スポーツ現場での多量の膝関節血腫を認める症例への対応|読者からの質問にお答え
どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
新型コロナウイルス感染症がどんどん広がっていますね・・・。
何であんなタイミングでGo To トラベルキャンペーンとか訳の分からない政策を始めたのか。
ここまで広がってしまうと、最早対応困難ですね・・・。
さて、今日は医学部の学生さんから頂いた質問を取り上げてみようと思います。
今までは進路系の問い合わせ以外はあまり対応してこなかったのですが、今後少しずつ対応していこうかなと思います。
今回はスポーツ現場での対応についてのご質問ですね。
スポーツ現場で多量の膝関節血腫を認める症例に対して、試合復帰させるのか、テーピングするのか副子固定するのか、免荷させるのか、すぐに病院へ救急搬送させるべきなのか。
整形外科スポーツドクターの立場から解説します。
教科書的な対応と実際の対応がどう異なるのかというところは面白いかもしれません。
では、いってみましょう。
よせやん
Contents
医学部生からの質問内容
はじめまして。ブログいつも楽しく拝見しております。
私は、整形外科志望の医学生でして、現在国家試験の過去問を解いています。
以下のような問題を見つけました。医学的なアプローチは解答書に譲るとして、スポーツドクターが実際にベンチにいて試合時にどのような判断をするのか非常に気になりましたので連絡いたしました。よろしければご回答いただければと思います。もちろんブログの記事にて紹介していただいても構いません。よろしくおねがいします。以下問題(90E40 )
21歳の男性。サッカーの試合中に接触転倒し、右膝部に痛みを訴えて救護室に担がれてきた。右膝関節は軽度屈曲位で腫脹があり、明らかな膝蓋跳動がみられた。主力選手であり試合への継続出場を強く望んでいる。
最も適切な処置はどれか。
a 圧迫包帯をして試合に復帰させる。
b テーピングをして試合に復帰させる。
c テーピングをして観戦させる。
d 副子固定をして帰宅安静を指示する。
e 副子固定をして直ちに病院へ搬送する。
引用終わり解答e 膝蓋跳動が水によるものか血液によるものかわからないため。
これはこれで、「国試的には」納得できる解答なのですが、実際の試合の場だと、私は本人の希望も判断して試合に復帰させてしまいそうです。(bに近いスタンス)。よせやん先生の判断、診察のポイントを教えていただければ幸いです。
僕の答えは
正直、選択肢に僕の考えにマッチするものはありません。
自分であれば副子固定して観戦させ、試合が終わり次第、松葉杖免荷で病院を受診させるという選択肢を取ると思います。
ただ、整形外科以外の医師の場合や医師でない方が対応している場合は、間違いなく「e」が正解になるかと思います。
整形外科医としても、この選択肢の中から選ぶとしたら「e」になるでしょう。
よせやん
解説すると
詳しく考えていきましょう。
まず、明らかな膝蓋跳動がある(関節液が多量に溜まっている)時点で、ACL/PCL断裂もしくは関節内骨折が疑われます。
半月板損傷や軟骨損傷だけであれば、そこまでの血腫はたまりません。
解説には水によるものか血液によるものかわからないためと書かれているようですが、転倒受傷してから生じたものであれば、まず血液と考えるのが普通でしょう。
この時点で、試合に復帰させるという選択肢はありません。
でも、だからと言って直ちに病院に搬送する必要性はないと思います。
僕がこの外傷で直ちに病院に搬送する判断をするとしたら、膝関節脱臼が疑われる場合、開放骨折を認める場合でしょうね。これらの場合は流石にすぐに救急要請すると思います。
脱臼は可及的速やかに整復する必要がありますし、膝窩動脈損傷や神経損傷を合併しているケースがあり得ます。
また、開放骨折の場合も可及的速やかに洗浄・デブリドマンをすることが肝要です。
これらの理由から、こういったケースでは副子固定をして直ちに病院へ搬送します。
今回のケースでは、関節血腫は多量に溜まっておりACL/PCL断裂もしくは関節内骨折が疑われる訳ですが、脱臼を疑うような明らかな変形や開放骨折を疑う所見はありません。
そうであれば、今すぐに病院を受診させる必要はありませんので、選手が希望すれば試合を観戦させるのは問題ないように思います。
ただし、ACL/PCL断裂もしくは関節内骨折が疑われるので、テーピングでは不十分であり副子固定は必須です。
さらに言うと、骨折の可能性もある訳ですから、免荷もするべきだと思います。
きちんとドクターバッグと一緒に松葉杖を持って行っている場合は渡して免荷する、持って行っていない場合は他人の肩を借りるなどで免荷させます。
そして、試合が終わり次第、病院を受診させ、骨折の有無を確認しておくことになると思います。
おわりに
以上、今回は読者の方から頂いた質問にお答えし、スポーツ現場で多量の膝関節血腫を認める症例への対応について解説しました。
今までブログで頂いた質問を取り上げたことはありませんが、質問にお答えするのも意外に面白いかもしれませんね。
今後また質問を頂いたものに関しては、取り上げてみようと思います。
何か聞きたいことがあれば、問い合わせからご連絡ください。
とういうか、普通のブログ記事を書いたのは久しぶりだな。笑
しばらく記事を書いていなかったら、また記事を書きたい衝動に駆られてきた気がします。
この気持ちが偽物でなければ、継続して記事を書いていこうと思います。
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