症例から学ぶ腰椎分離症|スポーツ選手の治療からスポーツ復帰まで
どうも、こんにちは。
若手整形外科医のよせやんです。
さて、昨日まで成長期のスポーツ選手に多い腰椎分離症について勉強してきました。
腰椎分離症とはどんな病気なのか?また、その症状・画像診断について下の記事で解説しました。
また、病期分類、スポーツ復帰までの期間・治療に関しては下の記事でまとめました。
そして、下の記事では腰椎分離症におけるリハビリテーションに関してお話ししました。
今回は、腰椎分離症のデモ症例をみて、さらに理解を深めて頂けたらと思います。
Contents
腰椎分離症の治療
まず、前回勉強した腰椎分離症の治療について復習しておきましょう。
骨癒合が望める症例
MRIのT2強調像で高輝度変化を認める症例に対しては、骨癒合を目指すため治療を行います。
具体的には、体幹装具(コルセット)の装着と、最低3ヶ月のスポーツ活動の休止を指示します。
3〜6ヶ月後に再度CT検査を行い、その所見に応じて対応します。
具体的には以下の如くです。
まず、3ヶ月間のスポーツ活動の休止・コルセット装着
3ヶ月後にCT再検
- 骨癒合が得られている
→ストレッチング指導、スポーツ復帰 - 部分的骨癒合があり、完全な骨癒合が期待できる
→治療を継続し、3ヶ月後にCT再検
さらに3ヶ月後にCT再検
- 骨癒合が得られている
→ストレッチング指導、スポーツ復帰 - 分離が残存している
→骨癒合の可能性がないと判断
→ストレッチング指導、スポーツ復帰
骨癒合が望めない症例
MRIのT2強調像で高輝度変化を認めない症例、成人(大学生以上)の症例に対しては、上述の通り対症療法を行います。
具体的には、薬物療法やリハビリテーション、分離部ブロック、伸展を制限する体幹装具などによる保存的な疼痛管理が主体となります。
多くの場合は、対症療法にて競技可能な程度にコントロール可能ですが、保存療法に抵抗し、スポーツ活動や日常生活に著しい支障をきたす場合は手術治療を考慮する必要があります。
症例1
では、実際に症例を作ってみますので見ていきましょう。
- 症例:8歳 女児
- 既往歴:なし
- スポーツ歴:体操
- 現病歴:幼稚園の体操教室に通っており、1か月前より腰痛が出現。腰痛軽減しないため近くの病院を受診。
- 身体診察:L5棘突起に圧痛を認め、後屈により腰痛が増強。下肢の神経学的異常所見は認めない。
- 画像所見:単純X線側面像および右斜位像にてスコッチテリアの首輪を認め、第5腰椎の分離症が疑われる(図1)。CT検査にて第5腰椎に分離を認め、進行期と考えられる(図2)。MRI検査ではT2強調像で椎弓根内の高輝度変化を認める。T2強調脂肪抑制の方がより鮮明に所見を確認できる(図3)。
図1:単純X線像 第5腰椎の分離症が疑われる。
図2:CT像 第5腰椎に分離を認め、進行期と考えられる。
図3:MRI像 椎弓根内の高輝度変化を認める。T2強調脂肪抑制の方がより鮮明に所見を確認することができる。
- 治療:骨癒合が期待できると考え、硬性コルセットを装着させ、3ヶ月間の運動禁止を指示。
- 経過:1ヶ月後に腰痛は消失。3ヶ月後にCTにて分離部の狭小化を確認し、治療を継続する。6ヶ月後、CTにて分離部の部分的骨癒合を認める(図4)。まだ部分的であるため、完全な骨癒合を目指し、その後も治療を続けることになる。
図4:6ヶ月後のCT像 分離部の部分的骨癒合を認める。
症例2
もう1つ症例を作ってみましょう。
- 症例:12歳 男児
- 既往歴:なし
- スポーツ歴:軟式野球
- 現病歴:1週間前より腰痛が出現し、軽減しないため近くの病院を受診。
- 身体診察:L5棘突起に圧痛を認め、後屈により腰痛が増強。下肢の神経学的異常所見は認めない。
- 画像所見:単純X線では特に所見を認めない(図5)。CT検査では第5腰椎の右椎弓に亀裂を認め、分離症初期と診断(図6)。MRI検査ではT2強調像で椎弓根内の高輝度変化を認める(図7)。
図5:単純X線像 特に所見は認めない。
図6:CT像 第5腰椎の右椎弓に亀裂を認め、分離症初期と診断した。
図7:MRI像 T2強調像で椎弓根内の高輝度変化を認めた。
- 治療:この場合も骨癒合が期待できるため、硬性コルセットを装着させ、3ヶ月間の運動禁止を指示。
- 経過:1ヶ月後に腰痛は消失。3ヶ月後にCTにて分離部の部分的骨癒合を確認し、ジョギングなどの運動を開始。6ヶ月後にCTにて分離部の骨癒合を認めていれば(図8)、野球への完全復帰を許可できます。
図8:初診時と6ヶ月後のCT像 6ヶ月後のCT像で骨癒合を認める。
症例2のその後
しかし、こういった症例でも再発をきたしてしまうことがあります。
- 経過:復帰した後、ピッチャーとして数年間、軟式野球を続けており、1日2試合連続登板した後、腰痛が出現。その後も野球を続けていたが、腰痛が改善しないために再度病院を受診。
- 画像所見:単純X線では特に所見を認めない(画像は割愛)。CT検査では進行期であった(図9)が、MRIでは椎弓根内の高輝度変化を認めない(図10)。
図9:2年後のCT像 CTでは進行期であった。
図10:2年後のMRI T2強調像 椎弓根内の高輝度変化を認めない。
- その後の経過:このような場合には野球続行の希望があれば、保存的加療は行わずにストレッチ、投球フォームチェックなどの対症療法を行いながら、上手く付き合ってもらい、経過観察する方針となるでしょう。
おわりに
以上、今回は腰椎分離症のデモ症例を紹介しました。
実際の症例を見てみると、経過が非常にイメージしやすいですね。
成長期のスポーツ選手が腰痛を訴える場合、常に腰椎分離症を念頭におくようにしましょう。また、一度完治したからといって油断することなく、しっかりとストレッチなどを続け、再発を予防しましょう。
よせやん
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