肉離れの診察と診断|重症度・スポーツ復帰時期を推測するためにもストレッチ痛の確認が大切です!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
今日は前回の肉離れの続きです。前回は肉離れのメカニズムや特徴に関してまとめました。
今回は肉離れの診察・診断に関してまとめていきます。
肉離れの診察・診断において、受傷直後にストレッチ痛を確認することが大切であり、それにより重症度やスポーツ復帰時期をある程度類推していくことが可能です。この記事で、肉離れの診察と診断について知識を整理しておきましょう。
Contents
診察・診断
肉離れの診断には、受傷時の姿勢や動作、外力の大きさなどが影響を与えるため、まず受傷機転や症状の詳細な聴取が必要です。
肉離れを起こした選手は鋭い、力の抜けるような痛みを感じることが多く、選手が実感した感覚は重症度を反映している可能性があります。
「プチツ」「ピリッ」などは軽症例で、「バリッ」「バチン」「ドン」などは腱性部の断裂を疑わせます。( 奥脇透.総合診療.2015)
診察所見では、疼痛として自発痛、圧痛、他動的ストレッチ痛を認めます。
その他の症状として、局所の腫脹や硬結、陥凹を触れることがあります。また、重症になると翌日以降に受傷部周辺に皮下血腫をみることもあります。
他動的ストレッチの評価は重症度を反映するため重要です。
筋の伸展刺激による損傷部の痛みの程度を関節の可動域で評価します。ハムストリングスの肉離れを例にとると、まずは腹臥位にて膝を屈曲させた状態から、徐々に伸展させて痛みの出現を調べます。
重症例では、膝が完全に伸びる前に痛みを訴えます。腹臥位で完全伸展できたら、仰臥位にして膝伸展のまま下肢を挙上(SLR)し、その角度を調べます(図1)。
図1:ハムストリングスの他動的ストレッチ痛の評価
また、自力で関節を動かせるかどうか、特に下肢であれば立位保持や歩行が可能かどうかも重症度を反映します。重症例ほど痛みのために、立位保持や歩行が困難となります。
重症度や部位の判定には、これらの局所症状に加え、超音波検査やMRI検査などが有用であるとされています。
重症度とストレッチ痛
近年、MRI画像により肉離れには3つのタイプがあることがわかってきており、それにより重症度は軽症(Ⅰ型)、中等症(Ⅱ型)、重症(Ⅲ型)に分けられます。(奥脇透.臨床スポーツ.2010)
- Ⅰ型(図2左)は、出血所見のみが認められる軽症型です。
- Ⅱ型(図2中)は、筋腱移行部、特に腱膜の損傷が認められる中等症です。
- Ⅲ型(図2右)、腱性部の断裂や筋腱付着部の引き抜け損傷といった重傷型です。
図:肉離れのMRI像(左よりⅠ型・Ⅱ型・Ⅲ型)
この重症度分類に関しては下の記事で詳細を確認しておくとよいでしょう。
そして、この肉離れの重症度はストレッチ痛を確認することにより類推することができます。
筋腱移行部損傷の程度を最も強く反映しているのがストレッチ痛です。このストレッチ痛の有無によって軽症か否かを見分けることができるのです。
MRIは可能であれば撮像し、損傷型を判断して治療方針を決めます。
- まず受傷直後にストレッチ痛の有無を確認します。
ストレッチ感覚があり、痛みも軽度であればⅠ型(軽症)と判断します。
ストレッチ痛が明らかなものはⅡ型以上を疑います。
- Ⅱ型以上が疑われた場合は、可能であればMRIを撮影します。
MRI画像でⅢ型が強く疑われた場合には手術療法の選択も検討する必要があります。
この重症度分類によりスポーツ復帰時期をある程度知ることができます。
- 軽症(Ⅰ型)は1〜2週でスポーツ復帰が可能となります。
- 中等症(Ⅱ型)は、腱膜の修復に時間を要するため、復帰には1〜3ヶ月かかります。
- 重症(Ⅲ型)は、手術療法を考慮する必要があり、復帰には数ヶ月かかります。
肉離れからのスポーツ復帰についてもっと詳しく知りたい方は下の記事を参考にして下さい。
おわりに
以上、今回は肉離れの診察・診断に関してまとめました。
今日はちょっと時間がないので、ここで終わります。
肉離れをどうやって診察・診断し、重症度やスポーツ復帰時期を把握すればいいのり理解して頂けたでしょうか。
よせやん
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