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肉離れにおける手術的治療|手術適応を覚えておこう!術後成績も紹介!

 
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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること! 仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい! 自分の日々の勉強のため、また同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思い、スポーツ医学、整形外科、資産形成などについてブログを書いています。
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どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

 

今日は引っ越し業者さんに下見にきてもらったり、赴任予定の病院の事務手続きを行ったりしていました。

着々と転勤の日が近づいてきていることを実感し始めました。

それまでにやるべきことだけしっかりと終わらせておかなければいけませんね。

 

さて、今日は肉離れについてさらに煮詰めていきましょう。

今回は、肉離れの手術的治療についてお話しします。

 

肉離れの治療法は慣例的に保存的治療が選択されることが多いですが、肉離れの中には、腱の付着部での断裂や引き抜け(裂離)損傷も存在すると考えられ、それらの場合には手術療法についても検討する必要があります。

よせやん

というわけで、今日は肉離れ診療の中でも稀ではありますが、知識は持っておくべき手術的治療の適応や術後成績まとめていきます。

Contents

 肉離れのⅢ型損傷

奥脇の分類を覚えていますか?

今回も奥脇の分類に関する内容が出てきますので、忘れている方は先にそちらを復習して下さい。

 

Ⅲ型損傷は、腱断裂または腱付着部での裂離損傷でしたね(図1)。

肉離れ 病態
図1:肉離れの病態

 

奥脇の報告によれば、トップアスリートを対象とした肉離れの調査では、手術療法を考慮すべき筋・腱付着部損傷(Ⅲ型)の発生頻度は全体の約8%であり、必ずしも頻度は高くはありません。

しかし、

Ⅲ型の競技復帰までに要する期間は20±4.9週であり、Ⅰ型(1.5±0.7週)、Ⅱ型(5.6±2.6週)に比べ有意に長期間を要するため、Ⅲ型を受傷した競技者にとっては深刻な問題だと言えます。( 奥脇 透.日本臨床スポーツ医学会誌.2009 )

 

肉離れの手術適応

では、次に肉離れの手術適応についてまとめておきましょう。

 

MRI上で筋・腱の連続性が完全に断たれ、広範な血腫とともに、筋の張力や損傷時の遠心性張力により、断端の短縮が確認できるような場合、

特に関節を越えて短縮が生じた場合では、局所において自然経過で治癒反応が起こっても、有意な筋収縮力の低下や機能障害が生じることが予想されます。

 

このため、このような損傷では手術的治療の選択を検討する必要があります。

また、運動時に損傷部位での疼痛が遷延するような症例も手術的治療を考慮します(図2)。

 

肉離れ 分類 治療
図2:肉離れの治療法の選択( 中嶋 耕平.MB Orthop. 2010より引用 )

 

手術的治療の適応を検討すべき代表的な損傷としては、以下のものがあります。

肉離れ手術適応
  • 奥脇の分類Ⅲ型損傷
  • 運動時に損傷部位での疼痛が遷延

  • アキレス腱断裂(下腿三頭筋遠位筋腱移行部損傷)
  • 大胸筋遠位付着部損傷
  • ハムストリングス近位付着部損傷
  • 大腿四頭筋遠位付着部損傷
  • 上腕三頭筋遠位付着部損傷 

 

これらに関しては、いずれの報告でも手術的治療の有用性が報告されています。
( Blasier RB, et al. Am J Sports Med. 1990 )
( Sallay PI, et al. Am J Sports Med. 1996 )
( van Riet RP. J Bone Joint Surg Am. 2003 )
( Blackmore SM. J Hand Ther. 2006 )

手術的治療の成績

意外にも、ハムストリング近位付着部の裂離損傷の手術的治療に関しては、比較的歴史が浅く、1988年の石川らの報告が初めてです。( Ishikawa K, et al. Clin Orthop Relat Res. 1988 )

MRIなどによる画像診断技術が普及した1990年以降から本損傷に対する治療法の報告が散見され、2000年以降は比較的まとまった症例数の治療成績や、陳旧例に対する手術例についての報告も増加してきています。

 

2002年にKlingeleらは11例(平均年齢41.5歳)のハムストリング近位付着部裂離損傷(新鮮例7例、陳旧例4例)の術後成績を報告し、全症例のうち91%が満足のいく結果を得られ、術後1年以上での筋力評価でも85.3%の筋力回復が得られたことを報告しています。( Klingele KE, et al. Am J Sports Med. 2002 )

 

また、2008年のSarimoらによる41例(平均年齢46歳)の術後成績に関する報告では、70.7%が術後成績良好であり、受傷後3ヶ月以内に手術を行った群は、術後3〜6ヶ月以内の手術群、術後6〜9ヶ月以内の手術群のいずれの群よりも有意に術後成績不良例が少なく、受傷後の手術時期が治療成績に影響していると述べています。( Sarimo J, et al. Am J Sports Med. 2008 )

 おわりに

以上、今回は肉離れの手術療法について、奥脇の分類のⅢ型損傷を復習しながら、手術適応や手術的治療の歴史・成績についてまとめました。

 

肉離れの診療で、Ⅲ型損傷や運動時に損傷部位での疼痛が遷延するような場合、

若年者やアスリートのように求める活動度の高い者には、手術的治療を行うことが望ましく、さらに手術時期が早い方が術後成績がよいと言えます。

 

もちろん、そのためには受傷後早期に適切な診断がなされる必要があることは言うまでもありませんね。

明日はこの続きで、肉離れの手術的治療の実際とリハビリテーションなどの後療法についてお話しする予定です。

 

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