全身CT検査(Trauma Pan-scan)の読影方法とその所見による治療方針

どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
先週末は土日は土曜日は待機でしたが、日曜日は仕事もサッカーもないというかなりレアな1日だったのですが、1日中遊んで過ごしてしまいました。まあかなりリフレッシュできたのでそれはよかったのですが。
さて、本日は外傷診療における全身CT検査として知っておくべきTrauma Pan-scanの読影方法についての続きです。
前回、Trauma Pan-scanの読影の第1段階であるFACTについて、何が重要なのか、そして実際にどうやって読影するのかまとめたのでしたね。
本日はTrauma Pan-scan読影の続き、そして、その所見と治療方針についてお話ししようと思います。
この記事の内容は、JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)に準じてまとめています。現在、日本で行われている救急治療は基本的にこのJATECに準じて行われています。
Contents
読影の第2段階
読影の第1段階(FACT)だけでは当然十分な判断を下すことはできません。
前回お話ししたようにFACTでは「迅速性」が基本とされていますが、読影の第2段階では「適切性」が要求されます。
FACTの結果から、患者を手術室に搬送せざるを得ない場合でも、FACTに引き続き、読影の第2段階を行います。
FACTが陽性の場合には、緊急処置の指示に専念し、読影は他の者に依頼します。一方、FACTが陰性の場合は、画像を丹念に読影しましょう。
FACTは厚めのスライスでも構いませんが、読影の第2段階では、小さな損傷や損傷形態なども評価するため、薄めのスライス(1〜3mm)での読影が必須です。
さらにMPR像の読影も必須であり、常日頃から冠状断像や矢状断像に慣れておく必要があります。
画像を解釈する順序は、血腫、血管外漏出の確認、その他です。
血腫と血管外漏出
血腫と血管外漏出の見逃してはならない重要な所見として、以下のものがあります。
- 頭部:今後拡大するおそれがある少量の急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫
- 頸部:気道閉塞につながり得る喉頭損傷
- 胸部:少量の血胸(血胸はフリースペースに広がるため少量の血管外漏出が大量出血につながる可能性があります)や胸骨骨折に伴う周囲の血腫
- 腹部:少量の腹腔内出血と出血源と考えられる臓器損傷
- 四肢:肩や大腿などの骨軟部組織の損傷や血腫・血管外漏出
血管外漏出像の評価では、動脈優位相と平衡相を比較することで、活動性出血の原因となる血管部位の推定が可能となります。
その他
具体的なその他の観察項目をあげると以下のようになります。
- 頭部:外傷性くも膜下出血、頭蓋骨骨折、気脳症の有無
- 顔面:口腔内大量出血を伴うような顔面骨骨折の有無
- 頚椎:椎骨動脈損傷(閉塞)を伴うような脊椎骨折の有無
- 胸部:肺挫傷の有無
- 腹部骨盤腔:腹腔内遊離ガス、骨盤骨折の有無
読影の第3段階
初回読影での見落としの頻度は50〜70%という報告もあり、正確な再読影をすることが重要です。
この際、第三者的に先入観なく、読影することが求められます。初診医は患者を診療しながら画像を見ているため、症状を訴えない部位に関しては損傷を見逃しやすくなってしまいます。
また読影の第1段階(FACT)で陽性となった所見にとらわれて、読影の第2段階がおろそかになる可能性もあるでしょう。受傷形態から損傷部位を類推して読影することは重要ですが、
先入観を除いた状態で読影することが大切です。
読影の時期に関しては、手術室から帰ってきた後や翌診療日など初療の急性期が落ち着いた段階で、放射線科医など画像読影に長けた者が行うのがよいでしょう。この際は、CTだけでなく、単純X線検査なども含めて撮影した画像を再度読影します。
Trauma Pan-scanの所見と治療方針
最後にTrauma Pan-scanの所見と治療方針についてまとめておきます。
TAE(Transcatheter arterial embolizaiopn)とは、経カテーテル動脈塞栓術のことです。
これらの所見を認めた場合は、図のような治療方針となる可能性が高いので、専門科にすぐにコンサルとしましょう。
おわりに
以上、今回は外傷診療における全身CT検査(Trauma Pan-scan)の読影方法とその所見と治療方針についてまとめました。
高エネルギー外傷の患者さんにTrauma Pan-scanを撮影したものの、それをきちんと読影することができなくては意味がありません。
きちんとというのは、丁寧に見逃しなくゆっくりと読影するということではなく、緊急治療を要する所見の有無は大雑把にでもいいから素早く把握すること、そして、それがなかった場合は見逃しがないように治療を要する所見を探していくということですね。
助かる可能性のある患者さんを助けるためにもきちんと外傷について勉強しておきましょう。
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