膝複合靭帯損傷における後療法|装具・リハビリテーション
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
よせやん
本日は膝複合靭帯損傷についてです。
今までに、膝複合靭帯損傷におけるMCL損傷、ACL・PCL損傷の手術適応や手術のタイミングについてまとめてきました。
本日は、複合靭帯損傷の後療法についてお話ししようと思います。
具体的には、着用する装具、術後のリハビリテーションについて簡単にまとめます。
Contents
膝複合靭帯損傷の治療の大原則
まず、膝複合靭帯損傷の治療の大原則について復習しておきましょう。
膝複合靭帯損傷の治療の大原則は、
最小限の観血治療回数、最小限の移植靭帯の犠牲、最小限の治療期間、軟骨変性を伴わない靭帯機能の構築であり、最終的に拘縮膝を作らないこと
でした。
特に新鮮例の靭帯損傷では、治癒能力が高い反面、関節拘縮を起こしやすいと言われています。
観血治療によりいったん拘縮が起こると治療期間の延長だけでなく、その後の後療法により膝の変形性変化を誘発し、満足な結果が得られなくなってしまいます。
したがって、拘縮膝を作らないように、どの靭帯をどこまで治すのか、どの靭帯は後回しでよいのかを常に考えながら治療に当たらなければなりません。
この前提を知っておいた上で、今回は膝複合靭帯損傷における後療法について勉強していきましょう。
よせやん
装具
まず、膝複合靭帯損傷の際に用いる装具について簡単にまとめておきましょう。
意外に盲点となりうる点ですが、大切なところです。
側副靭帯損傷・ACL損傷の場合
内側側副靱帯(MCL)などの側副靭帯損傷にPCL損傷が合併せずに、ACL損傷のみを合併する場合、ACL用硬性装具を着用させます。
側副靭帯損傷・ACL損傷・PCL損傷の場合
側副靭帯損傷にACL損傷だけでなく、PCL損傷も合併している場合には、PCL用装具を着用させます。
術後のリハビリテーション
次に、術後のリハビリテーションについてです。
まず全身状態や内科的合併症により手術適応がない場合は、1〜2週間程度の固定を行います。
MCLなどの内側支持機構の手術をした場合には、術後早期からの可動域訓練の重要性が報告されています。(Mook WR, et al. J Bone Joint Surg. 2002)
高橋は、術後2日目よりCPMを開始し、受傷7日以降にACL損傷のみを合併する場合にはACL用硬性装具を、PCL損傷を合併している場合にはPCL用装具着用下に自動運動を開始するとしています。(高橋成夫, 越智光夫. 膝靭帯手術のすべて. MEDICAL VIEW社. 2013)
また、新鮮内側支持機構損傷の修復を行った場合は、可動域の改善程度をよく観察し、改善が不十分であれば、術後2週間程度で非観血的授動術を念頭におくとしています。
僕が知っている病院では、術後2ヶ月程度は理学療法のみで経過をみることが多く、観血的授動術を行うのは、術後2ヶ月以降という印象です。
非観血的授動術ならば術後1ヶ月程度で行うこともあります。
僕の実臨床での印象では、MCL・ACL損傷のみの場合は比較的早期に可動域が改善することが多いですが、それ以上の合併損傷があると可動域の改善に長期間を要し、非観血的授動術を、ときに観血的授動術を要します。
あくまで若手整形外科医の印象ですが、参考までに。
そして、MCL・ACL損傷は単独ACLのリハビリテーションに準じ、MCL・ACL・PCL損傷やMCL・PCL損傷では単独PCLのリハビリテーションに準じます。
ACLのリハビリテーションでは、術後1週間固定後CPMを開始し、2週目より自動運動を許可します。
2〜3週で全荷重、術後3〜4ヶ月でジョギングを開始、術後9ヶ月でスポーツ復帰を目指します。
PCLのリハビリテーションでは、術後1週間固定後CPMを開始し、術後4週よりPCL装具を着用して自動運動を開始します。
術後4〜5週で全荷重、術後5ヶ月でジョギングを開始、術後10ヶ月でスポーツ復帰を目指します。
おわりに
以上、今回は膝複合靭帯損傷における後療法についてお話ししました。
膝複合靭帯損傷は、膝関節外科に興味がある先生にとっては非常におもしろいトピックだと思います。
次は、膝複合靭帯損傷のメカニズムについてまとめようと思います。
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