膝前十字靭帯(ACL)損傷に関節軟骨損傷が合併する影響は?ACL再建時に同時に治療を行うべき?
どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
さて、本日で金曜日の仕事も終わり、明日から本格的にGWに突入しますね。
皆さんはどうやって過ごす予定ですか?
僕は家族でゆっくりと過ごしつつ、TOEICの勉強をしっかりやろうと思います。
また、新しく始める予定の研究計画を詳細に詰めることも目標にしておこうと思います。
「計画無くして実行無し」なので、きちんと計画を立てないといけませんね。
さて、今日は久しぶりに膝前十字靭帯(ACL)損傷についてやっていきましょう。
今までACLについてまとめた記事の一部を紹介しておきますので、興味のある方はこちらもどうぞ。
▲膝前十字靱帯(ACL)損傷の受傷メカニズム|膝関節と股関節別に解説
▲前十字靱帯(ACL)損傷後、再建手術をしないで放置するとどんな経過を辿るのか?
▲膝前十字靭帯(ACL)損傷の徒手検査(前方引き出しテスト、Lachman test、pivot shift test)のやり方と有用性
ACLについてもまたそのうちまとめ記事を作りますね。
今回はACL再建時に関節軟骨損傷の治療を同時に行うべきかまとめていきます。
ACL損傷には、MCLやPCLといった他の靭帯損傷だけでなく、半月板損傷や関節軟骨損傷などを合併することが少なくありませんので、それらの合併症に対する知識を持っておくことも大切ですね。
今回はACL損傷に関節軟骨損傷が合併するとどうなるのか、ACL再建時に同時に関節軟骨損傷も治療すべきなのか考えてみようと思います。
よせやん
Contents
ACL損傷に関節軟骨損傷が合併すると・・・
まず、ACL損傷に関節軟骨損傷が合併するとどうなるのか考えてみましょう。
ACL損傷時に合併する関節軟骨損傷は、変形性関節症性変化を進行させることが報告されています。(Ichiba A, et al. Arch Orthop Trauma Surg. 2009)
疫学研究では、ACL再建術後10〜15年で変形性関節症性変化を認める要因として受傷時の関節軟骨損傷が抽出されており、特に関節軟骨損傷の重症度が高い症例は変形性関節症性変化が進行しやすいことがわかっています。(Pernin J, et al. Am J Sports Med. 2010)
また、ACL損傷に関節軟骨損傷の合併がある群とない群を比較検討した研究では、関節軟骨損傷の合併あり群でKOOS(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score)のスポーツとレクリエーションのスコアが低かったことが報告されています。(Rotterud JH, et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2012)
つまり、ACL損傷に関節軟骨損傷が合併していると、関節症性変化を進行させ、スポーツレベルも低下させる可能性があると言えます。
よせやん
術後臨床成績に影響を与える?
では、関節軟骨損傷の合併がある場合、術後臨床成績はどう変わるのでしょうか?
術後臨床成績においてもACL損傷に関節軟骨損傷を合併した場合、Lysholm scoreやIKDC(International Knee Documentation Committee) scoreを低下させることが報告されています。(Widuchowski W, et al. Am J Sports Med. 2014)
そして、特にgrade3、4の関節軟骨損傷の重症度が高い症例はIKDC scoreがより低下しています。(Cox CL, et al. Am J Sports Med. 2014)
ここは、関節軟骨損傷が変形性関節症性変化を進行させることから考えても予想通りの結果と言えるでしょう。
よせやん
患者満足度評価に与える影響は?
では、 患者満足度評価ではどうでしょうか?
たとえ術後臨床成績が低下していたとしても、患者満足度が低下していなければ患者さんにとって関節軟骨損傷の合併はそれほど問題にはならないとも言うことができます。
しかし、やはり患者満足度評価においても、ACL再建時の関節軟骨損傷の合併は、特にKOOSのQOLおよびスポーツ・レクリエーションのスコアを低下させることが報告されています。(Rotterud JH, et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2012)
そして、術後臨床成績と同様に、重症度の高い関節軟骨損傷ではこれらのscoreが大きく低下しています。(Rotterud JH, et al. Am J Sports Med. 2016)
ACL再建時に関節軟骨損傷も同時に手術するべきか?
ここまでのことをまとめると、
ACL損傷に合併する関節軟骨損傷は、変形性膝関節症への進行、スポーツ復帰率の低下、臨床成績の低下、患者満足度の低下に繋がる
といえます。
- 変形性膝関節症へ進行のリスクを高める
- スポーツ復帰率を低下させる
- 臨床成績を低下させる
- 患者満足度を低下させる
では、ACL損傷に関節軟骨損傷を合併した症例では、ACL再建時に関節軟骨損傷に対しても同時に手術すべきなのでしょうか?
ACL再建時に関節軟骨損傷に対して治療を行なった群(治療群)と治療を行わなかった群(未治療群)を比較した研究では、未治療群のスポーツ復帰率は低かったことが報告されています。(Rotterud JH, et al. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2012)
ということは当然、ACL再建術を行う場合は、同時に関節軟骨損傷の治療を行うことが望ましいという結論になるでしょう。
よせやん
関節軟骨損傷に対する治療には、マイクロフラクチャー、自家骨軟骨柱移植術、自家軟骨培養移植術などがあります。
マイクロフラクチャーならいいですが、それ以外の治療は準備が必要になってくる施設が多いでしょう。
そう考えると、
術前にしっかりとMRIで関節軟骨まで評価を行う
もしくは
ACL再建術をいきなり行うのではなくfirst lookを行う
ということが大切なのかもしれませんね。
参考図書
2019年に発売されたACL損傷の診療ガイドラインです。
ガイドラインシリーズは非常に勉強になりますよ。
よせやん
おわりに
以上、今回はACL再建時に関節軟骨損傷の治療を同時に行うべきかについてまとめました。
今までACLについてまとめた記事の一部を紹介しておきますので、興味のある方はこちらもどうぞ。
▲膝前十字靱帯(ACL)損傷の受傷メカニズム|膝関節と股関節別に解説
▲前十字靱帯(ACL)損傷後、再建手術をしないで放置するとどんな経過を辿るのか?
▲膝前十字靭帯(ACL)損傷の徒手検査(前方引き出しテスト、Lachman test、pivot shift test)のやり方と有用性
ACLについても足らない記事を作ってしまって、そのうちまとめ記事を作りますね。
よせやん
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