上腕骨小頭骨折(上腕骨遠位端骨折)に対する手術アプローチ
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
今日は大学病院の整形外科忘年会があるため、バタバタしています。忘年会が始まったら、まず日付が変わるまで帰ることはないでしょうから、今のうちに記事をUPしておきます。
今日は一般整形外科の分野の話をしようと思います。
実際の症例を通して、上腕骨小頭骨折に対する手術アプローチに関してまとめてみます。
Contents
上腕骨小頭骨折
上腕骨小頭骨折は比較的なまれな関節内骨折で、上腕骨遠位端骨折の1%以下であるとされています。そのために診断が遅れたり、上腕骨外顆骨折として誤診されることがあります。
過去には骨片摘出も行われていましたが、現在では骨接合をすることが一般的となっています。
上腕骨小頭骨折の手術アプローチについては種々の報告がありますが、代表的なものとして以下のものがあります。
・前方アプローチ
・後方アプローチ(肘頭骨切り)
・外側アプローチ
があります。
しかし、未だ手術アプローチに関しては議論の多いところです。
今回は、自施設で施行している外側側副靭帯(LCL)を切離する拡大外側アプローチに関してお話しします。
症例提示
では、症例を通してこの手術アプローチを紹介します。
症例は82歳女性で、右肘を下敷きにするように転倒受傷し、当院受診となりました。画像所見では下図のように上腕骨小頭の骨片が上前方に転位した粉砕骨折を認め、滑車骨折も合併していました。
図:左からX線正面像・X線側面像・3D-CT像
画像よりGrantham分類ⅢBと診断し、手術加療を予定しました。
手術アプローチ
手術はLCLを切離した拡大外側アプローチを用いて展開しました。
今回、このアプローチに関して説明します。
下図のようにLCLを伸筋腱と共に付着部より切離して、前方に翻転します。
そうすると、上腕骨小頭および橈骨頭が容易に確認するできます。
内固定はHerbertタイプのDTJ screwを使用し、切離したLCLはスーチャーアンカーを用いて縫着してきています。
後療法は3週間の外固定を行い、その後、自動ROM訓練より開始します。
このアプローチの利点と欠点
LCLを切離する拡大外側アプローチの利点として以下の点が挙げられます。
・神経血管束を確認する必要がない
・容易に小頭および橈骨頭が確認できる
・創は小さくても広い視野を獲得することが可能
このアプローチでは広い視野を確保できますが、神経血管束を確認する必要がないというのも大きな利点です。
一方で、
関節拘縮を予防する上では、強固な内固定が得られるように努め、可能な限り早期より積極的に可動域訓練を開始することが重要だと思われます。
LCLを切離することによる関節の不安定性に関してですが、FraserらはLCLを切離しtransosseousに修復を行ったところ、biomechanical studyにて修復時の張力を維持したと報告しています。
( Fraser GS, et al. J Orthop Trauma. 2008 )
また合併症として、上腕骨小頭の骨壊死が17%程度に認められるという報告があります。
これを防ぐためには、
上腕骨小頭の血行路として大切なlateral ulnar collateral ligamentの起始部を温存することが大切であるとされています。
( Mighell M, et al. J Shoulder Elbow Surg. 2010 )
( Ruchelsman DE, et al. J Bone Joint Surg. 2009 )
というわけで、駆け足でしたが今日はこの辺で。忘年会に行って参ります。
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