有痛性外脛骨障害の原因・画像診断・治療|手術方法と治療期間まで詳しく解説!
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日からまた1週間が始まりましたね。
前にちらっとお話ししたように今右の肋骨を痛めているのですが、昨日、社会人サッカーの試合を右胸をかばいながらやっていたら、終わってしばらくしてから左の首がものすごく痛くなってきました。
僕は今まで寝違えを経験したことはありませんが、頭板状筋、僧帽筋、胸鎖乳突筋にかなりシビアな圧痛、可動時痛があり、明らかに頚部挫傷(いわゆる頚椎捻挫)の症状です。
痛くてスムーズに横が向けません。
追突事故などで受傷した頚部挫傷の患者さんを診る機会は非常に多いですが、頚部挫傷を侮るなかれですね。
また1つ患者さんの気持ちがわかるようになった気がします。笑
さて、今日は先日の続きで有痛性外脛骨障害についてです。
外脛骨は副骨の1つでしたね。
副骨については以前詳しくまとめました。
あまり覚えていないって方は下の記事を読んでみてくださいね。
そして前回、外脛骨とは何なのか?、またその分類についてお話ししたのでした。
この記事では、外脛骨が痛みを起こす原因、有痛性外脛骨障害の診断・治療についてまとめていこうと思います。
治療については保存療法、手術療法、治療期間についてまで詳しく解説していきます。
Contents
有痛性外脛骨の原因
まず、有痛性外脛骨障害が起こる原因についてお話しします。
外脛骨が痛みを引き起こす原因としては以下のものが考えれます。
- 外脛骨が突出しているために靴で圧迫され、皮膚および皮下組織に炎症性変化を生じる。
- 後脛骨筋腱が外脛骨に付着するため、足部の内側縦アーチが不安定になり外反扁平足や後脛骨筋腱腱鞘炎を起こす。
- 外脛骨が舟状骨と線維性・繊維軟骨性に結合している場合(typeⅡ)、大きな外力やスポーツなどの繰り返し外力で結合部分が断裂し骨軟骨炎を生じる。
有痛性外脛骨の診断
続いて、有痛性外脛骨障害の診断についてです。
有痛性外脛骨障害はスポーツ活動の盛んな10〜15歳に多いとされていますが、運動量の増加や捻挫などを契機に症状が出現するため幅広い世代において発症します。
まれに中年以降での発症例もありますが、これには外傷が大きく関与していると考えられています。
症状は運動時または歩行時の痛みや疲れやすさとして出現します。
身体所見
触診では、舟状骨の内側後方で後脛骨筋腱付着部に一致して骨性隆起を認め、著名な圧痛を伴います。
皮膚の発赤や熱感などは伴わないことが多いです。
内がえし肢位や外がえし肢位で痛みを誘発できることもあります。
また、外反扁平足を呈することも多いです。
画像診断
単純X線写真およびCTでは、舟状骨の内下方に円形から楕円形の骨を認めます(図1)。
図1:外脛骨の単純X線写真
舟状骨に面した部分は不整なことが多く、周囲軟部組織の腫脹や外脛骨による突出を認めることもあります。
また、症状を有する外脛骨では、関節裂隙の不整、cyst形成、骨硬化などの関節症変化を示すことが多くあります。
MRIでは、外脛骨および舟状骨の骨髄信号上昇を認めます(図2)。
後脛骨筋腱が外脛骨に付着しているため、後脛骨筋腱の不整な腫大や信号上昇の合併の有無を確認します。
図2:有痛性外脛骨障害のMRI画像(STIR像)
治療経過におけるMRI画像も紹介しておきます(図3)。
図3:有痛性外脛骨障害のMRI画像経過
受診時と比べて、時間が経過する程、MRI画像での骨髄信号上昇が改善しているのがわかるかと思います。
有痛性外脛骨障害の治療
最後に、有痛性外脛骨障害の治療についてです。
