頚椎カラーの解除基準をより精密に|頚椎のレントゲンは必要?文献的考察
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
昨日は夜10時半まで仕事をし、その後、1時くらいまで社会人フットサルの練習に行っていました。
家に帰ってシャワーを浴びようと思ってお風呂の暖房をつけ、あったまるまで待機していたらそのまま寝てしまいました。
あるあるですね。
今日はそんな中、朝から外傷と関節鏡の手術をしていました。
なかなか大変な手術で非常に疲れました。
さて、今日は昨日まとめた救急搬送された患者さんの頚椎カラーなど頚椎固定の解除基準についての補足をしていきます。
今回は、より精密な頚椎固定解除基準とそれに伴う問題点、また、頚椎X線が不要と判断するための基準について文献より引用して紹介します。
Contents
より精密な頚椎固定解除基準
頚椎カラーなどの頚椎固定の解除の基準は以下のようでした。
これを見て頂くと、正確な所見がとれない場合(多くは意識障害がある場合)には、頚椎固定解除は神経学的検査の困難性によりかなり制限されてしまうことがわかるかと思います。
鈍的外傷患者における不安定性脊椎損傷の発生は2.4%、意識障害がある患者の場合は4.6%〜34.4%とされています。( Neifeld GL, et al. J Emerg Med. 1988 )
( Barba CA, et al. J Trauma. 2001 )
( Berne JD, et al. J Trauma. 1999 )
また、X線単純写真やCTでは描出できない靭帯損傷に起因する潜在的な不安定性脊椎の発生率は0.1%〜0.5%と低いものの、見逃された場合は神経障害の出現や悪化を招く恐れがあります。
( Davis JW, et al. J Trauma. 2001 )
( Brooks RA, et al. J Trauma. 2001 )
このため、より精密な頚椎固定解除基準には以下のようなオプションが考えられます。
- 十分に意識が回復するまで頚椎固定を続ける。
- MRI検査を行う。
- 全頚椎CTのみで、固定を解除する。
しかし、これらにはそれぞれ問題点があります。
その問題点に関して順に紹介していきます。
頚椎カラーの合併症
まず、十分に意識が回復するまで頚椎固定を続けることによる合併症を紹介します。
意識障害が継続する場合や集中治療が長期に必要な患者においては、平均6日間の頚椎カラー装着で44%に褥瘡の発生が見られたとの報告があります。( Davis JW, et al. J Trauma. 1995 )
また、半硬式の頚椎固定を行うことにより頭部外傷患者では頭蓋内圧を上昇させる危険性も出てきます。( Hunt K, et al. Anaesthesia. 2001 )
そして、人工呼吸器装着日数や集中治療室の在室日数の増加、およびせん妄と肺炎の発生率も高まることがわかっています。
( Ackland HM, et al. Spine. 2007 )
( Stelfox HT, et al. J Trauma. 2007 )
MRI検査
続いて、MRI検査についてです。
MRI検査は、頚椎に負担をかけることなく鋭敏に軟部組織損傷を診断することができます。
しかし、頚椎の靭帯損傷を診断するにあたって、感度は100%であるものの、軟部組織損傷の程度と比例しないため、偽陽性の比率が高くなってしまうという欠点があります。
また、呼吸管理を必要とする患者でMRI検査を行うことは、特別な非強磁性の呼吸器が必要となり、臨床的には非常に困難な仕事となります。
MRIは偽陽性率が高く、コストや普及率も考慮すると、MRIの適応にはまだコンセンサスが得られていないのが実際のところです。
全頚椎に対するCT検査
最後に、全頚椎に対するCT検査についてです。
全頚椎のaxial像にMPR法による矢状断、冠状断像を加えることで、重大な脊椎損傷をほぼ確実に除外することが可能であり、意識障害患者や多発外傷患者における頚椎損傷のスクリーニング検査として推奨する報告も多くなされています。
( Holmes JF, et al. J Trauma. 2005 )
( Mathen R, et al. J Trauma. 2007 )
( Brown CVR, et al. J Trauma. 2005 )
適応に関してはまた後日紹介しようと思います。
海外の頚椎X線撮影の適応に関するclinical decision rules
最後に、頚椎X線が不要と判断するための基準について紹介しようと思います。
アメリカのNational Emergency X-Radiography Utilization Study(NEXUS)では、いかに無駄なX線撮影を省略するかに視点が置かれています。
NEXUSでは以下の5項目をチェックすることで頚椎X線は不要としています。
- 頚椎正中後部の圧痛なし
- 意識障害なし
- 中毒・アルコールなし
- 頚髄損傷を疑わせる神経学的所見なし
- 他部位の激痛なし
( Hoffman JR, et al. N Engl J Med. 2000 )
( Panacek EA, et al. Ann Emerg Med. 2001 )
確かに、交通事故で搬送されてきた患者さんは頚椎カラーが着用されていることもあり、頚椎X線を必ず撮影しなければいけないと思い込んでいる研修医がいました。
よせやん
この頚椎X線が不要と判断するための基準も知っておくとよいでしょう。
おわりに
以上、今回はより精密な頚椎固定解除基準とそれに伴う問題点、また、頚椎X線が不要と判断するための基準について文献を元に紹介しました。
これで、救急患者さんの頚椎カラーに対する考え方、頚椎X線が不要と判断する基準、全脊椎CTやMRIのメリットと問題点などに関してご理解頂けたのではないでしょうか。
今後も救急外傷の対応についていろいろまとめていこうと思います。
参考になったらいいね!、シェアして頂けると救急外傷の記事も増えるかと思います。笑
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