全身CT検査(Trauma Pan-scan)の読影方法|読影の第1段階FACTとは?
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
本日は先日の外傷診療における全身CT検査として知っておくべきTrauma Pan-scanの続きで、その読影方法について解説しようと思います。
まずはTrauma Pan-scanの読影の第1段階であるFACTについて、何が重要なのか、そして実際にどうやってやるのかまとめてみました。
この記事の内容は、JATEC(Japan Advanced Trauma Evaluation and Care)に準じてまとめています。
現在、日本で行われている救急治療は基本的にこのJATECに準じて行われています。
Contents
Trauma Pan-scanの読影
では、さっそく始めていきましょう。
CTは基本的にsecondary surveyで施行するものであり、基本的には気道(A)・呼吸(B)・循環(C)はすでに安定しているはずです。
外傷診療におけるABCDEはとても大切ですので、自身のない方は下の記事で確認してください。
しかし、撮影後に循環動態が不安定化する症例もあり、迅速に治療に結びつけるための効率的な読影が必要となります。
その一つの方法として、JATECでは3段階で読影する方法を推奨しています。
- 読影の第1段階
- 読影の第2段階
- 読影の第3段階
読影の第1段階(FACT)
CTを撮影しても「迅速」かつ「適切」に読影しなければ、患者さんの予後改善には繋がりません。
「迅速」というのは、患者さんの治療の緊急性を判断することです。
読影の第1段階では、直ちに緊急処置を要する項目だけを3分以内に評価します。
治療の緊急度が高いのは、primary surveyで検出すべき生理学的徴候に影響を及ぼし得る外傷です。
具体的には、以下のようなものです。
- 気道呼吸に障害を及ぼし得る損傷(A・Bの異常)
- 出血性ショックとなっていた原因(もしくは出血性ショックになり得る可能性)(Cの異常)
- 緊急減圧開頭術の必要性(Dの異常)
これをまず「迅速」に判断する必要があります。
これはCTにおけるFAST( Focused Assessment with Sonography Trauma)に相当するものであり、必要な部位に焦点を絞って読影する(focused assessment)ものです。
つまり、FACTとは何なのかと言うと、
FACTの実際
では、実際にFACTをどう行っていけばいいのか説明していきます。
まずわかりやすく図でお示ししましょう。
まず、頭部では緊急減圧開頭術の必要性を判断します。
次に、大動脈損傷があると循環動態に急激な変化をきたし得るためこれを確認し、呼吸に影響を及ぼし得る広範な肺挫傷の有無、閉塞性ショックに今後発展し得る気胸や心嚢血腫を確認します。
広範な肺挫傷の見逃しは緊急開胸術へのタイミングを逸することへと繋がります。
さらに循環に影響を及ぼし得る血胸、腹腔内出血、後腹膜血腫を確認します。
また、腸間膜内の血腫が遊離腹腔内に広がれば容易に出血性ショックに陥ることから、腸間膜内血腫も確認しておきましょう。
ここで注意すべきは、血管外漏出や仮性動脈瘤の有無にとらわれ過ぎないことです。
これらを検索しようとして、詳細に読影すると時間を要してしまいます。
FACTは患者さんがCT台から移動する前位に把握するくらいの気持ちで3分以内に評価するようにしましょう。
したがって、
まずは血腫の有無を判断するのが肝要であり、大切なのは時間を費やさないことです。
また、FACTを行うときの手順を決めておくことが大切です。
図の左の①→⑥をルーチーンで行うようにするといいかと思います。
最初はこれを3分で見るのは難しいように思うかもしれませんが、手順をルーチン化してしまうとそのスピードは格段に早くなります。
この通りでなくてもいいですが、自分のやり方を決めてしまうとよいでしょう。
おわりに
以上、今回は外傷診療における全身CT検査(Trauma Pan-scan)の読影方法について、まずは読影の第1段階であるFACTについてお話ししました。
今回紹介した読影の第1段階(FACT)だけでは、当然十分な判断を下すことはできません。
FACTでは「迅速性」が基本とされていますが、読影の第2段階では「適切性」、読影の第3段階では「確認」が基本となります。
長くなってきてしまったので、この読影の第2段階、読影の第3段階については次回お話しします。
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