遠位の脛骨付着部に刺入したキャニュレイテッドスクリューに固定します(図6)。
図6:固定肢位にてMCL浅層を脛骨付着部に縫合固定
全体的な流れは以下の図のような感じです。
図4:MCL脛骨付着部引き抜き損傷の修復術( Corten K, et al. Clin Orthop Relat Res. 2010より引用)
参考までに術後X線像を載せておきます。
図4:MCL脛骨付着部引き抜き損傷の修復術後( 僕の画像です…)
術後リハビリとスポーツ復帰
最後に、術後のリハビリとスポーツ復帰についてお話しします。
- 術後1週間程度、膝軽度屈曲位で外固定を行います。
- 荷重制限は必要ありません。
- 外固定終了後、支柱付きMCL装具に変更し、可動域訓練を開始します。(僕の場合は2週間ニーブレス固定を行い、その後、ROM訓練を開始しました。)
- 可動域訓練開始前から積極的に大腿四頭筋の筋力訓練を行います。
ACL損傷合併例では、可動域が回復したら二期的にACL再腱術を行います。
では、続いてスポーツ復帰についてです。
- MCL損傷単独:3〜5ヶ月
- ACL損傷合併:ACL再建術後のスポーツ復帰に準ずる(二期的に再建した場合は当然その分遅くなる)
MCL修復術単独の場合は、3〜5ヶ月で完全スポーツ復帰が可能です。僕は3ヶ月ほどで復帰したと思います。
術後の合併症として、関節拘縮の可能性があります。
武富らは、修復術を行った14例中の3例で術後可動域制限のために授動術を要したこと、授動術を要した3例中の2例はACL損傷および後十字靭帯損傷を合併していたことを報告しています。( 武富修治,内山英司.JOSKAS.2010 )
術後、6〜8週が経過しても十分な屈曲を獲得できなければ授動術を行うべきであるとされています。
僕の場合は、MCL単独損傷でしたが、それでもやはり関節拘縮が生じないか不安でした。
術後2週で可動域訓練を開始し、精力的に可動域訓練に取り組んだ結果、現在の可動域はfullです。リハビリの先生に厳しく指導してもらったおかげです。
伏在神経膝蓋下枝領域の感覚障害はあり、しばらくは痺れが気になっていましたが、今ではほとんど気になりません。
サッカー、フットサルも何の支障もなくプレイできています。また、そろそろスクリューの抜釘術を受けなきゃいけませんが…。
おわりに
以上、今回はMCL損傷の中でも脛骨付着部からの引き抜き損傷について、画像診断・手術・リハビリについてまとめました。
脛骨付着部からの引き抜き損傷は稀ですが手術適応になる可能性の高いものですので、ぜひ知識を整理しておいてください。
よせやん
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