半月板断裂と診断|小さい断裂、高齢者の断裂、靭帯断裂との関連
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
昨日は久しぶりに同期と飲みに行きました。今、大学病院で働いている同期とも4月からは別々になります。気兼ねなく付き合えるいい同期に恵まれたなぁと思います。勝手にライバルは全国のスポーツ整形外科を志す近い年次の人たちと思っていますが、一緒に頑張ったり色々なことで助け合える大学同期の仲間も大切です。これからも末永く付き合っていければと思います。
さて、今日は半月板断裂の治療とリハビリテーションの前の最後の回です。
今まで触れていなかった半月板断裂の知識や診断についてまとめます。
Contents
極めて小さな断裂
まず、極めて小さな半月板断裂に関してです。
極めて小さな半月板断裂のMRI所見は、わずかな段差のみのことがあります。
fibrillationは術中にもよく使われる単語ですので覚えておきましょう。
外側半月板後角の膝窩筋腱裂孔近くにはlongitudinal tearが生じやすいとされていますが、無症状で治療を要しない場合が多いです。
高齢者の半月板病変
高齢者では、半月板内部の高信号が頻繁に観察されます。
特に内側半月板後節にはほぼすべての症例で高信号を認めます。その多くは変形性膝関節症の合併であり、骨病変・軟骨欠損が高率に見られます。
変形性膝関節症の結果が半月板断裂を招いたのか、半月板損傷が骨軟骨変性に至ったのかについては、諸説がありますが変形性関節症の先行の場合が多いと言われています。
高齢者の半月板では、弾力性が低下し、外周方向へ逸脱する場合も多くみられます。特に内側半月板に多く、後角からのroot部断裂が頻発します。
確かに、大学に見ている変形性膝関節症のほぼ全症例で内側半月板の内側への逸脱を認めるように思います。また、meniscocapsular separationが併存する場合も多いです。これにより、荷重伝達と衝撃吸収の作用が低下し、変形性膝関節症がある場合にはさらにそれを助長する結果となります。
ちなみに、高齢者でなくても半月板の外周への逸脱を認めることがあります。外側半月板後角のroot部断裂は、ACL断裂に合併しやすく、外側半月板は外周へ逸脱してしまいます。
靭帯断裂と半月板損傷
続いて靭帯断裂と半月板断裂に関してです。
スポーツに関連することが多いので、ぜひ知っておきましょう。
靭帯断裂のない半月板のみの断裂は内側半月板が外側よりも多く、前十字靭帯(anterior cruciate ligament:ACL)損傷に合併する半月板断裂は内側半月板よりも外側半月板の方が多いとされています。
ACL断裂の二次所見でもあるbone bruiseは、大腿骨と脛骨の外側に見られ、これに対応する外側半月板の後節後角に断裂が多く認められます。
ACL断裂と内側側副靭帯断裂を伴う内側半月板断裂は「O’Donoghue’s unhappy triad」として有名ですが、実はこの場合も外側半月板の方が受傷頻度は高いと報告されています。
これらの靭帯断裂に伴う半月板断裂は内側・外側半月板ともに、後節後角のlongitudinal tearが多いとされています。
また、ACL断裂を放置した場合には、外側半月板より内側半月板が時間経過とともに損傷されやすく、この場合はcomplex tearを伴う変性断裂の形態を示すことが多いと言われています。
半月板損傷の診断
徒手検査による半月板損傷の正診率は75%程度に留まりますが、MRIによる半月板断裂の正診率は90%以上になります。
MRIによる誤診のうちの4割程度は避けられないと言われています。
徒手検査に関してはこちらの記事も確認してみてください。
1番多く誤診(false negative)が起こりやすいのは、外側半月板の後角です。その場合、辺縁部の小さなlongitudinal tearが多いとされています。特に、ACL断裂が合併した場合には外側半月板後角の断裂の見落としが多いと言われています。
しかし、MRIで見逃される断裂のうち半数は、治療の必要のない断裂であり、特に外側半月板の小断裂の見落としは予後に影響を与えないと言われています。また、逆に内側半月板の後節後角部分は、関節鏡の死角になることが多く、MRIで認めた断裂が証明されないこともあります。
おわりに
以上、今日は半月板断裂に関して今まで触れていなかった部分に関してまとめておきました。
特に、ACL損傷や内側側副靭帯損傷に伴う半月板断裂はスポーツ外傷に多いため、スポーツ医学に関わる人はぜひ知っておきたい知識ですね。
というわけで、次回の半月板シリーズから治療に入っていきます。ここまでだいぶ長くなりました。
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