内側半月板後根断裂(MMPRT)の治療方法|手術適応は?
どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
最近、いろんなことがありメンタルが少し疲れています。
コロナも再燃してきているし何とも大変なご時世ですね。
2月3月は久しぶりに海外学会に行く予定でしたが、現地参加はやめてオンライン参加に変えました。
さて、前回の記事では内側半月板後根断裂(MMPRT)とはどんな病気なのか紹介しました。
最近、膝外科のトピックの一つとなっている疾患なのでもう少し詳しく紹介していきましょう。
この記事では、MMPRTの治療方法と手術適応についてまとめていきます。
よせやん
Contents
内側半月板後根断裂の治療方法
では、 内側半月板後根断裂(MMPRT)の治療方法について解説していきます。
MMPRTは、前回紹介しように膝関節の退行性病変を急激に悪化させることがわかってきているのでした。
簡単にだけ復習しておくと、
MMPRTによりHoop機能が破綻し、内側半月板の荷重分散機能が失われるために、次第に半月板の逸脱も生じ、結果、早期に関節軟骨の変性やOAが進行してしまうことになるのでしたね。
MMPRTが保存的治療な治癒することはありませんので、基本的には手術適応になります。
よせやん
MMPRTの手術適応
しかしながら、全例手術をするわけではありません。
ではどういった症例が手術適応となるのかを紹介します。
- 大腿脛骨角(FTA)<180°
- 関節症性変化が軽度
色々な考え方があるのですが、今のところこう考えておけばいいかと思います。
詳しく説明していきましょう。
よせやん
適応1:FTA<180°
まず、FTA<180°とはどういうことなのでしょうか。
これは内反膝ではないということを意味しています。
FTAは大腿骨と脛骨のなす角で、正常は176°くらいです。
つまり、人は正常では膝は真っ直ぐではなく、少しだけ外反しているということですね。
ですので、逆にFTA>180°になってくるとO脚(内反膝)ということになります。
O脚だと当然、膝関節内側に荷重が集中してしまうため、内側半月板後根を修復したとしても結局また負荷がかかって断裂してしまう可能性が高いわけです。
というわけで、MMPRTを修復する場合は、基本的にFTA<180°が適応になります。
ただし、FTA>180°の症例であっても高位脛骨骨切り術(HTO)を併用すれば手術可能です。
実は内反膝でないMMPRTは少なく、実際にはMMPRTの修復とHTOを併用するケースが多いです。
よせやん
適応2:関節症性変化が軽度
2つ目の条件は、関節症性変化が軽度であることです。
関節症性変化が軽度とは具体的にどういうものを言うのでしょうか。
関節症性変化の分類で一番有名なのは、Kellgren-Lawrence分類だと思います。
簡単にKellgren-Lawrence分類を紹介しておきます。
これは、膝だけではなくて全ての関節に用いることができる関節症性変化の重症度になります。
Grade0:関節裂隙の狭小化(ー)、骨棘・骨硬化(ー)=正常
Grade1:関節裂隙の狭小化(ー)、骨棘・骨硬化(+)
Grade2:関節裂隙の狭小化(+:25%以下)、骨棘・骨硬化(+)
Grade3:関節裂隙の狭小化(++:50〜70%)、骨棘・骨硬化(++)
Grade4:関節裂隙の狭小化(+++:75%以上)、骨棘・骨硬化(++)
また、同じような分類になりますが、関節鏡所見で軟骨損傷の重症度を表すものにOuterbridge分類があります。
Grade1:関節軟骨の軟化あり
Grade2:軟骨表面の羽毛立ち、浅い亀裂あり
Grade3:軟骨下骨の深さまでの軟骨損傷があるが軟骨下骨の露出なし
Grade4:軟骨下骨の露出あり
MMPRTの手術適応はKellgren-Lawrence分類のGrade2以下もしくはOuterbridge分類のGrade2以下です。
これは、関節症性変化が強い症例ではMMPRTの修復を行う意義は少なく、人工関節などの適応となってくるからです。
よせやん
今回のまとめ
以上、今回は内側半月板後根断裂(MMPRT)の治療方法と手術適応についてまとめました。
つまり、まとめると、
MMPRTは関節症性変化が強い症例でなければ基本的に手術治療を行う
と覚えておけばいいと思います。
ただし、受傷から時間が経過してしまうと治療成績が悪くなることも報告されており、早期診断がとても重要です。
MMPRTが生じるとHoop構造が破綻するために、時間が経過するほど今度は軟骨損傷も進んでしまうので、成績が悪くなってしまうのも納得ですよね。
というわけで、次回はまだ知識があまり普及していないと思われるMMPRTの画像診断についてまとめようと思います。
膝が専門の整形外科医は知っているでしょうが、そうでなければ整形外科医でもまだまだ知らない先生も少なくないのではないでしょうか。
よせやん
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