サッカーにおける脳震盪の対応|選手としての道を閉ざさないために
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
先日、院内でインフルエンザワクチンを打たされました。
その翌日から倦怠感・頭痛・咳嗽などが出現し、今日は発熱と倦怠感に悩まされています。
明らかにインフルエンザワクチンの影響かと思われます。
明日のサッカーの県リーグに参加できるのかも微妙で困っております…。
さて、今日はサッカーにおける脳震盪の対応についてまとめます。
近年、脳振盪に対して慎重な対応が世界中で求められるようになってきています。
それは、脳震盪あるいはそれに準ずる軽症の頭部外傷を受け、数日から数週間後に2回目の頭部外傷を負い、致命的な膿腫長をきたすセカンドインパクト症候群を生じたり、脳振盪を複数回生じることにより記名力障害や集中力の低下など、社会生活にも支障をきたすような高次脳機能障害が生じる可能性があるからです。
有望なサッカー選手が、このような脳振盪の後遺症を生じて、サッカー選手としての輝かしい道を閉ざさないためには脳震盪に対してしっかりした対応をすることが必要です。
サッカー関係者の方は、サッカーにおける脳震盪の対応をしっかりと知っておいて下さい。
よせやん
Contents
サッカーと脳震盪
サッカーにおいて、頭部外傷が意外と多いことをご存知でしょうか。
少し古いデータではありますが、
この傾向はこの年だけ特有の結果ではなく、Jリーグができてからの20年間、毎年同じような結果となっていることは以前、紹介しましたね。
サッカーというと、下肢の外傷ばかりと思われるかもしれませんが、意外に頭部外傷が多いのです。
この頭部外傷の中で最多のものが脳震盪なのです。
サッカー関係者の方は、サッカーにおける脳震盪の対応をしっかりと知っておく必要性がおわかり頂けましたでしょうか。
日本サッカー協会(JFA)は、Jリーグだけでなくサッカー界のあらゆる方に知ってもらうために、2014年11月17日、「サッカーにおける脳振盪に対する指針」を作成しています。
これはJリーグだけでなく、日本でサッカーを行っているすべての人に、指針として使用していただけるものになっています。
というわけで、この「サッカーにおける脳振盪に対する指針」を元に、サッカーにおける脳震盪の対応を紹介していきます。
ピッチ上での対応
まず、ピッチ上での対応についてです。
ピッチ上で頭部外傷を受傷した可能性がある選手に対する対応は、以下の通りの順序で行います。
①呼吸、循環動態のチェックを行います。
②意識状態の簡単な確認後、担架などでタッチラインへ移動させましょう。
この際には、頸部の安静には十分に注意しましょう。
③簡易的な脳振盪診断ツールを用いて、脳振盪か否かの判断をします。
これは、チームドクターによる診断が望ましいが、不在の場合にはアスレチックトレーナーなどが代行します。
この脳震盪か否かの判断については、下の記事でまとめています。
④診断ツールで脳振盪が疑われれば、試合・練習から退かせます。
短時間のうちに回復したとしても、試合復帰は避けるべきです。
特に、最後の④が大切です!!
脳震盪と診断が確定したらではなく、「疑われたら」です。
よせやん
サッカー日本代表およびJリーグ(トップチーム)の場合
2016年2月18日にJFA理事会にて、サッカー日本代表およびJリーグ(トップチーム)の試合における「競技中、選手に脳振盪の疑いが生じた場合の対応」が決定されました。
これは、2016シーズンより導入されています。
こちらに関しても紹介しておきます。
サッカー日本代表およびJリーグ(トップチーム)の試合における対応
①競技中、選手が頭頸部を強く打ったと主審が判断した場合、主審はすみやかに当該選手のチームドクターをピッチ内に呼び、チームドクターは診断をする。主審の判断、またはチームドクターからの要請を受けた主審からの合図により、ハードボードの担架を適宜ピッチに入れる。
②チームドクターは、当該選手に脳振盪の疑いがある場合、自分の拳を頭の上に乗せ、主審に「脳振盪の診断を始める」旨伝える。
③それにともない、主審は時間の計測を始め、最長3分間を診断の時間として認める。
④チームドクターは、脳振盪評価用紙(Pocket SCAT2)等を使用するなどし、適切な診断を行う。
⑤早くに診断が終わった場合には、その時点で試合再開とする。3分間を超えても、診断が終わらなかった場合、主審は当該選手を一旦ピッチ外に出し、プレーを再開させ、チームドクターは引き続きピッチ外で診断を行う。
⑥主審は、チームドクターの許可がある場合に限り、選手が競技に復帰することを認める。
⑦主審は、脳振盪の診断のために使用された時間を把握し、その時間を通常のアディショナルタイムに追加する。
24時間以内の対応
続いて、受傷後24時間以内の選手への対応についてです。
脳振盪が疑われた場合、短時間で症状が回復した場合も含めて、受傷後24時間以内は以下のような手順で選手に対応しましょう。
②受傷時に数秒単位以上の意識消失や健忘があった場合には、たとえ意識が正常に復したと思われても病院へ搬送します。
③頭痛、吐き気、嘔吐などが新たに出現してきたり、一向に改善しない、あるいは悪化するようであれば、専門施設へ搬送します。これは脳振盪に併発し得る外傷性頭蓋内出血の可能性を考慮してのことです。
④経過が良好のときは帰宅を許可しますが、24時間以内は単独での生活は避け、のちに頭痛、吐き気などが生じた場合には即座に病院を受診するように指導します。
復帰へのプログラム
最後に、復帰プログラムについてです。
サッカーも基本的に他の種目と復帰のプログラムは同じです。
該当選手の全面協力の下で徐々に負荷を加える“段階的競技復帰(Graduated Return To Play: GRTP)”させるのが望ましいのでしたね。
上の記事で、細かくまとめていますが、念のため簡単に再掲しておきます。
脳振盪と診断あるいは疑われた場合には、すぐに練習に復帰せず、表1のごとくの段階的プログラムを組んで復帰をします。
①まず、十分な休息により症状がないことの確認の後に第2ステージに移行し、徐々にステージをあげ、ステージ6を試合復帰とします。
各ステージには最低1日を費やすこととします。
②各ステージにおいて、脳振盪関連の症状が出現した場合には、24時間の休息をとり(ステージ1)、症状が生じていなかったステージから再開します。
③判断に迷う場合には、復帰へのプログラムの早い時期に専門医を受診することが望ましいです。
つまり、どれだけ早く復帰しても試合復帰までには1週間はかかるということです!
よせやん
冒頭でも述べましたが、軽い頭部外傷だからといってすぐにスポーツ復帰させることは、セカンドインパクト症候群や高次脳機能障害などの後遺症に繋がるため大変危険です。
必ず、このように段階的に競技に復帰させるようにしてください。
まとめ
以上、今回はサッカーにおける脳震盪の対応についてまとめました。
有望なサッカー選手が、脳振盪の後遺症を生じて、サッカー選手としての輝かしい道を閉ざさないためには、脳震盪に対してしっかりした対応をすることが必要です。
サッカー関係者の方は、サッカーにおける脳震盪の対応をしっかりと知っておいて下さい。また、その知識を関係者全員でシェアしておいて頂けると幸いです。
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