手術記録(オペ記事)の書き方|手術上達のために手術記録を活用しよう!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
昨日はスポーツ班の手術日でしたが、件数が多く手術が終わったら夜10時を回っていました。
仕事が終わったらもうヘトヘトで、例の如く医局のソフォーで寝てしまいました。
そんな中、研修医が執刀した大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術に助手として少しだけお手伝いしました。
その研修医は一度人工骨頭置換術を執刀したことがあるにも関わらず、あまりにも解剖・手術の流れを理解していなくて驚きました。
そこで、今日の仕事が終わったら今回の手術を思い出して手術記事を書いてみるように言いました。
一応、手術記事は書いてくれたようですが、それを見てみると…
いつか僕が書いた手術記事をコピーして、インプラントのサイズだけ変更してあるものでした。
こんなことしてたら手術が上達するわけないですよね。
数をこなせばそれなりにはできるようになるのでしょうが、その成長速度に期待は持てそうにありません。
よせやん
というわけで、この記事では手術記事の書き方についてまとめようと思います。
Contents
手術記録(オペ記事)とは
手術記録は、後療法の支持や病診連携の際の貴重な情報源となり、同様の手術を行う際にも文献や教科書よりも生きた情報として利用価値の高いものになります。
また、再手術の場合は、前回の手術内容は適応や術式を決定するときの重要な判断材料になる場合があります。
整形外科の場合は骨接合術で挿入した金具を抜釘することが多いので、その際に骨接合術の手術記録をみて、どういう器械を使ったのか、どういうアプローチで展開したのか、視野に神経など注意すべきものが出現したかなどを知るうえで非常に重要です。
そして、研修医や自分のような若い医師にとっては、手術記録を書くことによって行われた手術を頭の中で再現し、解剖や術式の理解を深めることができます。
一方で、手術記録は公文書であり、手術に関する医療訴訟の証拠材料としても重要であり、手術記録の基本的な書き方については徹底して身につけておくことをおすすめします。
よせやん
手術記録を書く際のポイント
このように外科系診療科において非常に大切な手術記録ですが、どのように記載すればよいのでしょうか。
まず、手術記録を書く際のポイントを紹介します。
- 手術の手順や観察所見などを経時的に詳しく正確に記載する。
- 主観的、感情的な表現は避け、客観的な言葉を用いて、手術中の事実のみを記述的に記載する。
- 手術記録は手術後できるだけ早く記載する。
- イラストをできるだけ多く使用する。
- 術中に神経・血管損傷や骨折などの偶発症が起こった場合には、生じたことをありのままに記載する。
- 必ず手術に立ち会った医師が作成する(研修医の場合は指導医に内容をチェックしてもらう)。
特に重要なのは、手術記録をできるだけ早く書くことです。
当然ながら手術記録を書くのが早ければ早いほど、その症例の解剖学的な特徴や手術の際に苦労した点、工夫した点などをより鮮明にを覚えているため、正確な情報を書いておくことができます。
逆に時間が経過してしまうと、それがどんな手術だったのか時々刻々と忘れていってしまいます。
また、手術記録にはイラストをできるだけ多く使用することをおすすめします。
イラストを多く使用することで、どのような手術が行われたのかを他のスタッフによりわかりやすく伝えることができます。
当然、自分がまた同じ手術をする際にもイラストでビジュアル的に復習できた方が、その手術について思い出しやすいでしょう。
そして、手術記録は手術に関する医療訴訟の証拠材料になるため、
必ず手術に立ち会った医師が作成し、研修医が作成する場合は必ず指導者がチェックしておくことが大切です。
手術ですので、当然、術後にトラブルが生じる場合もあります。
自分のみを守るためにも、研修医の先生は必ず指導者にチェックしてもらい、また指導者も研修医に書かせた手術記録は確認しておいた方がよいでしょう。
リスク管理・・・大事です。
よせやん
手術記録の記載内容
最後に手術記録の一般的な記載内容を紹介します。
- 患者の指名
- 年齢および性別
- 傷病名
- 術式
- 術者(指導、執刀、助手)
- 手術時間
- 麻酔方法
- 麻酔医
- 出血量
- 輸血量
- 手術内容
- 手術に使った器械
体位・準備
手術体位を記載します。
体位固定器具や下肢牽引装置などを使用していればそれも記載しましょう。
ターニケット(駆血帯)を使用している場合は駆血部位と使用時間も記載しておくとよいでしょう。
皮膚切開の位置・長さ
皮切の長さ、形状(直線状、弓状など)、皮膚説と解剖学的ランドマークとの位置関係や距離などを記載します。
以前の手術創や瘢痕などがあれば記載します。
アプローチ
骨や関節など目的とする部位へ到達するまでに、どのような組織(筋肉、血管、神経など)が現れ、どの間を分けて入ったのか、また切離したのかなどを詳細に記載しておきましょう。
途中の展開図や横断面でのアプローチ方法などがあればよりわかりやすいでしょう。
この解剖とアプローチについてが若い医師にとって最も大切なところです。
解剖を確認しながら書いていきましょう。
術中所見
手術中の所見として、病的な所見は全て詳細に記載しましょう。
骨折では、転位の方向や神経・血管の状態などについても記載しておきましょう。
術中のポイントとなるところでは、デジタルカメラで撮影し、手術記録として残しておくのもよいでしょう。
手術操作
腫瘍の切除などは、シェーマを用いて切除範囲を示すとよいでしょう。
骨切りや骨接合術などでは、骨だけの模式図を描いた方がわかりやすです。
インプラントを使用した場合は、抜釘や再置換術など再手術時のために、メーカー、機種、サイズなどを詳細に記載しておくとよいでしょう。
また、術中に手術の方針や術式が変更になった場合は、その理由について詳細に記載しておきましょう。
閉創
各層を縫合した糸の種類、太さを記載しておきましょう。
ドレーンを使用していれば、その種類や位置も記載しておくとよいでしょう。
おわりに
以上、今回は手術記録の書き方について紹介しました。
手術記録を書くことは、特に初期研修医や後期研修医といった若手医師にとって非常に重要なプロセスです。手術を頭の中で再現して手術記録を書くことは、その手術を2回経験したことにも匹敵します。
手術だけして手術記録を書かないでいる先生より、手術ごとに手術内容を思い出しながら解剖や術式を確認し、どこがダメだったのか、どうすべきだったのかなどを考えている先生の方が手術の上達が早いのは必然でしょう。
よせやん
手術記録は手術をしたら必ず書かなくてはいけないものですので、どうせ書かなきゃいけないのなら、上手いこと活用して手術上達のための手段として利用しましょう。
参考にして頂けたら幸いです。
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