有痛性外脛骨障害の治療の基本は保存療法です。
大多数の症例は保存療法で軽快します。多くは10〜13歳頃に発症し、疼痛はある期間持続しますが、骨成長停止期の15〜17歳頃には自然治癒します。
しかし、自然治癒までの期間が長期を要すると予想される場合や、疼痛が強い場合には手術療法の適応となります。
手術対象のほとんどがtypeⅡの外脛骨です。
保存療法
運動の中止や制限を行い、症状に応じて消炎鎮痛薬の経口投与や外用薬を処方します。
突出が著名な症例では、パッドを用いて靴による外脛骨部の圧迫を除きます。
また、症状が強い場合は、局所麻酔薬とステロイド薬の局所注入(ブロック注射)、あるいは2〜3週間のギプス固定を行います。
ブロック注射は透視下もしくはエコー下に行いますが、最近はエコー下が多いでしょう。
縦アーチサポートに内側ウェッジをつけたインソールが有効ではありますが、過度の矯正は逆効果であり、比較的柔らかい素材を使いアーチサポートもウェッジもやや低めのものを作製すると良いとされています。
(中山正一郎ら. 関節外科. 1997)
手術療法
自然治癒までの期間が長期を要すると予想される場合や、疼痛が強い場合にはす外科的治療が選択されます。
手術療法としては、経皮的ドリリング術、骨接合術、外脛骨摘出術などがあります。
経皮的ドリリング術
経皮的ドリリング術は、外脛骨と舟状骨の結合部の局所循環を増加させることにより骨癒合を促す方法です。X線透視下にKirschner鋼線(1.0mm径)で外脛骨の骨性隆起部より舟状骨に向けて数カ所にドリリング(孔をあける)を行い、軽度内反尖足位(後脛骨筋が緩む肢位)にてギプス固定を3週間行います。
その後、インソールを装着し早期に運動を開始します。
局所麻酔下の外来手術で可能であり、手技が簡単な割には除痛効果が大きいです。
typeⅡの外脛骨で骨端線閉鎖前の症例に適応があるため、特に若年スポーツ選手に有効です。(Nakayama S, et al. Am J Sports Med. 2005)
骨接合術
後脛骨筋を付着したままの外脛骨を舟状骨から開離して反転し、外脛骨の軟骨板とそれに対する舟状骨の軟骨板を十分に削り、外脛骨と舟状骨をスクリューにて固定します。
術後は約6週間のギプス固定を行います。
骨癒合が得られれば予後は良好です。
(大塚健一ら. 日小整会誌. 2010)
後脛骨筋の筋力を温存できるという利点がある反面、スクリュー折損の危惧や固定期間が長いなどの欠点があります。
この手術方法は比較的大きいtypeⅡの外脛骨や骨端線閉鎖後に適応があります。
外脛骨摘出術
後脛骨筋腱の走行に一致して約5cmの皮切を加えて進入します。
後脛骨筋腱の付着部で腱を縦切し、骨膜下に剥離を進めて外脛骨を摘出します。
外脛骨と舟状骨の間がわかりにくい場合は、透視下に注射針を刺しながら結合部を探索して確認するとよいでしょう。外脛骨を摘出したうえで後脛骨筋を縫縮し、ギプス固定を2〜3週間行います。
typeⅠもしくはtypeⅡの外脛骨のうち比較的小さいもの、もしくは成人例に適応があります。
おわりに
以上、今回は外脛骨が痛みを起こす原因、有痛性外脛骨障害の診断・治療についてまとめました。
実臨床では有痛性外脛骨障害の患者さんを診る機会は意外に多くあります。
ただ、骨成長停止期の15〜17歳頃には自然治癒することもあり、治療方針については非常に悩むことの多い疾患でもあります。
保存療法が治療の基本ですが、それがダメだった場合の治療法などもしっかりと知っておきましょう。
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