ランナー膝の一つである腸脛靭帯炎とは|原因・症状・治療を解説!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
今日は1日大学当直ですが、救急に呼ばれたのも1回だけで、けっこう自由な時間がありました。
ですので、ブログの環境整備を終わらせました。これでしばらくの間は、記事のみに集中することができそうです。
ブログをやっていて面白いのは、訪問者の検索ワードがわかることです。
意外に疾患名そのもの(すごくマイナーなFreiberg病とか)で検索して来訪する方が多いこともわかってきたので、スポーツ医学の勉強と同じくらいの割合で、疾患各論についての記事も増やしていこうと思います。
さて、今日は腸脛靭帯炎に関して勉強していきます。
腸脛靭帯炎は、長距離走の選手に多い「ランナー膝」の代表的なものの一つでもあります。Contents
腸脛靭帯炎とは
まず、腸脛靭帯の解剖を確認しておきましょう。
下図のように大腿筋膜張筋は上前腸骨棘・腸骨稜に起始をもち、途中から腸脛靭帯となって、脛骨外側顆上部のGerdy結節に停止します。
また、大臀筋の一部も腸脛靭帯に付着しています。
図:ネッター解剖学より引用
長距離走の選手に多い「ランナー膝」の代表である腸脛靭帯炎は、オーバーユース症候群の一つとして考えられます。つまり、スポーツ障害の一つというわけです。
スポーツ傷害、スポーツ外傷、スポーツ障害の違いについてはこちらの記事で確認して下さい。
膝屈伸時に腸脛靭帯が大腿骨外側上顆の骨性隆起と擦れることにより、同部位に炎症が起こり、疼痛が生じるといわれています。動的に膝が外側へ動きやすい選手に起こりやすく、男女差は特にみられません。
症状・診断
症状として、大腿骨外側上顆に一致して運動時痛を訴えます。
平地歩行で疼痛がない場合でも、階段の症候時に疼痛を自覚することがあります。
理学所見としては、大腿骨外側上顆に一致した圧痛を認めます。
膝屈曲位で大腿骨外側上顆のやや中枢を圧迫しながら、膝を伸展させると疼痛を訴えます(grasping test)。画像検査では、レントゲン検査で大腿骨外側上顆の変形、骨隆起、石灰化などが見られることがあります。
また、腸脛靭帯炎下肢のアライメント異常との関係が指摘されており、単純X線下肢片脚立位正面像などでアライメント異常が確認されることがあります。
MRI検査では、下図のように大腿骨外側上顆周辺に浮腫性変化を認めます。
図:腸脛靭帯炎のMRI所見(ITB:iliotibial band=腸脛靭帯)( Fairclough J, et al. J Anat. 2006より引用)
鑑別疾患および鑑別ポイント
- 外側半月板損傷
身体所見で圧痛部位を正確に把握しましょう。
また、MRI検査の所見が参考になります。 - 膝窩筋炎
膝窩筋炎では、股関節を屈曲・外転・外旋した肢位で疼痛が増強します。
こちらも、MRI検査の所見も参考にしましょう。 - ファベラ症候群
ファベラは腓腹筋外側頭内にある種子骨であり、大腿骨と関節面を形成します。
単純レントゲン像でファベラを認め、CTやMRIで大腿骨外側後面にファベラと一致する陥凹がみられ、MRIで骨髄浮腫がみられることもあります。
( 帖佐悦男.スポーツ傷害の画像診断:羊土社.2013 )
治療
治療は基本的には保存療法を選択します。
オーバーユース症候群の一つとして考えられるため、症状が出現した際には、運動量を減らす必要があります。
ウォーミングアップやストレッチ、運動後のアイシングを徹底し、ストレッチは腸脛靭帯に関係する大腿筋膜張筋のストレッチを入念に行います。また、急性期には、冷シップ・消炎鎮痛薬を使用してもいいでしょう。
慢性期には、温熱療法、特に超音波療法が効果的であると言われています。
根本的には、膝を含めた下肢の動的アライメントの改善を行います。( 奥脇透.種目別スポーツ障害の診療:スキー.南江堂.2014 )参考図書
おわりに
以上、今回はランナー膝の一つである腸脛靭帯炎について勉強しました。
興味の強い疾患以外はこれくらいシンプルにまとめていこうと思います。
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