出血を伴う切挫創の処置|スポーツ現場での対応②
どうも、こんにちは。
先日、日本医師会認定健康スポーツ医の認定証が届きました。
1番取得しやすいスポーツドクターの資格ではありますが、これで晴れて、昔からの夢だったスポーツドクターと名乗れる資格をGETできました。そう考えると、うれしいですね。
次に取得する資格は、2年後の日本体育協会認定スポーツドクターの資格ですね。
それまでに、もっとスポーツドクターとしての知識や技術を向上させたいものです。
さて、今日はスポーツドクターとして、現場に出向いたときに出会うことの多い、「出血を伴う切挫創の処置」に関して勉強していきます。
Contents
はじめに
屋外で行う競技やコンタクトスポーツでは、出血を伴う切挫創に出会うことがよくあるかと思います。今日は、そんなときにどう対応したらよいのか確認しておきましょう。
出血を伴う創傷に対する対応としては、感染予防と止血が大切です。というわけで、感染予防と止血に関してまとめていきます。
しかしその前に、そもそも「切挫創」とはどんなものを言うのか理解しているでしょうか?せっかくなので、ここで「創」と「傷」の違いを含めて、確認しておきましょう。
創傷とは
「創」とは、皮膚の連続性が断たれた(皮膚の破綻した)損傷をいいます。
「傷」とは、皮膚の連続性が保たれた(皮膚の破綻していない)損傷をいいます。
この「創」と「傷」を元にして、切創、挫傷、挫創、挫滅創、擦過傷などという風にきずを表す言葉が使われています。
例を挙げてみます。
切創:いわゆる「切りきず」と同義で、鋭利な刃物などで皮膚が線状に損傷したもの。
挫傷:いわゆる「打撲」と同義で、打撃などの外力により内部の軟部組織が損傷したもので、体表に創がないもの。
挫創:打撃などの鈍的外力により皮膚が損傷したもの。一般に皮膚の欠損を伴わず、一次縫合が可能なもの。
挫滅創:打撲など鈍的外力により皮膚が損傷したもののうち、高度な外力により皮組織や神経・血管・腱などの軟部組織が損傷を受けたもの。
擦過傷:いわゆる「擦りきず」と同義で、皮膚の破綻を伴うが、寛容的に「傷」を用いる。損傷は表皮、真皮のレベルまでの損傷。
擦過創:「擦りきず」のうち、真皮を越えて皮下組織にまで損傷がおよぶもの。
咬創:動物や人間による「咬みきず」で皮膚が損傷したもの。感染のリスクが高い。
タイトルの「切挫創」とは、この切創と挫創を合わせたものですね。
感染予防
スポーツ現場での対応としては、
可及的速やかに水道水で傷口を洗い流し、可能な限り砂や土などの異物を落とすことが大切です。
そうすることで、感染の可能性を低くすることができます。いかなる創傷も汚染されているため、消毒液の塗布だけで創を閉鎖してはいけません。かならず洗浄を行うようにしましょう。
また、洗浄効果は洗浄に使用した液体の組成ではなく、物理的な量に依存します。抗菌薬入りや消毒液入りの洗浄水は無意味であると言われており、100mLの生食で洗浄するよりも、1Lの水道水で洗浄した方がはるかに洗浄効果は高くなります。
洗浄後に消毒を使用する場合は、消毒薬は組織毒性があるので体内には用いず、創周囲の健常皮膚のみに施すようにしましょう。
そして処置を行う際には、自分自身への感染予防も忘れてはいけません。患者がどんな感染症を持っているかわかりません。
止血法
次に大切なのが止血です。
スポーツにおいては、出血が止まらないと競技に復帰できないことが多いでしょう。
サッカーの試合を見ていても、出血が止まらないため、一度ピッチの外に出されて治療しているシーンを見たことがあるのではないでしょうか。このような場合には、
止血の基本は「直接圧迫」です。
動脈性出血でなければ、圧迫により止血が得られることが多いでしょう。選手をピッチに戻すならば、四肢ならガーゼの上から包帯を、頭部ならガーゼの上に伸縮ネット包帯を用いて圧迫します。
ただし、「切挫創」の場合には、皮膚を閉鎖する必要があります。病院では、縫合することが一般的ですが、スポーツ現場ではどのように皮膚を閉鎖したらよいのでしょうか。
そんなときには、皮膚縫合用テープのステリストリップを使用するのがおすすめです。
ステリストリップを使用すれば、時間をかけずに皮膚を縫合することができます。麻酔が必要ないことも、スポーツ現場での処置として大きな利点です。
ちなみに、2014年11月に中国上海で行われたフィギュアスケートのグランプリシリーズでは、男子フリーの直前練習で日本の羽生結弦選手と中国のエン・カン選手が衝突する事故があった際には、こめかみ部の皮膚縫合に下の写真の医療用ホッチキスが縫合に使われたようです。
おわりに
今回は、スポーツ現場での対応として、遭遇することの多い「出血を伴う切挫創の処置」についてまとめてみました。
現場で遭遇したときに、どうすればいいのか困らないようにしっかり勉強しておきましょう。
現場での止血が困難な場合は、試合へ復帰させず、医療機関へ搬送しましょう。また、これはあくまで応急処置なので、試合後に必ず医療機関を受診させ、きちんとした処置を受けさせましょう。
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