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膝蓋骨脱臼に大きく関わる内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)のバイオメカニクスをマニアックに!

 
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サッカーを愛する若手整形外科医です。 夢はサッカー日本代表チームドクターになること! 仕事でも趣味でもスポーツに関わって生きていきたい! 自分の日々の勉強のため、また同じ夢を志す方やスポーツを愛する方の参考になればと思い、スポーツ医学、整形外科、資産形成などについてブログを書いています。
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どうも、こんにちは。
整形外科医のよせやんです。

よせやん

先日はスポーツ整形の手術日でした。

僕の今の環境は本当に恵まれているなと思います。

信頼できる上の先生がいて、自分で執刀させてもらえるチャンスをもらえて。

今は救急医でもあるので、その機会は多くはないですが、スポーツ整形に専念したらもっともっとやっていきたいです。

 

さて、今日は前回に引き続き膝蓋骨脱臼についてお話をします。

前回まず導入編として、膝蓋骨脱臼を語る上で非常に大切になってくる内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)の解剖についてお話ししました。

 

今回は、さらにMPFLについて理解を深めるために、MPFLのバイオメカニクスについてマニアックにまとめてみようと思います。

よせやん

Contents

MPFLの力学的特性

まず、MPFLの力学的特性について紹介します。

 

MPFLは長さが55〜60mm、幅10〜20mmと非常に薄い組織ですが、最大破断強度は平均208Nと言われています。

これは予想されていたよりも高かったが、特にこの研究に用いられた屍体の膝が平均年齢70歳であったことから、若年者でももっと高い可能性があります。

ちなみに、前十字靭帯の強度は20-30歳で、60-70歳の約2.5倍の強度であることが報告されています。

 

MPFLは膝蓋骨内側の安定機構の中で最も強度が高く、内側の50〜60%の制動性を担っており、膝屈曲20〜90°の範囲で最も重要な膝蓋骨外方制動因子とされています

膝屈曲90°以上では、MPFLの制動機能は低くなりますが、これは膝蓋骨が膝屈曲90°以上では大腿骨膝蓋溝に深くはまり込むため、膝蓋骨外側の移動に対して骨性のパットレス効果により制動されていることを意味しています。

 

MPFLの2つの線維

実は、MPFLは膝蓋骨付着部の幅が広く、大腿骨側が狭くなる形状で、近位束と遠位束の機能的に異なる線維が存在することが指摘されています。

 

Kangらは、MPFLには膝蓋骨内側中央部より大腿骨付着部へ走行するinferior-straight bundle(ISB)と膝蓋骨内側上方から大腿骨付着部へ走行するsuperior-oblique bundle(SOB)の2束が存在することを報告しています。

これらは完全には分離できず、ISBは静的な制動を、SOBは動的な制動に寄与しています。

 

Victorらは膝蓋骨のトラッキングを解析し、頭側線維は完全伸展位で緊張し、尾側線維は30°屈曲位で緊張することから、異なる2線維があることを報告しています。

 

MPFLの長さの変化

膝蓋骨脱臼の病態として、MPFLの断裂が原因であることが明らかとなり、MPFLがその外側偏位抑制の役割を担うことから、現在、反復性膝蓋骨脱臼の治療としてはMPFL再建術が広く行われています。

MPFL再建術後の成績不良例の一因として、不適切な再建位置による再建靱帯の過緊張と膝蓋大腿関節圧の上昇が挙げられ、正常MPFLの長さ変化についての理解が重要です。

 

Smirkらは屍体膝を用いた報告で、膝蓋骨近位から内転筋結節1cm遠位への最も解剖学的な位置のMPFLの長さ変化は、0〜80°までほぼ等尺性であり、120°では伸展位と比較して7mm以上弛緩することを報告しています。

 

正常な膝関節では、MPFLは特に膝関節伸展位から屈曲30°あたりまでの膝蓋骨の外側の隆起が浅く、骨性制動のない状態で重要な役割を担います。

また、膝屈曲30°付近を超えて屈曲すると膝蓋骨は大腿骨滑車に乗り、外側面が膝蓋骨の静的外方偏位を制動します。

さらに、膝屈曲60〜70°で大腿骨滑車の凹みに入って安定化します。

 

ところが、膝蓋骨脱臼や膝蓋骨亜脱臼症例では全身の弛緩性や股関節や下肢の回旋異常また骨性アライメントの異常が伴っており、その病態はさらに複雑になります。

それらの症例のほぼ全例でMPFLの損傷または機能不全が存在するとされており、軟部支持組織としてのMPFLの役割は極めて重要だと言えるでしょう。

 

というわけで、MPFLの役割をきちんと理解しておくことが、膝蓋骨脱臼を理解する上で大切なのです。

よせやん

おわりに

以上、今回は内側膝蓋大腿靱帯(MPFL)のバイオメカニクスについて少しマニアックにまとめてみました。

 

これまでに膝蓋骨脱臼を語る上で非常に大切になってくるMPFLについてまずお話ししました。

ここをきちんと理解していると、膝蓋骨脱臼について理解しやすくなるでしょう。

 

というわけで、次回から膝蓋骨脱臼についてまとめていきます。

よせやん

 

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