アキレス腱断裂の治療方法に関する最新の考え方|保存療法と手術療法はどちらが優れているか?
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日は昨日の続きでアキレス腱断裂の治療は保存療法と手術療法のどちらが優れているのか?!ということに関してお話ししようかと思います。
今回も第42回日本足の外科学会の「アキレス腱断裂の保存療法VS手術療法」というディベートで聞いた内容を元に書いていきますので、文献の内容まではメモできなかったため記載していませんが、ここで述べる内容は基本的に信頼して頂いていいかと思います。
Contents
アキレス腱断裂の治療に対する今までの考え方
まず、アキレス腱断裂の治療に対する今までの考え方を復習しておきます。
アキレス腱の治療法については以前に下の記事でお話ししました。
一般的にアキレス腱断裂の治療法には保存療法と手術療法があり、断裂早期に治療を行えばいずれの治療を選択しても6ヶ月後の経過は変わらないと言われています。
しかし、それぞれの治療にはメリットとデメリットがあり、これらを理解した上で治療方法を決定する必要があります。
保存療法
まず、保存療法についてです。
メリット
- 手術をしないでよい
- 感染率が低い
デメリット
- 再断裂率が高い
- 社会復帰・スポーツ復帰が遅い
手術療法
続いて、手術療法です。
メリット
- 再断裂率が低い
- 社会復帰・スポーツ復帰が早い
デメリット
- 感染率が高い
- 手術をしなければいけない
というように、保存療法、手術療法にそれぞれメリット、デメリットがあります。
今までのこういった考え方を知ってもらった上で新しい考え方について確認してもらえるといいかと思います。
よせやん
アキレス腱断裂の治療に対する新しい考え方
では、アキレス腱断裂に治療に関する新しい知見を紹介していきます。
再断裂率
まずは、再断裂率についてです。
これは昨日お話ししたように保存療法と手術療法の再断裂率に差はないのでしたね。
こちらに関しては、前回の記事で詳しくまとめていますのでそちらを参照してください。
復帰期間
続いて、仕事復帰とスポーツ復帰までの期間についてです。
スポーツ復帰までの期間については以前にこちらの記事でまとめています。
では、現在の考え方はどうなのかというと、
仕事復帰は手術療法の方が有意に早いが、スポーツ復帰には差がないというのが現在の考え方です。
仕事復帰に関しては、手術療法の方が16〜19日早いと報告されていますが、スポーツ復帰期間に関しては両群に差はなく、平均5ヶ月ほどとなっています。
筋力回復
最後に、受傷後の筋力回復に要する時間についてです。
結論から言うと、筋力回復については手術療法が有意に優れています。
というのが現在の足の外科学会のコンセンサスです。
保存療法vs手術療法
では、以上を踏まえて、アキレス腱断裂に対する治療は保存療法と手術療法のどちらがいいのでしょうか?
今までの僕は、アキレス腱断裂を受傷する30〜40代の患者さんやアスリートにとっては早期社会復帰、スポーツ復帰が重要であると思っていたし、再断裂を予防するためにも基本的に手術療法寄りに患者さんにお話をしてをどちらの治療法にするか決めてもらっていました。
日本足の外科学会のディベートで、参加されていた先生が保存派か手術派かという挙手でのアンケートがありましたが、今までは手術派が大多数であったのは間違いなさそうです。
しかし、最近ではアメリカやヨーロッパでは手術療法よりも保存療法の方が増えてきているというデータも示されてきており、もしかすると日本でも今後は保存療法の方が多くなってくる可能性はあると思います。
じゃあ、現在の僕はどう考えているか。
僕は再断裂率に差がないとしても、基本的には早期仕事復帰・社会復帰が望める手術療法をお勧めしたいなと思います。
スポーツ復帰期間はどちらもでも差がないことが示されてはいますが、復帰後のパフォーマンスを考えると筋力回復は非常に重要な要素だと思うので、特にアスリートには筋力回復に優れている手術療法をお勧めしようと思います。
よせやん
さらに、外来でのMRI検査やエコー検査で腱断端が寄らない場合は保存療法だと外固定の期間が長くなり治療全体の期間も長くなってしまうため、この場合も手術療法を勧めるべきではないかと思います。
ちなみに、手術療法のデメリットは感染率とは言われていて、海外の文献では感染率は手術療法で23%、保存療法で1%なんてデータもありますが、僕は未だかつてアキレス腱の手術をして感染した患者さんに出会ったことはありません。(自分の患者さんも周りの先生の患者さんも含めて)
なので、今の僕の意見をまとめると以下のようになります。
- アスリートには筋力回復に優れる手術療法
- 早期仕事復帰・早期社会復帰を望む患者さんには手術療法
- MRI・エコーで腱断端が寄らない患者さんには手術療法
- コントロール不良の糖尿病患者さんなど感染リスクの高い患者さんには保存療法
- 手術がどうしても嫌という患者さんには保存療法
ただ実際には、患者さんに手術療法・保存療法のそれぞれのメリット・デメリットをきちんとお話した上で患者さんにどちらの治療法がいいかを選んでもらうべきであると思います。
どちらの治療法を選択するにせよ、それぞれのメリット・デメリットはきちんと知った上で選択することが大切ですので、特に患者さんに説明する医療関係者は常に知識をup dateしておきましょう。
よせやん
おわりに
以上、今回はアキレス腱断裂の治療は保存療法と手術療法のどちらが優れているのか?!ということに関してお話ししました。
アキレス腱断裂は昔から保存療法と手術療法のどちらがいいのか議論されてきた疾患ですが、最近ではかなり多くのことが研究に基づいてわかってきています。
個人的にはどちらの治療法でもいいとは思っていますが、全ての患者さんに対して手術療法しかしない、保存療法しかしないというのではなく、きちんと患者さんにそれぞれの治療法のメリット・デメリットを説明した上で治療方針を決めていく方がいいのではないかと思います。
当然のことながら、患者さんの背景はみな違いますので、少なとも僕はその患者さんに合った治療法を考えてお示しできるような医療者でありたいと思います。
よせやん
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