運動後の筋肉痛が生じる原因・メカニズムは?|生理学的に考察

どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。
よせやん
今日は眠気がすごいので、さっと記事を書いてしまいます。
さて、今日は運動に伴う筋肉痛についてお話ししようと思います。
普段から運動する方でもしない方でも、筋肉痛を経験したことがないという方はほとんどいないでしょう。
では、筋肉痛はどうして生じるのでしょうか?
前回の記事で、運動により乳酸がたまることが筋肉痛の原因ではないことを説明しました。
この記事では、筋肉痛が生じる原因について科学的に解説していきます。
よせやん
Contents
筋肉痛とは
筋肉痛については、以前まとめたことがあります。
激しい運動や不慣れな運動の1〜2日後に現れる筋肉痛は、初心者のアスリートはもちろん、時にはベテランのアスリートでさえも経験するものです。
筋肉痛を経験したことがない方はほとんどいないでしょう。
この記事では、筋肉痛が生じる原因について考えていこうと思います。
よせやん
筋肉痛は乳酸がたまることが原因なのか?
今までに、筋肉痛の原因は、筋肉への乳酸の蓄積、筋の痙攣、筋および結合組織の損傷など、多くの原因があげられてきました。
前回の記事で述べたように、乳酸がこの種の痛みを引き起こさないことは明らかになっています。
現在、得られている知見からは、
筋肉痛は、筋および結合組織に微細なダメージを与える過剰な機械的負荷によって引き起こされる組織損傷によるもの
であると考えられています。(Lewis P, et al. Clins in Sports Med. 2012)
この考えを支持するエビデンスとして、筋肉痛を起こした筋では筋繊維に微小な裂傷が生じていることが電子顕微鏡写真から明らかになっています。(Friden J, et al. Int J Sports Med. 1983)
というわけで、筋肉痛がどのように生じるのか詳しく考えていきましょう。
よせやん
現在のところ、まだ完全な回答はできないのですが、以下のように起こることが示唆されています。
- 激しい運動
- 筋線維の構造的損傷
- 膜損傷
- Ca2+の筋小胞体からの漏出
- 活性化されたプロテアーゼによる細胞タンパク質の分解
- 炎症反応
- 腫脹と痛み
激しい筋収縮、特に伸張性収縮は筋線維の構造的損傷(筋節の破壊)を引き起こします。
また、筋小胞体の膜に対する損傷を含む、膜損傷が生じます。
そうすると、カルシウムイオン(Ca2+)が筋小胞体から漏出し、ミトコンドリアに蓄積してATP産生を阻害します。
Ca2+の蓄積はプロテアーゼを活性化させ、それは収縮タンパク質を含む細胞タンパク質を分解します。(Gissel H, et al. Acta Physhiological Scandinavica. 2001)
膜損傷と筋タンパク質の分解と相まって、プロスタグランジン類やヒスタミンの産生増加およびフリーラジカルの産生を含む炎症反応が起こります。(Close GL, et al. Molecular Integrative Physiology. 1985)
蓄積したヒスタミンと筋線維周囲の腫脹が痛覚受容器である自由神経終末を刺激し、痛みの感覚をもたらすわけです。(Lewis P, et al. Clins in Sports Med. 2012)
筋肉痛の原因が、筋および結合組織に微細なダメージというのは、自分がスポーツをしてきた経験上、非常に説得力もあるように思います。
特に激しい筋肉痛になった時は、まさしくそのような筋肉が壊れているような感覚があったからです。
生理学は難しいですが、興味ある何かを理解するためだと思うと面白いですね。
よせやん
今回のまとめ
では、今回もまとめておきましょう。
筋肉痛は、筋および結合組織に微細なダメージを与える過剰な機械的負荷によって引き起こされる組織損傷によって生じる
という結論になります。
次回は、筋肉痛の予防や治療についてお話ししようと思います。
よせやん
参考図書
今回の記事は、パワーズ運動生理学を参考図書としています。
この教科書は、運動生理学の基礎を押さえつつも常に最新の研究成果を反映した進化し続けるテキストブックとして、現在では世界5か国語に翻訳がなされて利用されています。
そして、単に生理学の専門的知識を学べるではなく、なぜ運動生理学を学ぶ必要があるのか、そしてその知識をどのように活かすのか、についてまで実際のスポーツに即して書かれていて非常に面白い内容となっています。
スポーツに関わる方は運動生理学を知っていると、かなり活かすことができるのでよかったら読んでみてくださいね。
このブログでも、実際に活かせそうな運動生理学をこれからも紹介していきます。
よせやん
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