膝関節拘縮の手術|伸展機構・膝蓋骨低位の処置、術後のリハビリ
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
今日も変わらず働いております。
6月の下旬は本当にやらなきゃいけないことが多いです。
今週水曜日までに日本臨床スポーツ医学会の抄録、来週木曜日までに足の外科学会の抄録を完成させなくてはなりません。
昨年までみたいに抄録を完成させる時点でスライド・論文まで作成するのはとてもできそうにありません。
翌日の外来や手術の予習だけでけっこう時間取られます。
でも、何とか間に合わせてみせます。
6月を乗り切れば何とかなる気がします。
さて、今日は膝関節拘縮シリーズの最終章です。
昨日に引き続き、膝関節拘縮の治療に関してまとめていきます。
Contents
はじめに
膝関節拘縮の治療を行ううえで、まずその原因が何なのかについてしっかり病態を把握しておくことが大切です。
膝関節拘縮の原因については下の記事で復習してください。
そして前回、膝関節拘縮の手術適応と関節授動術(癒着の剥離)での治療にお話ししましたね。
今回は、この関節授動術を施行しても可動域が十分に得られない場合に行う
- 伸展機構の処置
- 膝蓋骨低位に対する処置
- 術後のリハビリ
についてまとめます。
伸展機構の処置
まず、伸展機構の処置に関してです。
関節内剥離を行った後、大腿直筋と内側広筋間および大腿直筋と外側広筋間を中枢方向に向かって切離していきます。
線維化した中間広筋は切除します。
膝関節の可動域が得られたら、切離した内・外側広筋は膝関節屈曲位で大腿直筋に再縫合します。
大腿直筋の線維化が著しい場合には、これを延長する変法も行われていますが、大腿直筋に手術操作を加えると術後の伸展ラグ(自動での伸展と他動での伸展の差)を残すことが多いので、現在ではほとんど行われていません。
また、中間広筋の切除は技術的には容易ではなく、また、これを行わなくても大腿骨と中間広筋間を十分に剥離し、大腿直筋と内・外側広筋間の切離を十分に中枢まで行えば良好なexcursionが得られることが多いと言われています。
膝蓋骨低位に対する処置
続いて、膝蓋骨低位に対する処置です。
どういう場合に膝蓋骨低位が生じうるのかに関しては、原因についてまとめた記事で確認しておいてくださいね。
膝蓋腱の短縮のために著しい膝蓋骨低位を呈している場合には、脛骨粗面を膝蓋腱とともに一度切離し、膝蓋腱脛骨付着部をできるだけ正常の位置に整復します。
その際に、膝蓋腱の菲薄化を招くような場合には人工靭帯などを用いて補強し、早期の後療法を可能にします。
この手術は、膝蓋腱の短縮による拘縮に対して大腿四頭筋の延長を行い、伸展機構の絶対長を確保する従来の方法に対して、膝蓋腱の脛骨付着部を中枢側に移行することにより膝蓋骨を解剖学的な位置に戻し、膝蓋大腿関節の適合性の回復を目指すために行うものです。
後療法
最後に手術後のリハビリについてです。
膝関節拘縮の治療を行ううえで、後療法はかなり重要になってきます。
手術についてだけでなく、リハビリについてもしっかりと勉強しておきましょう。
よせやん
訓練時の除痛を図るために、手術時に硬膜外麻酔を留置しておいてあげると、患者さんの負担は大きく軽減します。
硬膜外麻酔チューブを抜去した後に患者さんの疼痛の訴えが強い場合には、リハビリの際に大腿神経ブロックなどを施行するのも一つの手でしょう。
CPMの運動角度は疼痛および後出血の程度や局所所見(特に皮膚の状態)をみながら徐々に増加させていきます。
疼痛や腫脹が強い時期に急激に運動角度を増加させると、剥離部位の異所性骨化を生じ、かえって関節可動域の減少を招くことがあるので、暴力的操作は禁忌です。
よせやん
また、経時的にX線撮影を行い、異所性骨化がみられたら後療法プログラムを変更する必要があります。
さらに、多数回の手術を受けている症例では、術後関節可動域が増加すると、瘢痕化した伸側の皮膚の緊張が増加するため血行障害を起こしやすく、術後しばらくの間は頻繁に手術創の観察を行い、血行障害が疑われるような場合には、可動域訓練の屈曲角度を制限するなど、症例に応じて後療法プログラムを組む必要があります。
大腿四頭筋訓練は手術翌日より行います。 通常、手術侵襲が軽減する術後1〜2週から荷重歩行を許可します。
また、一度獲得した可動域も術後数ヶ月の間は減少することがあり、術後長期間、関節可動域訓練と大腿四頭筋訓練を継続し、十分な経過観察が必要です。
参考図書
今回の記事を書くにあたり参考にさせて頂いた図書です。
膝関節の臨床について勉強することができます。
おわりに
以上、今回は関節授動術を施行しても可動域が十分に得られない場合に行う伸展機構の処置、膝蓋骨低位に対する処置、術後のリハビリについてまとめました。
膝関節拘縮はいろいろな原因が複合して起こることが多く、その原因によって治療法もことなってきます。
そのため、まずはしっかりと関節拘縮が生じている原因を追及し、それに合わせて手術計画を立てることが大切です。
また、手術で1つの手を打った後に、十分な関節可動域が得られなかった場合に、次なる手を用意しておくことも大切です。
そして、膝関節拘縮の治療においては、術後の後療法が非常に重要なので、患者さんの理解とモチベーションも手術適応を考えるうえで考慮しなくてはならない要素の一つです。
リハビリも症例ごとにしっかりと考え、問題が起きたらすぐにそれに対応できるようにしっかりと勉強しておきましょう。
よせやん
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