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手術前の喫煙・禁煙と創傷治癒・感染の関係|周術期にタバコを吸っている影響はあるの?

 
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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること! 仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい! 自分の日々の勉強のため、また同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思い、スポーツ医学、整形外科、資産形成などについてブログを書いています。
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どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。

よせやん

本日は手術前の喫煙・禁煙と創傷治癒、感染の関係についてお話ししようと思います。

タバコを吸っていると、手術を受ける際に創傷治癒や創部感染に対してどのような影響があるのでしょうか?

これは、医療関係者、喫煙者には是非とも知っておいて欲しい内容です。

Contents

はじめに

喫煙者は減ってきているとはいえ、まだ喫煙している方は少なくありませんよね。

そんな喫煙ですが、タバコは手術を受ける際にどのように影響があるかご存知ですか?

 

整形外科医として臨床をしていると、喫煙をしている患者さんは傷の治りも悪いし、感染はしやすくなるし、血栓ができやすくなり肺塞栓や心筋梗塞、脳梗塞を起こすリスクが上がるし、いいことなんてほぼないと言っていいものであると実感します。

よせやん

無理やりいいことを挙げてくれと言われたら、その患者さんが精神上安定くするくらいでしょうか。

これは僕が喫煙者が嫌いとかで言っているわけでは全くなくて、喫煙は様々な周術期合併症発生の危険因子であることは今や医学的にはっきりと証明されているのです。

 

米国疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)のガイドラインでは、手術30日前からの禁煙が推奨されており、手術前の禁煙は術後の創傷治癒遅延のリスクを減少し、創部感染予防にも効果が期待できるとされています。(Mangram AJ, et al. Infect Control Hosp Epidemiol. 1999)

というわけで、本日は喫煙が引き起こすさまざまな周術期合併症のうち、創傷治癒遅延創部感染に焦点を当てていこうと思います。

 

術前禁煙と創傷治癒遅延

まず、手術前の喫煙と創傷治癒遅延の関係についてお話ししましょう。

 

術前の禁煙と術後の創傷治癒遅延に関する報告はいくつかありますので、紹介していきます。

Mollerらは、ランダム化比較試験(RCT)により4〜6週間前より開始する禁煙指導は、血腫・感染などの創傷治癒関連合併症に予防効果があると報告しています。(Moller AM, et al. Lancet. 2002)

また、禁煙指導の介入の有無に関わらず、対象者を禁煙群・減煙(節煙)群・喫煙継続群に分け、創傷関連合併症の発生率を比較したところ、減煙(節煙)群は喫煙継続群と同程度発生し、残念ながら減煙(節煙)では効果がないことも報告しています。

 

Kuriらは、術前の喫煙状態を以下の5群に分け、創傷治癒障害を観察して報告しています。(Kuri M, et al. Anesthesiology. 2005)

  • 術前7日以内禁煙を含む禁煙群
  • 8〜21日前禁煙の晩期禁煙群
  • 22〜42日前禁煙の中間禁煙群
  • 43日以上前禁煙の早期禁煙群
  • 非喫煙者の非喫煙群

結果は、創傷治癒障害の発生率は喫煙群で最も高く、禁煙期間が長くなるほど発生率は低くなり、非喫煙者が最も低い結果でした。また、創傷治癒障害の重症度は、禁煙期間が長いほど軽症であったことも報告しています。

さらに、多変量解析による創傷治癒障害発生のオッズ比は、喫煙者に対して中間禁煙群、早期禁煙群、非喫煙群が有意に小さく、リスクを1/5程度まで低下させると報告しています。

 

久利らは、22日以上前の禁煙と非喫煙者は創傷治癒を促進することを報告していますが、一方でSorensenらは、2〜3週間前からの禁煙指導群と喫煙継続群において、術後の組織と創傷合併症を観察したところ、リーク・離開・創感染・壊死などの合併症発生率に差はなかったと報告しています。(久利通興. 麻酔. 2011)(Sorensen LT, et al. Ann Surg. 2003)

 

対象となった術式により術前禁煙の効果が得られなかったとも考察され、これらの報告は、

術前の禁煙は、術後の創傷治癒遅延のリスクを減少する

ことを支持するとも考えられます。

 

なお、禁煙の効果が得られたのは術前22日以上(3週間以上)前からの禁煙であり、禁煙指導開始は早ければ早いほどよいと言えるでしょう。

よせやん

術前の禁煙とSSIの予防効果

次に、手術前の喫煙とSSIの関係についてお話しします。

術前の禁煙と手術部位感染(SSI:surgical site infection)の予防効果に関する報告もたくさんありますので、こちらもその中のいくつかを紹介しようと思います。

 

Sorensenらは、ボランティアの健常人に対して全層欠損の生検創(縫合)を作成し、禁煙期間(非喫煙者、4・8・12週間、喫煙継続)と創感染について、ランダム化比較試験(RCT)を行なっています。

健常人に創を作成するなんて何とも大胆な実験ですね。

日本ではできそうにない試験です。

 

結果は、創感染率は喫煙者の方が非喫煙者よりも有意に高く喫煙者と禁煙4・8・12週間の禁煙実施者における創感染率は、喫煙者の方が有意に高い結果でした。(Sorensen LT, et al. Ann Surg. 2003)

 

Watanabeらは、下部消化管手術において喫煙者の方が非喫煙者・1ヶ月以上禁煙者よりもSSI発生率は有意に高かったことを報告しています。(Watanabe A, et al. Surg Today. 2008)

また、堀野らは、喫煙群(術前4週間まで喫煙)と非喫煙群(術前4週間以上禁煙と非喫煙者)においてSSI発生率を比較し、創部SSI発生率は喫煙群の方が有意に高いと報告しています。(堀野敬. 膵臓. 2012)

 

一方、久利らは、術前禁煙者(術前0〜30日・30〜180日・181日以上禁煙)と非喫煙者でSSI発生率を比較し、術前禁煙期間とSSI発生率には有意な関係はないとしています。(久利通興. 麻酔. 2011)

 

このように全ての報告が術前の禁煙により術後の創感染発生率が低減するという結果ではありませんが、創感染は術式の清潔度によって影響を受けることから、禁煙の効果が期待できない場合もあるということなのかもしれません。

よせやん

最後に、術前の喫煙状態と様々な術後合併症に関するシステマティックレビュー・メタアナリシスによると、創傷合併症発生率について現在喫煙者のrelative risk(RR)は喫煙経験者または非喫煙者に対して2.23(95%CI:1.84-2.70)であり、約2倍以上であることが報告されています。(Gronkjar M, et al. Ann Surg. 2014)

 

本日のまとめ

以上、今回は手術前の喫煙・禁煙と創傷治癒、感染の関係についてお話ししました。

 

最後に、今回の内容をまとめてみましょう。

今回のまとめ
  • 術前の禁煙は、術後の創傷治癒遅延のリスクを減少する
  • 術前の禁煙は、術後の創部感染のリスクを減少する
  • 術前に禁煙するなら3週間以上前からすべきだが早ければ早いほどいい
  • 減煙(節煙)では効果はない

 

というわけで、タバコを吸っていると手術を受ける際にプラスとなることはほとんどないばかりでなく、創傷治癒を遅くしてしまったり、創部感染のリスクが上がってしまいます。

 

まずタバコを吸わないのが一番だと思いますがそこは個人の自由です。

しかし、喫煙者の方も予定手術を受ける場合には3週間以上前から禁煙して手術を受けるようにはしてもらうとよいでしょう。

よせやん

 

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