手術の手洗いにブラシは必要か?現在の医療界での常識わかってますか?
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
さて、外科系医師の皆さんは手術のときにブラシを使って手洗いをしていますか?
今日は、
手術の手洗いにブラシが必要か?
ということについてお話ししようと思います。
Contents
手術時の手洗いの歴史
まず最初に手術のときの手洗いの歴史について簡単にお話ししておこうと思います。
医療における手術時の手洗いの歴史は、まだPasteurによる細菌学の概念のない1840年代に始まりました。
当時は、周産期死亡の重要な原因であった産褥熱の発症率が約30%と非常に高い時代でした。
Semmelweisが、塩素水とブラシを用いて手洗いをすることで、産褥熱の発症率が2〜3%にまで低下することを示したのが最初でした。
しかし、これは実は広く受け入れられることはありませんでした。
その後、細菌学が広まったこともあって、ListerがSemmelweisの手洗いを再評価して外科学に取り込んだことで一般的なものとして定着したと言われています。
それから160年の時を経て、感染制御の環境は大きく変遷し、2000年代に手洗いの方法は初めて大きく変化したのです。
現在の手洗い方法
では、現在の手洗いの方法はどのように行うのがスタンダードなのでしょうか。
従来のブラシを用いる手洗いの方法をスクラブ法といいます。
これに対して、ブラシを使わずに擦式消毒用アルコール製剤を手指から前腕に十分に擦り込むラビング法といいます。
これが現在、推奨されている方法です。
スクラブ法とラビング法の比較により、消毒効果に差がないことと手術部位感染(surgical site infection:SSI)の発症率に差がないことが2000年以降いくつもの論文で示されており、もはや医学界の常識となっています。
(小林寛伊. LISTER CLUB学術集会記録. 2003)
(Parienti JJ, et al. JAMA. 2002)
(深田民人. 日外感染症会誌. 2006)
(Palmer JS. Urology. 2006)
さらに上の論文では、
ことが指摘されています。
現在では、これらのことは医療現場に広く受け入れられている状況であると言われていますが、実臨床ではブラシを用いてゴシゴシと長時間手洗いをしている外科系医師がまだまだ多くいるように思います。
昔の知識のまま臨床をしており、知識がupdateされていないのでしょう。
手洗い方法の比較
現在、推奨されている手術時の手洗い方法には、以下の方法があります。
- ラビング法:アルコール配合手指消毒薬を手指から前腕に十分に擦り込む方法
- スクラビング法:抗菌性スクラブ製剤による指先のみブラシを使用したもみ洗いにアルコール擦式製剤を併用する方法
- 石鹸と流水による予備洗浄の後に、アルコール擦式製剤を使用する方法
この3つの方法であれば、いずれの方法でもよいとされています。
(Parienti JJ, et al. JAMA. 2002)
(Rotter ML. J Hosp Infect. 2001)
手洗いに使用する薬剤
最後に、手洗いに使用する薬剤についても簡単にお話ししておきます。
手洗いに使用されている抗菌性スクラブ製剤には、以下の2つがあります。
- 4%クロルヘキシジングルコン酸塩製剤
- 7.5%ポピンヨード製剤
これらを比較すると、抗菌スペクトルはポピンヨードの方が広く、広範囲の微生物に効果を示しますが、クロルヘキシジングルコン酸塩は皮膚と強い親和性があるため、持続性に優れていることが報告されています。
(Larson EL, et al. Am J Infact Control. 1998)
(Larson EL, et al. Am J Infact Control. 1995)
おわりに
以上、今回は手術の手洗いにおけるブラシが必要性についてお話ししました。
現在では、この記事で書いたことは10年以上前から言われている医療界の常識といってもいいものですが、先ほど言ったように実臨床ではブラシを用いてゴシゴシと長時間手洗いをしている外科系医師がまだまだ多くいるのが実情だと思います。
医療関係者は常に知識がupdateして、患者さんにとって不利益のない治療を行いたいですね。
自分も気をつけます。
よせやん
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